長野県佐久市の佐久平駅から徒歩10分。新幹線の線路もすぐ横に見えるほどの場所に古屋酒造店はあります。地元で愛されるお酒「深山桜」を中心に、明治26年の創業以来、代々受け継がれてきた酒造りの様子をお伺いしてきました。

蔵を率いるのは5代目の荻原深(おぎわらふかし)さん。名前の「深」の文字は、古屋酒造店の銘柄「深山桜」の一文字から取られました。さすが蔵の息子です。深さん本人も「いずれは蔵を継ぐだろう」とずっと考えていたそうです。

創業当初から続く寒造りの酒

蔵にうかがった時、まだ今期の酒造りは始まっていませんでした。古屋酒造店の酒造りは12月〜3月の寒い季節のみ。
「創業当時からの設備をそのまま使っているので、温度管理が難しく、気温が低くならないと造れないんです」とのことでした。

蔵は1階で洗米をして2階でお米を蒸す構造になっているため、洗ったお米はベルトコンベアで上階に運ばれます。
蔵の周辺の地下水は鉄分が多いため、仕込み水は水道水を曝気して使用しているとのことです。

2階でお米が蒸されると、今度は1階のタンクへ送られます。2階の床には小窓があり、そこを開けて下にあるタンクへお米を投入します。

仕込みタンクも創業当時から使っているそうです。タンクの横には、樽や桶などがたくさん置いてあります。

取っ手のついた重しのような不思議な道具。これは、温度調節に使用されているそうです。

「温度管理をする際、気温が低い時は暖房をつければいいのでまだ楽なのですが、気温が高い時が一番苦労します。その際に、この道具に氷を入れてタンクに浮かべて調節するんです」と深さん。冷却設備がないため、温度管理には苦労されているようです。扇風機に濡れたタオルを当てて回すことで温度を下げることもあるとか。

お酒はヤブタで搾っています。大吟醸を搾る時のみ、袋搾りを行っているそうです。

深さんが自ら手がけて醸す「和む酒」

古屋酒造店では、杜氏の中島一男さんと荻原深さんの二人で酒造りを行っているとのこと。地元中心に販売されている「深山桜」は中島さん、そして特定名称酒「和和和」は深さんが手がけています。「和和和」は「和の心で和らぎ和んで欲しい」という思いで名づけられました。

「旨い酒とは?と考えすぎて、いつも分からなくなるんです」と深さんはおっしゃっていましたが、年々どんどん美味しくなっていくお酒から、その真面目さが伝わってきます。現在仕込中のお酒もどう仕上がってくるのか、とても楽しみです!

(取材・文/まゆみ)

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