伝統ある日本酒の酒造りにおいて受け継がれてきた「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」という言葉があります。その意味は「和の心は良酒を醸し、良酒は和の心を醸す」というもの。

酒造りに携わる人の和の精神によって良酒(美味しいお酒)が生まれ、その良酒によって、造り手、売り手、飲み手のすべての人に和がもたらされるということです。

今回は「和醸良酒」という言葉をさらに細かく紐解いていきます。

お猪口でお酒を飲もうとしている女性

和の心は良酒を醸す

酒造りは肉体労働です。重い米袋の持ち運び、冷たい水で行う洗米などつらい作業が多いため、蔵人全員が一丸となって酒造りを行う必要があります。

一昔前までは、造りの期間だけ地方の杜氏集団が酒蔵に来ていたため、蔵人は同じ環境で寝食を共にしていました。共同生活をすることで、自然と仲が深まっていきます。

同じ釜の飯を食い、呼吸を合わせて作業して、美味しいお酒を生み出す。酒造りを通して蔵人同士の和が繋がっていき、その和によって良酒が醸されるのです。

良酒は和の心を醸す

良酒を醸す和は、酒蔵の外にもあります。

日本酒に欠かせない原料、酒米を育てる農家がいます。春から秋までたとえ台風や冷夏でも、栽培方法を工夫しながらお米を育てています。目標とする味わいの日本酒を造るために、酒蔵と農家は一致団結するのです。

完成したお酒を飲み手が味わうまでには、酒販店や飲食店の売り手もいます。お酒に込められた思いを伝える人がいて、縁が繋がります。

さらに、初めて会う人でも美味しいお酒を通して打ち解けたという経験がある人もいるのではないでしょうか。飲みの席では良酒が人間関係を丸くして、和を醸してくれるのです。

日本酒に関わるすべての人に感謝し、自分を支えてくれる多くの人たちとの「和」を大切にする。良酒が生み出す「和」を繋いでいくのも良いのではないでしょうか。

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