仕事終わりに軽く一杯。気の合う友人と語らいながら一献。さまざまなシチュエーションで私たちに寄り添ってくれる日本酒の存在。気楽に楽しむお酒も良いものですが、時にはじっくりお酒とお料理に向き合いたい夜もありますよね。今回はそんな気分の時にぴったりなお店をご紹介します。

JR東中野駅から徒歩3分。そこには官能の美酒美食の世界が!!

JR東中野駅の東口から南へ徒歩3分。飲食店と商店が点々と並ぶ通りにひっそりと佇む「美酒和膳 ひがし中野しもみや」は、東京農業大学醸造学科ご出身のご主人と奥様のお二人で切り盛りされている、知る人ぞ知る名店。今年で12周年を迎えるカウンター10席のみの小さなお店です。

カウンターに腰掛けると、目の前の冷蔵庫には銘酒がズラリ。その横にきれいに並べられた美しい酒器を眺めていると、まだ見ぬ美酒への妄想が膨らみます。料理人でありながら日本酒を愛し知り尽くしたご主人ならではの提案で、お料理と日本酒のマリアージュが楽しめるのがこのお店の魅力です。

呑みごろの日本酒が常時120種類以上

日本酒の品揃えは常時120種以上、中には東京農業大学OBの醸すお酒も多数揃います。これでも種類を絞っているそうですが、紹介したい美味しいお酒が多く、ついつい種類が増えてしまうのだとか。

まだ知名度は高くないけれど美味しいお酒をここで知ってもらい、有名になってきたらラインアップから卒業してもらう。それがしもみやのスタイルです。

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女将のみどりさん

そして、ただお酒をサーブするだけじゃないのが、こちらのお店の凄いところ。一般的に抜栓したてのお酒はフレッシュで喜ばれがちですが、お酒によっては少し硬かったり、味が開いていなかったり、ツンケンしていたりする場合があります。

味の乗っていないお酒は基本的には提供しないのがしもみや流。そのため抜栓後に冷蔵庫の中で一定期間寝かせるのだとか。その銘柄の美味しさのピークを見極め、最もうまみの乗ったお酒を冷蔵庫の最前列に並べるのだそうです。

発酵学者・小泉武夫先生お墨付き!悶絶美味のお料理

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ご主人の恩師である発酵学者の小泉武夫先生が「究極と悶絶の美味」という言葉を残す通り、とても美味しいご主人のお料理。

文系の大学に入学したにも関わらず、幼いころから興味があった発酵を学ぶべく東京農業大学に転入し直したいうエピソードが物語るように、飽くなき食への探求こそが、美味しさの秘訣なのではないでしょうか。

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「極力、切り置きや作りおきはしたくない」と、お刺身用にワサビをすりおろすご主人

血合い抜きマグロ節から引いた出汁は、素材の味を邪魔せず、料理の軸をしっかりと支えてくれる、しもみやのお料理の肝です。

はてさて、百聞は一見にしかず。早速、季節のオススメ料理と日本酒をいただきました。

トマトの冷たいおでん×「天青 純米吟醸 千峰 夏」

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しもみやの夏の名物「トマトの冷たいおでん(700円)」は、食欲の衰える夏場でもサッパリといただける一品。

上質なマグロ節をたっぷり使って引いたお出汁に湯むきしたトマトを丸一日以上しっかり漬け込み、中までじっくり染み込ませた滋味深い味わいです。もちろん、大葉は盛り付けの際に都度刻んで添えます。

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そして、同じく梅雨のじめじめを吹き飛ばすべくオススメしてもらったのは、湘南の地酒「天青」の夏酒。

スッキリ爽やかな天青がトマトの旨みに溶け込み、一体になってスーッと消える。外でしとしと雨が降っていることも忘れ、心の中にカラッと青空が広がりました。

パセリのおひたし×「美寿々 純米吟醸」

農大同期の蔵元さんの醸す「美寿々 純米吟醸」には、同じく、しもみや名物「パセリのおひたし(600円)」を。

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「パセリをおひたしに?!」と思われる方も多いかもしれませんが、高い栄養価がありながら、添え物として終わることの多いパセリをたくさん食べられるように、との想いから生まれたメニューです。

