凹凸のある薄い水色の瓶に、洗練されたデザインのラベル。一般的な日本酒のイメージとは一線を画すスタイリッシュな「無冠帝 (むかんてい)」は、かの人気ジャズ・クラブ「ブルーノート東京」が、初めて本格的にメニュー採用した日本酒です。

「日本酒はみんなのものだ」という想いのもと、従来の文脈にとらわれず、どんなシーンにもどんな人にもフィットすることを目指す新潟・菊水酒造の人気商品「無冠帝」の魅力に迫ります。

「酒はみんなのものだ」  信念から生まれた“無冠の帝王”

「無冠帝」の歴史は、30年以上も前、1983年から始まります。

当時、技術を磨き上げた吟醸ブームが兆しを見せていましたが、それらは少量生産で価格も高く、一般市民には手に入りにくいものでした。このころ日本酒には政府による級別制度が存在し、特級・一級・二級などとランクが付けられていたのです。水を入れてかさ増しした「薄め酒」が横行していたこともあり、ランク付けをすることで日本酒全体の品質を高めようとしていたためです。級が高くなればなるほど酒税が上がり、高価になりますが、国からの「お墨付き」を得た認定酒となります。

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初代「無冠帝」

酒蔵としては、もちろん最高ランクの特級酒を目指すのが通例。しかし菊水酒造の先代社長である故・ 髙澤英介氏には「日本酒は特別なものではない、みんなのものだ」という想いがありました。特級酒と認められれば価格が上がり、大衆にはなかなか手の届かないものになってしまう...…。そこで英介氏は思い切ったことを考えました。

「鑑定には出さない」

特級酒と認められるほどの自信作でありながら、あえて鑑定に出さず、二級で発売することで価格を抑えて「吟醸酒の大衆化」を目指したのです。大衆のために“無鑑定”という信念を貫いた“無冠の帝王”。こうして「無冠帝」が 誕生しました。

コンセプトにこだわり抜き、2度の大リニューアル

あえて鑑定に出さず、大衆に愛される吟醸酒としてスタートを切った「無冠帝」は、発売以降30余年の間に2度リニューアルされています。

1度目は2010年。吟醸酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒の3つのラインナップを「無冠帝ブランド」に統一しました。


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1度目のリニューアル時の「無冠帝」

級別制度もとっくに廃止された時代に、「大衆のための吟醸酒」という存在は珍しくなくなっていました。しかし「みんなのための日本酒」という想いは譲れません。そこで、よりさまざまな吟醸ラインのお酒を気軽に味わってもらおうと、ラインナップを増やしたのです。

ところが、この試みは失敗に終わります。当時から社員として商品の製造に携わり、現在は研究開発部のリーダーである宮尾俊輔さんは「ラインナップを増やしたことで、コンセプトが伝わりづらくなってしまったようです」とその要因を教えてくれました。

そこで2度目のリニューアルプロジェクトが立ち上がりました。発売以来変わらない「日本酒は特別なものではない、みんなのものだ」というコンセプトを、今の時代にマッチさせるとしたらどんな商品になるのか...…。今度は、そこから考え始めたそうです。前回の反省を生かし、「どんなシーンで飲まれる酒なのか」を徹底的に議論しました。

そして浮かんできたのは、「食卓に映える」ということでした。ちゃぶ台ではなく、ダイニングテーブルに置いても見栄えがするような、スタイリッシュな日本酒は造れないだろうか? それが現在の「無冠帝」に通じるリニューアルの第一歩でした。

和洋折衷さまざまな食が楽しまれる現代において「日本酒といえば和食」という固定観念に縛られるのはもったいない。洋食にも合い、ワイングラスが置かれるダイニングにも似合う日本酒。幅広い食シーンに寄り添う「無冠帝」の礎はこの時に築かれました。

海外展開も見据えた「現代のダイニングに合う日本酒」

2度目のリニューアルを経た「無冠帝」を見ると、まず、その独特なボトルに目を奪われます。一見するとシンプルですが、この瓶は細部まで徹底的にこだわっています。

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まず、「無冠帝」のボトルはオーダーメイド、菊水酒造だけのオリジナルデザインです。もともと、現社長・高澤大介氏が独自で開発をすすめていましたが、それが「無冠帝」のイメージとぴったりだったことから商品ボトルに採用。それをもとに微調整を繰り返し、1年を費やして開発しました。

表面に凹凸のあるエンボス加工は、ライティング時の効果を狙っています。また、赤い瓶はワインに多いですが、青系の瓶は酒類全般で見ても珍しい。これらの特徴は、海外のレストランに並ぶことも意識して設計されています。

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ボトルと並行して、お酒そのもののリニューアルも行われました。誕生当初から変わらない「吟醸酒」というスペックは据え置きつつ、菊水酒造が得意とする「生酒」に変えたのはこの時です。以前よりもやわらかく、フルーティーな味わいとなりました。とはいえ味の方向性を大きく変えることはせず、お客様からも評価されていた「飲み飽きせず、どんな料理にも合うという」という昔からの特徴はそのまま残しました。

