佐賀を代表する地酒を目指した「鍋島」

有明海に面し、風光明媚な場所に蔵を構える富久千代酒造は、大正末期に創業しました。創業当初の社名は「盛寿」でしたが戦後の復興を機に現社名「富久千代酒造」になりました。「千代に栄えて福きたる」の思いが込められています。銘柄には「富久千代」と「泉錦」がありましたが、現在は「鍋島」のみとなっているようです。

「鍋島」は1998年(平成10年)に、「佐賀・九州を代表する地酒」を目指し、蔵としての生き残りをかけて誕生させたブランドです。1988年に蔵に戻った飯盛直喜氏が自ら酒販店を回り、わずか4軒の若手の酒販店と協力して始めたそうです。

前年の1997年に「富久千代 天」の仮ラベルで特別純米と特別本醸造を出荷し高評価を得ました。それに自信を深め、98年からスタートさせる新銘柄の名前を公募を行い、「鍋島」に決定しました。江戸時代に約300年に渡って佐賀を統治した鍋島家にちなんだものであり、商標登録としても鍋島家の御子孫にも快諾いただいたとのことです。

数々の賞を受賞!地酒トップクラスの人気

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誕生からわずか4年後の2002年。「国際酒祭りin TOKYO」の純米酒部門で日本一に輝きました。2002年からは飯盛氏が杜氏に就任。以降、彼は天才杜氏と呼ばれるほどの存在になりました。2005年から2011年まで7年連続全国新酒鑑評会の金賞受賞するなど揺るぎない地位を築いています。2011年には世界最大規模・最高権威と言われる「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」で「鍋島 大吟醸」が日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に選出されています。その高い酒質と安定感で全国的な人気を呼び、寫楽(福島)や而今(三重)などと並び、「ポスト十四代」と称されています。それでも蔵元は無闇な増産はぜず、丁寧な手作りにこだわり、現在も約500石ほどの生産となっています。

上品でフルーティーな旨口吟醸

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鍋島の純米吟醸は五百万石、雄町、山田錦など米違いで醸しています。山田錦については、佐賀県産の山田錦を50%まで磨いている生酒です。山田錦の50%純米吟醸は数多くの蔵が醸しており、まさに王道を行くはずれのないスペックではありますが、さすが鍋島はレベルが高いです。鍋島の純米吟醸は香り高く、やや派手な印象があるのですが、27BYのお酒は、特有の柑橘系の香りはするものの、いつもよりは穏やかに感じられます。口に含むと、山田錦らしい米のうまみ膨らみを感じ、密度の濃さと滑らかさが同居しています。生酒特有の荒さを感じません。余韻は長く、上品でフルーティーに旨みが口一杯に広がり、より濃醇旨口にシフトチェンジした印象です。単体で呑むか、洋食や豚の角煮など濃いめのおつまみが最適かと思います。

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