下茹ですることでパセリ特有の青臭さが適度に抜けて爽やかな芳香のみ残った、箸休めにピッタリのおつまみです。

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「パセリのおひたし」にあわせる「美寿々」は、まるで涼やかな渓谷の中にいるかのような清々しさを感じる、透き通った味わい。良い水を使っているのだろうと想像してしまうのですが、それもそのはず、しもみやでいただける美味しい和らぎ水は、「美寿々」の仕込み水なのだそうです。青々しい芳香のパセリとの軽快なマリアージュを楽しめました。

「美寿々」は、なんとタイミング良く、抜栓後しばらくたった残り1/3になったものと口開けしたばかりのものを飲み比べることができました。抜栓後しばらくたったもののほうがくっきりした味の印象でした。

塩麹鯖のブルーチーズ焼き×「稲花 特別純米"絆"無濾過生原酒」

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3品目は、重めの組み合わせを試してみます。メニュー名を見ているだけでお酒が進みそうな「塩麹鯖のブルーチーズ焼き(1200円)」は、塩麹に1週間ほど漬け込んだ鯖の上にたっぷりのブルーチーズを乗せて焼いた逸品。発酵×発酵の力強いハーモニーが、えも言われぬ重厚感を醸し出し、お酒が止まりません。

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瓶で2年ほど寝かせた熟成タイプの「稲花 特別純米"絆"無濾過生原酒」に、鯖とブルーチーズの塩気を帯びたパンチある発酵臭がぶつかり、がっりち手を組みます。発酵食好きにはたまらないマリアージュです。

このメニューが生まれたキッカケに、小泉武夫先生とのエピソードがありました。ある日、小泉武夫先生がお店に訪れた際、当時あったメニュー「帆立のブルーチーズ焼き」を頼まれたのですが、その日はたまたま帆立が無かったため、鯖の塩麹漬けで代用したところ、これが図らずも大受け!以来、しもみやの定番メニューに仲間入りしたそうです。

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ユーモア溢れる味覚人飛行物体・小泉先生のサイン

〆には酒米の釜炊きごはん

とことん旨い酒と肴を堪能した後も、まだまだお楽しみがあります。目の前で炊いてもらえる「釜炊きごはん しじみ汁付(一合 700円)」は、なんと幻の酒米「亀の尾」「ササシグレ」の2種類から選べます。

「ササシグレ」は、飯米ですが酒米としても使われるササニシキのご先祖様。冷めても美味しいのが特徴です。一方、飯米のご祖先様でありながら、酒米のイメージの強い「亀の尾」。

一体どんなお味なのか、興味津々で「亀の尾」を選んでみました。

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目の前でもくもく湯気を上げながら炊き上がった亀の尾のごはん。モチモチ感というよりは、しっかりした歯ごたえがあり、噛むほどに米の旨みを感じます。「硬い」とは違う、心地よい噛みごたえ。そして、これがまた卵かけご飯に合うのです。

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卵は、普通の卵(100円)と極み卵(400円)の二種類から選べます。

普通の卵も十分に美味しいのですが、極み卵がまた凄い。米の一粒一粒が濃厚な黄身にコーディングされ、まるでドレスアップされたかのように妖麗な姿に変貌します。それでいて芳醇。

噛みごたえのあるお米だからこそ、米と卵の融合をじっくり楽しむことができる!これぞ米と卵の究極のマリアージュ。しもみやを訪れた際にはぜひ一度はご賞味あれ。

日々の喧騒を忘れ、厳選の美酒・美食に向き合う、贅沢なひととき。頑張った自分へのご褒美に、記念日に、親孝行に、ぜひ、さまざまなシチュエーションにあわせて訪れてみてください。

美酒和膳 ひがし中野しもみや
住所:東京都中野区東中野1-52-18 クワハウス1階
電話:03-3363-7878
営業時間:火〜日 18:00~25:00(LO.24:00) ※月曜日定休
コース料理は当日オーダー可 (3,500円・5,000円/税抜)

(文/平井遥)

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