コンセプトを見直し、誰も見たことのないようなスタイリッシュなボトルに刷新、そして生酒にしたことで加わったフルーティーさ。これが、2年の年月をかけて生まれ変わった「無冠帝」の姿でした。

あの「ブルーノート東京」にも溶け込む日本酒

リニューアル後のテーブル映えするデザインや、料理を引き立たせる味わいは、すぐに周囲の認めるところとなりました。そんな中、早くから「無冠帝」を採用したのが、日本を代表するジャズ・クラブ「ブルーノート東京」です。それまで日本酒メニューの本格的な導入はしていなかったブルーノートですが、菊水酒造が提案するとすぐに提供が決まったといいます。

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今や「すっかりブルーノートに馴染んでいます」とクラブマネージャー・田中奈津子さんは言います。「最近では海外からのお客様も多く、まずは『SAKE』とご注文される方が少なくありません。海外アーティストにも『SAKEファン』が多いんですよ」

ワインソムリエの資格も持つ田中さんは、「無冠帝」の味わいを「ドライですが甘みがあって、けれどキレがある不思議な味わいですね。合わせたものをすべて際立たせてくれるのに、しっかり存在感がある。まるで、腕の良いドラマーのようだなと思っています」と評価してくれました。

ブルーノートでは、軽いおつまみやデザートだけでなく、本格的なディナーのフルコースも用意されています。ときには、お酒と合わせた料理をシェフが考案することも。「無冠帝」におすすめなのは、メキシコのマリネ「セビーチェ」との組み合わせだそうです。料理の酸味と「無冠帝」の甘みが最高のマリアージュを生むとのこと。ほかにはイカのフリットな ど、フレンチ系の料理と楽しんでいる人が多いそうです。

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田中さんは昨年菊水酒造を訪れ、初めて日本酒の製造工程を目にし、大変に驚いたそうです。

「日本酒って、 ワインに比べて工程がとても複雑ですよね。緻密で細やかで、造り自体が日本文化といえると思います。そこまで手をかけておきながらも、主張せず、ただそこに佇んでいる格好良さも魅力的です。 ブルーノートで『無冠帝』を提供することで、そんな素晴らしい日本文化をもっと広めていきたいですね」

海外から訪れた人がブルーノートで「無冠帝」を知り、惚れ込んで帰る…。世界中に「無冠帝」ファンが増えて行く日は遠い先のことではなさそうです。

「無冠帝の世界観」をWEBからも発信

「ブルーノート東京」をはじめ、カフェ、バー、フレンチ、イタリアンとさまざまな業態の飲食店で提供され、“旧来的な日本酒のイメージ”を一新し続ける「無冠帝」。その世界観は、WEBからも発信されています。

それが、2016年から展開しているオウンドメディア「BREW」。年齢も仕事もさまざまな「地位や名誉にこだわらず、一方で、高い志を持っている」人たちが、ブログで日常を綴るWEBサイトです。

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このコンセプトは、そう、「無冠帝」に通じるもの。“無冠の帝王”を体現するかのように、独自の価値観のもとで日々を生きる人たちと縁をつないでいきたい。そして、日本酒をもっと自由に楽しんでもらいたい。菊水酒造のそんな想いが詰まった、商品のブランドサイトとは異なる、まったく新しい取り組みです。

商品だけでなく、WEBも活用して日本酒との接点を広げていく姿勢は、「日本酒の裾野を広げる」ことと真剣に向き合う菊水酒造らしい取り組みだと感じます。

シーンを選ばない「無冠帝」にファンが急増中!

リニューアル後、「無冠帝」を楽しむお客様の層はぐっと広がったといいます。

「それまでは40〜50代が中心でしたが、若いファンの方も増えました。ボトルがスタイリッシュになったこともそうですが、味わいがやわらかくて飲みやすくなった、という声も多いので、より気軽に飲んでもらえるようになったのだと思います」と宮尾さん。

「無冠帝」とは長い付き合いになる宮尾さんに、おすすめの飲み方を聞いてみると、「個人的には、軽く冷やす程度にして、薄いグラスで飲むのが好きです。刺身など、さっぱりした料理と合うのではないかと思います。ただ、どんな食卓、料理にも合うように造っていますから、好きに楽しんでいただくのが一番です」とのこと。

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「酒はみんなのもの」というコンセプトの通り、シーンを選ばない日本酒となった「無冠帝」。「ブルーノート東京」での採用をはじめ、旧来の文脈にとらわれないその広がりは、"日本酒ファンをそのものを増やす"ことに大きな役割を果たしています。"無冠の帝王"は、あなたにもきっと寄り添ってくれますよ。

(取材・文/藪内久美子)

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