八海醸造の特別連載も、早いもので5回目を迎えました。

ここまでは主に商品にスポットを当てて、ベンチャースピリットにあふれた“進化し続ける八海山”の魅力をお伝えしてきました。今回は、八海醸造を語るうえで絶対に外してはならない要素について掘り下げます。

それは、八海醸造が生まれ育った地「南魚沼への想い」です。規模が大きくなって全国区の酒造メーカーとなった今でも、創業当時から自分たちの酒造りを支えてくれている地元への感謝の気持ちを、八海醸造は大事に持っているのです。

SAKETIMESが八海醸造の真髄に迫る特別連載、第5回は「地元・南魚沼での取り組み」についてご紹介します。

地元への感謝を込めて、毎年行う「酒蔵納涼祭」

八海醸造は本社を構える南魚沼の地で、さまざまな地域活動に取り組んでいます。その中でも、特に地元住民との交流の機会として大事にしているのが、年に1回催している「酒蔵納涼祭」です。

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2015年開催の酒蔵納涼祭の様子

酒蔵納涼祭では、会社の近隣に住む人々を招待して、八海醸造のお酒や食べ物をふるまいます。当日は簡易ステージも用意され、地元住民の有志が民踊などの出し物を披露します。かれこれ10年以上も続いており、地元では毎年の風物詩になっているとのこと。

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なぜ、八海醸造ではこのようなイベントを始めたのでしょうか。商品開発・営業企画室の勝又沙智子さんは、次のように背景を語ってくれました。

「10年ほど前に、社員の増加による駐車スペースの不足が問題になったことがありました。その際に、近隣の畑を持っている方たちが、駐車場用にと土地を快く貸してくださいました。酒蔵納涼祭が始まったのは、この年からだったと思います。
八海醸造では全国各地に多くの商品を出荷しているので、それらを運ぶための大きな輸送トラックが、日頃から何度も行き来しています。南魚沼は自然豊かで、静かな田舎町ですから、車の騒音がどうしても目立ちます。そんな中でも、私たちの仕事が成り立っているのは、地域の方々の理解があってこそなのです。地元のみなさんへの日頃の感謝の気持ちを表すために、私たちは酒蔵納涼祭を開催しています」

実際に酒蔵納涼祭では、社員総出で来客をもてなします。社員と地元住民が顔を合わせてコミュニケーションをとれる、貴重な機会としても機能しています。

地域の魅力を凝縮した「魚沼の里」

八海醸造はイベントだけではなく、長期的な「場づくり」においても、地域への想いを大切にしています。八海醸造の自然との向き合い方、地域とのつながり方を象徴するのが「魚沼の里」です。

pr_hakkaisan_story_005_03「魚沼の里」の風景

「魚沼の里」は2004年に建てられた八海醸造の第二浩和蔵を中心に、米・麹・発酵に関わる施設が隣接するエリア一体を指します。八海醸造が整備を進めてきました。カフェや雑貨店などを併設した「八海山雪室」のほか、新潟県内でも屈指の人気店であるそば屋「長森」、うどん屋「武火文火」、菓子処「さとや」など、南魚沼の恵みを五感で堪能できるお店が点在しています。

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「魚沼の里」一帯の施設

「ここに来てもらえれば、八海山の豊かな味わいの源を肌で感じてもらえるはず」と、勝又さんは言います。

「霊峰・八海山の麓(ふもと)に位置する南魚沼の豊かな自然。四季の喜びに寄り添う豊かな暮らしや、雪国ならではの文化。八海醸造の酒造りは、この地のすべての恵みに生かされています。私たちが大切にしている背景を、ここに足を運んでくださった方に少しでも伝わるように・・・という想いが、『魚沼の里』には詰まっています」

「魚沼の里」の中でもとりわけ目を引くのが、「みんなの社員食堂」です。こちらは、八海醸造グループに勤める社員の食堂として機能しながら、同じ施設内で一般客も食事ができる施設になっています。

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「弊社では『同じ釜の飯を食べる』ことに重きを置いていて、昔から社員食堂がありました。南魚沼の自然に感謝する姿勢から、使う食材は地のもの・旬のものを多く取り入れています。ですので、たまに外からのお客さんを連れてくると『美味しい!』と喜んでくれることが多かったのです。
そこで、社員が増えて食堂を拡大するタイミングで『来客や地域の人たちも、気軽に食べに来てもらえる場所にしよう』という意見が高まり、この『みんなの社員食堂』が生まれました。地元の方々がふらっと立ち寄ってくれることが多く、ご好評をいただいています」

一般客向けのメニューは、メインを肉と魚から選べる「八海定食」と、社食としてふるまわれている料理を味わうことができる「日替り定食」の2種類です。地元の食材をふんだんに使ったランチを求めて、毎日たくさんの人々が訪れます。リピーターも多く、中には週3回も通うファンもいるのだとか。

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「みんなの社員食堂」の日替わり定食

魚沼の里は、「みんなの社員食堂」をはじめとする各施設に人気があり、口コミが人を呼んでいます。初めは社屋と酒蔵だけだったこの地は、今では年間で25万人もの人が足を運ぶ場所となりました。

このような地域づくりを、酒蔵である八海醸造が推し進めるのはなぜなのでしょう。そこには、酒造りを行ううえで忘れることのない"地域の恵みへの感謝"がありました。

豊かな自然の恵みに敬意を ― 八海醸造の根底にあるもの

八海醸造を八海醸造たらしめるもの。それは「南魚沼の豊かな自然」だと勝又さんは言います。

「八海醸造の酒造りにはさまざまな特色がありますが、中でも最も特徴的なのは、実はここ、南魚沼の自然環境で酒造りをさせていただいていることだと思っています。霊峰・八海山に見守られながら、『雷電様の清水』と呼ばれる口当たりの柔らかな名水を仕込みに使うことができます。また、酒造りの時期には連日降り続く雪が大気中のチリや雑菌などを静め、空気をきれいにしてくれるので、酒造りには最適な環境です。先代社長の故・南雲和雄は『魚沼の地域は清酒造りに断然適している。"神様が酒を造るために授けてくれた土地"だから、良い酒を造る責任がある』と日頃から語っていました」

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八海醸造では、「酒蔵納涼祭」や「魚沼の里」の整備の他にも、里山の環境保全を目的とした「植樹祭」、酒造りができることの感謝を込めて、お酒を霊峰・八海山に納める「奉納登山」、 季刊誌『魚沼へ』の自社発行など、南魚沼の地に根ざしたさまざまな活動を行っています。これらすべての根底にあるのは、豊かな自然環境で酒造りができることへの敬意と感謝。「類まれな経営革新や醸造技術はすべて南魚沼の自然のうえで成り立っている」という意識を忘れたことはないのです。

八海醸造は、南魚沼という地域に支えられている。その想いを紡いだ誠実な地域との関係づくりが、酒蔵としての働きやすい環境を生み出し、回りまわって“いい酒造り”へとつながっているように感じます。

(取材・文/西山武志)

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