黄金色に輝く小さな缶の日本酒。コンビニやスーパーで見かけたことがある方も多いでしょう。

正真正銘 “しぼりたて” の日本酒を缶に充填した「ふなぐち菊水一番しぼり」。醪(もろみ)をしぼる工程で使用する槽(ふね)の口から出るお酒を「ふなぐち」と呼んでいたことからその名が付けられたこの商品、発売から40年以上も売れ続けている菊水酒造随一のロングセラーです。その人気は海を渡り、今やアメリカ・ニューヨークでもヒットしているほど。

もはや定番となっている「ふなぐち」ですが、実は“日本初”のすごいお酒なんです。いったいどこがすごいのか・・・その魅力に迫ります!

かつては酒蔵でしか飲めなかったお酒

「ふなぐち菊水一番しぼり」は、いわゆる“生原酒”と呼ばれるお酒です。生原酒とは、火入れ(熱処理によって酒の劣化・腐敗の原因となる火落ち菌などを殺菌する工程)をしていない「生」の状態で、かつ、加水(絞ったお酒に仕込み水を加え、アルコール度数や香味を調整する工程)をしていない「原酒」であることを指します。

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菊水酒造では、かつては"酒蔵に来ていただいたお客様だけ”にこの生原酒を振る舞っていたそうです。いや、酒蔵でしか提供できなかった、という方が正確でしょう。火入れも加水もしていない生原酒は品質管理が難しく、すぐに劣化してしまうため、既存の設備や容器では商品を流通させることができなかったのです。

しかし、蔵に訪れた人々は、フレッシュなその味わいに一口飲んだら必ずおかわりをして「菊水さん、何でこんなに美味しいお酒を売らないの?」と言われていたのだそう。この言葉を胸に、「これを出せれば、きっとお客様に喜んでいただけるはず。」という強い意志で、生原酒の商品化を目指した菊水酒造。

今やコンビニやスーパーでも手に入るようになりましたが、 そこに至るまでには想像を絶する苦労があったようです。

社運を賭けた前例のないプロジェクト

「ふなぐち菊水一番しぼり」の開発が始まったのは、1969年のこと。

当時、菊水酒造にとって失敗のできないプロジェクトでした。新潟地震に加え、2年続けての大水害で新発田市中倉にかまえていた酒蔵は全壊。廃業すら考えるほどの被害を受けていたのです。それでも、一から酒造りをと、新発田市島潟に酒蔵を再建したのが1969年でした。

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新発田市中倉時代の酒蔵

会社を立て直すにはヒット商品がいる。ここで思い浮かんだのが、酒蔵で生原酒を飲んだお客様の笑顔と「家でもこの美味しいお酒を飲みたい」という声でした。そして、社運をかけて生原酒を商品化することになったのです。

ただ、この取り組みは前例がありませんでした。入社3年目から「ふなぐち」の製造に携わる菊水酒造・取締役の若月さんは「当時は、生酒を常温で出すなんてもってのほか。火落ち菌(酒を劣化させる菌)が繁殖して、タンク1本ダメにしてしまう可能性もあった。そんなことになったら、会社の経営をゆるがすような大事ですよ。同業者からは『菊水酒造はおしまいだ』とさえ言われたと聞いています」と、いかに無謀な挑戦だったかを教えてくれました。

しかし、このような風評をものともしなかったのが、4代目菊水酒造代表の故・髙澤英介氏です。彼は「同じ土俵で相撲をとるな」と社員たちに言い続けました。会社の危機を脱するには、他社と同じことをしていてはいけない、と。

数えきれない試作を繰り返し、気づけば3年の月日が経っていました。そして1972年、あの大ヒット商品「日清カップヌードル」と同じ年に、日本初の生原酒缶 (2010年1月株式会社コミュニケーション科学研究所調べ) である「ふなぐち菊水一番しぼり」は産声を上げました。

なぜ「缶」なのか? 必然性から生まれた日本初の生原酒缶

結果として「ふなぐち」は見事に大ヒット。菊水酒造を立て直すターニングポイントとなり、今では海外でも販売されるまでになりました。

それにしても、ふなぐちはなぜ「缶」なのでしょう。現在でも、日本酒といえば瓶詰めが主流ですよね。

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その理由は「生原酒を常温で流通させる」という必然性から生まれたものでした。火入れ・加水をしない生原酒は、本当に繊細。日光に当たったり、温度が変化したりするとすぐに劣化してしまいます。そのため、従来の酒瓶では、品質を保持したまま生原酒を流通させることが難しいかったのです。
また、開発当初、菌の繁殖を防ぐためにアルコール度が20度(現在は19度)もあったことも、缶の採用に影響しました。一般的な日本酒のアルコール度数が15〜16度であるのに対して、「ふなぐち」の20度は異例とも言える高さ。これでは四合瓶、ましてや一升瓶ともなるとなかなか飲み切ることができません。

