瓶のラベルや飲食店のメニューなどで目にすることの多い「火入れ」や「生酒」という用語。それらの違いや、混同されやすい「生詰め酒」「生貯蔵酒」について、イラストを使いながら説明します。

「火入れ」と「生酒」はセットで覚えよう

「火入れ」と「生酒」は、日本酒の品質を保つために行われる、加熱処理の工程に関係する言葉です。

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そもそも日本酒は、原料である米・麹・水をもとにアルコール発酵が起こることで造られます。「醪(もろみ)」というドロッとした白濁の液体を搾ることで、日本酒ができるのです。

火入れ回数による名称の違い

日本酒を搾ったあとは、通常2回の加熱処理を行います。この作業が「火入れ」です。このとき、一切の加熱処理を加えず、生の状態で出荷される日本酒のことを「生酒」と呼ぶのです。

火入れをする理由

火入れの工程は、なぜ必要なのでしょうか。

それは、日本酒をもっとも美味しい状態でキープし、保存可能な期間を長くするためです。

「今こそが一番美味しいタイミングだ!」と醪を搾っても、酒の中に残っている酵素は「まだまだ元気だぜ!」と言わんばかりにアルコール発酵を続けています。

日本酒は生きているのです。瓶に詰めた後でも変化が続くため、飲み手のもとへ届くころには、飲み頃を過ぎてしまっていることもあります。

特に、日本酒が広く親しまれるようになった江戸時代には、冷蔵庫がありません。温度の変化によって品質が変化してしまうこともしばしばありました。

そのため、 日本酒の品質を変化させる酵素の働きを止めるために、搾った直後と出荷前に2回の加熱処理を行うのです。火入れをすることで、お酒の味が落ち着き安定します。

生酒は、加熱処理を行わないお酒。品質が変わりやすいものの、生酒にしかない特有の味わいやフレッシュな瑞々しさが特徴です。冷蔵・瓶詰・輸送の技術が発達とともに、全国のあちこちで生酒を楽しめるようになっていきました。

味の違いをリンゴで例えると

「火入れ」と「生酒」の味わいは、どのように異なるのでしょうか。

果物のリンゴで例えてみましょう。リンゴは生のまま食べても美味しいですが、焼きりんごやコンポートのように加熱しても食べられます。生酒と火入れの関係も、これと同じです。

生酒の味わいは、もぎたてのリンゴを丸かじりしたようなもの。甘味と酸味があってとてもフレッシュで瑞々しい。口の中いっぱいに果汁があふれていきます。

火入れした日本酒は、鍋でコトコト煮詰めたリンゴのよう。もぎたてのようなフレッシュさはなくなりますが、酸味が落ち着き、しっとりとした甘味が広がります。口当たりもなめらかになり、他の食材との相性が抜群に良くなりますね。

ラベルでの見分け方

生酒の場合は、ラベルに「生酒」や「生」などの記載があります。対して、火入れした日本酒には、何も書いてない場合があります。どちらかわからない場合は、スタッフに聞いてみましょう。

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(文/sake_shin)

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