「海酒」ってなに?あなたは「海酒」を知っていますか?

「うみしゅ?」「うみざけ?」「うめしゅ?」最近はいろんなお酒があってよくわからない……なんて、ご安心ください。

海酒(うみしゅ)」は小説の中の架空のお酒なのです。海酒とは「海」を集めたお酒。全国各地の海を漬け込んだ海酒は、凪いだ海、濁った海、澄んだ海……とあらゆる海が楽しめます。

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2月7日、「SAKE HALL HIBIYA BAR」とショートショート作家、田丸雅智(たまる まさとも)さんの作品「海酒」とのコラボレーションイベントが行われました。

このイベントは世界初の日本酒カクテル専門店「SAKE HALL HIBIYA BAR」が、「海酒」にインスパイアされたカクテルを提供するというものです。

田丸雅智さんは1987年生まれ、2011年「桜」(「物語のルミナリエ」所収 光文社文庫)で作家デビュー。翌年には樹立社ショートショートコンテストにて「海酒」(「海色の壜(うみいろのびん)」所収)が最優秀賞受賞。

単行本は「夢巻(ゆめまき)」「海色の壜(うみいろのびん)』(ともに出版芸術社)の二冊を出版。読書家として知られるお笑いコンビ、ピースの又吉直樹さんも絶賛する若手作家です。

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田丸さんの第一印象は少しシャイで誠実そうな好青年。この方が奇想天外ショートショート作品が生み出しているのかと思うと、少し意外な感じがします。そこで田丸雅智さんに「海酒」が出来た経緯やお酒との関わりについてうかがってみました。

田丸雅智さんとお酒の関係性

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筆者(以下 筆):田丸さんは普段からお酒をお飲みになりますか? 飲むのはどんなお酒で、どんなシチュエーションが多いでしょうか。

田丸(以下 田):お酒は好きです。でも強くないので、週末に自宅で妻と飲んだりします。外で飲むのも好きですね。

筆:日本酒もお好きですか。

田:銘柄には詳しくありませんが、日本酒も大好きです。寿司屋に行くと、1杯目から日本酒にいっちゃいますね。

筆:「海酒」は主人公が見知らぬバーにふらりと入るところから始まりますね。実際に、田丸さん自身で初めてのバーに入って驚いたような経験があったのでしょうか?

田:実はあの作品を書いた当時、僕はバーに行ったことがなかったんです。大学院生だったのですが、やっぱりバーは敷居が高いというか…メニューが出るのかとか、最初は怖いイメージで。

筆:わかります、私も最初はそんなイメージでした(笑)

田:でもバーの素敵なイメージも持っていたので、それを引き出すために、いろいろ調べましたね。「マスター」と呼ぶのか、メニューは出るのか……当時はチャージもチェイサーも知りませんでした。初めてバーに行ったのは卒業後、先輩に連れられてです。

筆:なるほど、「海酒」のバーのリアルな世界感がイメージの産物だったとは意外でした。

「海酒」誕生秘話

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筆:「海酒」が生まれたきっかけは、師匠である江坂遊氏(えさかゆう)の作品「瑠璃色のビー玉」に感銘を受けたためとうかがいました。なぜ「海」を閉じ込めたのが「酒」だったのでしょうか?

田:僕の故郷は愛媛の松山市で、祖父母は造船関係の鉄工所を営んでいました。まずは幼い頃から親しんだ「海」への思い入れを「何か」に閉じ込めたい、という発想があったんです。でも海をテーマにした作品はたくさんあって、それだけでは弱いかなと感じました。それで言葉の組み合わせで「海」とかけあわせて面白い言葉をインターネットで探してみたり……

筆:いつも単語の組み合わせから作品を創るのですか?

田:そのときどきによって違いますね。作品によっては、そういう手法から作品を組み立てるものもあります。それで、ネットサーフィンをしていたら偶然「ラム酒」という単語がみつかったです。「海」×「酒」で、無関係な言葉の掛け合わせが面白いと感じて「海酒」という単語が誕生しました。

筆:主人公は最初、「海酒(うみしゅ)」を「梅酒(うめしゅ)」と勘違いしますよね。そういった言葉遊びのようなところから「海酒」という単語が生み出されたのかと想像していました。

田:「梅酒」という単語に似ていると気づいたのは「海酒」という単語を創ってからのことですね。読みも漢字も似ていて、実際「うめしゅ」とずっと読み間違っている読者もいました。この点については予想外でしたね(苦笑)

「海酒」誕生の裏には、意外な創作方法が隠されていました。後編では田丸作品と日本酒の関わりや、これからの創作に対する意気込みについてお伝えします!

協力

株式会社 出版芸術社
「SAKE HALL HIBIYA BAR」
田丸雅智個人サイト「海のかけら」
株式会社 環境開発計画

 

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