品質保持に優れていて、かつ少量で飲みやすい。そこから、前例のない「缶充填」というアイデアに至ったのです。

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現在のふなぐちの生産ライン

もちろん、“言うは易し、行うは難し”で、アルミ缶にお酒を充填するためには新しい設備も必要ですし、手馴れない作業にはヒューマンエラーもつきもの。それでも、美味しさのためには常識になんてとらわれないのが菊水酒造の主義。自らの意思を貫き、「ふなぐち」の製品化を実現させました。

ニューヨークでは「缶のまま」がクール

軽いフィンガーフードとともに、バーで「ふなぐち」を楽しむ。ニューヨークではそんな風景が珍しくないのだそう。日本では、日本酒といえば徳利とお猪口が定番ですが、ニューヨークでは、ビールを瓶のまま飲むように、「ふなぐち」を缶のまま飲むスタイルが若者に受けているのです。

現地ニューヨークでの営業経験もある菊水酒造 ・営業部 テクニカルマネージャーの青木さんは、海外市場における「ふなぐち」の広がりについてこう教えてくれました。
「『ふなぐち』は、菊水酒造の海外出荷において一番伸びている商品です。さまざまな国籍の人が集まるニューヨークでは、もともとハードリカーに抵抗のない人が多く、そのため19度というアルコール度数でも抵抗なく受け入れてもらえたのだと思います。それに『缶のまま飲む』という気軽なスタイルも"クール”と言ってもらえています。ただ、はじめから好調だったわけではありません。そもそも『日本酒とはどんなお酒か』から説明しなくてはなりませんからね。そこにきて、『生酒』や『原酒』でしょう。これを正しく説明するのは至難の業でした。しかし、地道な営業で丁寧にお酒の説明をし続けたことでじわじわ受け入れられていったんです」

缶入りというスタイルも、はじめは“poor(安物)”と捉えられてしまったそうですが、「なぜ、缶に入っているのか」をきちんと説明することで、その価値を理解してもらえるようになっていったのだとか。今では、ショットバーなどを中心に日本酒を置いていなかったお店にもどんどん広がっていいて、中には「きゅうりを入れて飲む」といった現地流のアレンジも生まれているのだそう。日本では驚くような組み合わせですが、現地に根付いて、愛されている証拠ですね。

夏はキンキンに冷やしてロックで!

ここまで「ふなぐち」がいかに革新的なお酒なのかをご紹介してきましたが、実際のところどんな味わいなのか。菊水酒造オススメの飲み方でいただいてみましょう。

sake_g_funaguchi_kikusui 「ふなぐち」シリーズは全4種類。「ふなぐち菊水一番しぼり」「熟成ふなぐち菊水一番しぼり」「薫香ふなぐち菊水一番しぼり」「新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり」のラインアップがあります。今回は定番の「ふなぐち菊水一番しぼり」を飲んでみました。

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では、早速いただきます! 「ふなぐち菊水一番しぼり」の製造に長年携わってきた若月さんいわく、夏はキンキンに冷やして、ロックでゆっくり飲んでほしいそう。
sake_g_funaguchi_kikusui_4日本酒をロックで飲むのは初体験でしたが、フルーティーで美味しい! 「ふなぐち」の 生原酒ならではの濃厚な旨味と、みずみずしい香りはそのままに、氷を入れたことでアルコール度数が下がり、マイルドで飲みやすくなっています。これは暑い日にピッタリです!

毎月27日は、SNSで「ふなぐち飲み会」! 

現在、菊水酒造ではSNSを通して「ふなぐち」の美味しさ・楽しさを共有して盛り上がるプロモーション「ふなぐち飲み会」を実施しています。「ふなぐち飲み会」は、毎月27日の20時〜21時の間に「ふなぐちをどんな風に楽しんでいるか」を<#ふなぐち>をつけて写真とともにSNSに投稿することで参加できます。これを見れば、はじめて「ふなぐち」を飲む方でも“どんな風に飲むのが美味しいのか” “どんなおつまみと合わせるのがいいのか”が一目瞭然!

「『ふなぐち』を愛飲してくれるお客様と、垣根を超えた飲み会がしたい!」と、昨年11月から始めたユニークな取り組みです。

こんなふうに盛り上がっています! これは参加したくなりますよね?

酒蔵でしか飲めなかった生原酒がコンビニやスーパーで気軽に手に入るなんて、一昔前では信じられないことでした。菊水酒造の心意気を感じながら、今夜は「ふなぐち菊水一番しぼり」で乾杯しましょう!

(取材・文/藪内久美子)

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