スペイン、マドリードでSAKETIMESライターをさせていただいている大倉です。私はスペインでどのように日本酒が受け入れられているのか、現地の人の目で見た日本酒をみなさまにお伝えできればと思っております。

前編に続きフォアンチョ氏のインタビューをこの後編でも紹介させていただきます。

後編に入る前に、インタビューに一息入れる感じで日本酒を試飲していただきました。

今回は福島県二本松市の人気酒造のRice Magic REDスパークリングを試飲。このスパークリングは福島県酒造好適米『夢の香』福島県湯本産『朝紫』という品種の古代米(黒米、紫黒米)を使用しており、添加物は一切無しで瓶内発酵時の炭酸ガスを瓶内に封じ込めている、ナチュナルなスパークリング日本酒です。

また、古代米『朝紫』により、スパークリング日本酒ロゼ的な色合いで、味覚、嗅覚だけではなく、視覚にも訴えかけてくるものがあります。特にシャンパングラスに注いだときに何とも言えない色気でその場のムードを造り出し、飲まれる方の心をつかみます。フォアンチョ氏の試飲の感想は後ほどお伝えします。

今回はまず、フォアンチョ氏にスペイン人への日本酒トレーニングについてお伺いしました。

日本酒トレーニング(教育)について

「約20年前から私はワイン伝道師になるべくソムリエ教育を行っています。当時はインターネットなど便利なものはなく、自分の足で動き、見、聞き、触り、自分の足で次世代に伝えていかなくてはいけませんでした。それに比べ現代はクリック1つで知りたい情報をある程度入手できる時代にあります。

日本食ブームの波に乗じて日本酒ブームも到来しつつあり、中にはレストランだけでは無く、日本酒を自宅で飲む為に持ち帰るスペイン人も増えてきています。しかし、消費者増加率に比べ、日本酒提供可能人材の不足が目立っているような感があります。もちろんこれから先、日本酒消費率が増加する可能性は他のアルコール飲料に比べ多大にあるが、それには提供可能率がついていけるかが大きな鍵になると思います。

これは、日本酒の種類の増加ではなく、提供する側の日本酒への関心の問題だと思います。例えば日本ではヨーロッパ、アメリカ等のワイン消費率が増加していると聞きますが、これは提供可能人材が存在しているわけで、日本でワイン消費率が増加できるということは、スペインでも日本酒消費率が十分に増加できる可能性を秘めています。」

現在スペインで考えられている日本酒について

「私は個人的に日本酒の食感が好きで、日本酒を口に含んだ瞬間からどのようなプロセスで変化していくか、そして口に含むたびにその日本酒の潜在的な奥深さを魅せられます。

先日あるミシュラン1つ星の地中海創作料理レストランでコース料理と飲み物のマリアージュを頼んだら、コースの半分は日本酒でマリアージュを行っていました。私の度肝を抜いたマリアージュで素晴らしいハーモニーを醸し出していました。

日本酒は、私たちスペイン人が想像してる以上に未知の可能性を秘めていると思うのですが、その可能性を活用できる地盤が少なすぎるため、1つの枠から飛び出すことができないでいます。」

これからの日本酒

「これはワインにも言えることですが、少し前までは大量生産でコストダウンを図っていましたが、最近では小さな蔵での少量生産でも消費者、料理のレベルに合わせた日本酒が増えてきている傾向があります。今日本酒を飲み始める世代というのは、私たちとは違い、コーラ世代です。

コーラ世代というのはやはり甘味が好きな世代。ワインの場合はブドウ熟成度の高いワインで、熟成度が高いことにより甘味が増します。こう言うことからも、伝統を守りつつも、その時代や世代に合った味に変化していくということも大変興味深いですね。」

Rice Magic REDスパークリングの感想

「私はこの日本酒は肉料理、海外定番の照り焼きソースに合うと思います。まずは色合いで肉、照り焼きソースとのハーモニーはばっちり、味もボディーがあり,酒質,成熟さそして甘味と酸味がちょうど照り焼きソースとの相性が合います。そして照り焼きソースのメインディッシュの後、デザートも一緒にマリアージュできると思います。食前酒にはちょっとお勧めしにくいと思います。」

いかがでしたでしょうか?私はこのインタビューを通してたくさんのことを学びました。日本では当たり前だと思うことが海外にでると全く通用しないこともあり、しかし基本的に本質は海外共通ということにも気づきました。

これからもスペイン人の目から見た日本酒を伝えていきたいと思います。

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