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目指したのは、現代のライフスタイルに寄り添う酒──創業10年目の酒蔵・日立酒造が「Any.」に込めた想い

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2016年、クラウドファンディングで100万円を越える支援を受けて、新しい日本酒「Any.」が誕生しました。 茨城県日立市にある創業10年目の若い酒蔵・日立酒造が、"飲む場所・人・タイミングを限定せず、いつでも誰とでも飲めるお酒でありたい"という思いを込めて造り上げた新商品です。

特徴は、どんなシチュエーションにも馴染むモダンなボトルデザインと、"現代のライフスタイルに寄り添う食中酒"を目指した飲み飽きしない味わい。

そんな「Any.」が誕生するまでのストーリーや、日本酒としての魅力、そしてこれからの展望についてご紹介します。

日本酒を現代の日常へ

「Any.」の製造が始まる2016年まで、日立酒造の主力銘柄は「二人舞台」でした。

「二人舞台」がもっとも重宝されるのは、結婚式やパーティーなどの"ハレ"の日。ふたりの門出を祝うお酒として、「二人舞台」という喜ばしい銘柄名や、気分を高めてくれるフルーティーで華やかな香りがぴったりだったのです。

しかし裏を返せば、その真価を発揮できる場はある意味で限定的とも言えました。

「『二人舞台』で培ってきた醸造技術を活かして、より多くのお客様に飲んでもらえるお酒を造りたい」

そんな思いから、味や香りの方向性を一新させて造り上げたのが「Any.」です。お祝いの場ではなく、"日常"に寄り添うお酒として開発されました。

開発当初は、流行のスパークリング酒や乾杯シーンに向く酒など、さまざまなコンセプトが検討されたのだとか。とはいえ、世の中のトレンドを追うだけでは、新しいブランドの独自性を表現できないのではないかと考えました。

導かれたゴールは、日本酒世界の入り口ではなく、"第二の案内役"というポジションを目指すこと。日本酒に興味を持ち始めたひとが、ひと口飲んで美味しいと感じるのはもちろん、さらなる奥深さを知るきっかけとなるような、和洋中のジャンルを問わず、あらゆる食に寄り添う"食中酒"を造ることになりました。

日立酒造の杜氏・長岡慎治さんは、新しいブランドをつくるにあたって、造りのレシピを一新。"現代の食中酒"を完成させるべく、徹底的に造りを見直しました。

原材料には地元産の有機栽培米を使用。さらに、伝統的な酒造りの製法である"山廃造り"に挑戦しました。

これまで洗練させてきたテクニックを駆使して、好き嫌いのはっきりしやすい山廃独特の香味を上手くコントロール。味わい深い"コク"を生み出すことに成功しました。山廃らしい旨味を湛えつつも、すっきりと飲みやすく、幅広いジャンルの料理に合う日本酒を造り上げたのです。

思わず手に取ってしまう、洗練されたボトルデザイン

「Any.」の魅力はその味わいだけにとどまりません。シンプルでモダンなボトルデザインも、このお酒の大きな特徴でしょう。

「日本酒に対する固定概念を払拭したい」と、引き算の考え方でつくられた控えめなデザインで、逆に注目を集めています。

全国各地の食品と雑貨を揃えた人気のショップ「日本百貨店とうきょう」でプロモーションした際、「これは何ですか?」と足を止めるのは男性よりも女性の方が多かったそう。最終的に、2日分用意した商品が1日で完売するほどの反響がありました。デザインの面から、新しい日本酒ファンの開拓に貢献しています。

クラウドファンディングで獲得した認知。次は一般流通商品だ!

前述の通り、「Any.」の開発・発売は日立酒造初のクラウドファンディングで行われました。通常の販売ルートではなくWEBを活用することで、今までたどり着けなかった層にも商品を知ってもらうことができたのだそう。

プロジェクトを期待する声も多く、それを目にした杜氏は「完成を前に良い意味でのプレッシャーも感じていた」と言います。企画が話題になったことで、『日本経済新聞』をはじめとするさまざまなメディアからも声がかかり、さらなる認知につながりました。

クラウドファンディングで生産した「Any.」は限定1000本。実は、利益度外視で造られていたのだとか。そのため当初、第二弾の予定はありませんでした。

しかし、プロジェクト終了後も多くの問い合わせが寄せられます。その反響があまりにも大きく、ついに一般流通商品の開発が決まりました。

若い蔵だからこそ挑戦した生酛「Any. kimoto」

満を持して、2016年10月に発売された、一般流通向けの「Any. Kimoto」。前回との大きな違いは、山廃造りではなく生酛造りに取り組んだ点です。

もともと「Any.」は、自然派にこだわって造られました。そのため、造りの選択肢は、天然の乳酸菌を取り込みながら行なわれる伝統的な手法「生酛」「山廃」のいずれかで考えていたそう。

今回、生酛を選んだ大きな理由は、創業10年ほどの若い蔵が、より伝統的な手法である生酛に挑戦することで、新たな独自性が生まれるのではないかと考えたから。杜氏もこのコンセプトに賛同し、生酛への挑戦を決意しました。

山廃で造られた第一弾と比べると、その味わいはよりスッキリとした飲み口。しかし穏やかな吟醸香と上品な甘味のなかにも、生酛らしい旨味やコクがありました。アルコール度数が低めに造られているので、ふだん生酛を飲み慣れていない方にも飲みやすい、"生酛の入門編"といったイメージでしょうか。たしかに、どんな食事にも合いそうですね。

ボトルは山廃のデザインを継承しました。前回はクラウドファンディング限定商品だったこともあり、カッティングという高度な技術を使っていましたが、「Any. Kimoto」はコスト削減のためプリントに。一般流通に必要なエコ基準をクリアし、バーコードなどの最低限必要な情報を加えながらも、全体のトーンを変更することなく、第二弾のデザインを完成させました。

思い思いに楽しむ酒。あまり深く考えずに飲んでほしい

「Any.」の営業を担当するのは、日立酒造の加藤秀征さん。ブランドの誕生から現在まで、ずっと「Any.」の成長を支え、奮闘してきました。

加藤さんに「Any.」への思いや今後の展望についてうかがってみましょう。

──「Any.kimoto」は第一弾のデザインを継承していますね。やはりこのデザインに思い入れがあるのでしょうか。

他のデザインで「Any.」を展開することは考えられません。「Any.kimoto」を造るにあたって、前回と同じデザインに落とし込めたのは大きかったですね。このデザインだからこそ、多くの人に知ってもらうことができたと思っているので。

──"日常に寄り添う"というコンセプト通り、気負うことなく手に取れるデザインですよね。

おかげさまで、"ジャケ買い"してくださるお客さんも多くいらっしゃるんですよ。女性の方々にも興味をもっていただいているのがうれしいですね。「Any.kimoto」は価格を抑えることにも成功したので、日常のお酒として気軽に飲んでもらいたいです。

──味わいも個性が強すぎず、いろいろな食べ物と合わせやすそうだと思いました。

個性的な商品は、世の中にたくさんあります。だからこそ「Any.」が目指したのは、ポジティブな意味での"普遍性"。お酒自身が主張しすぎない味わいに仕上げているので、さまざまな食べ物と自由に組み合わせてほしいです。

さらに、いろいろな温度帯で楽しめるのも特徴のひとつ。「1杯目は冷やして。2杯目はぬる燗で」と、気分や好みで温度を変えて楽しんでみてください。

また、飲みきってボトルが空になった後も、どのように再利用できるか想像が広がるようなデザインを意識しました。一輪挿しにするなど、思い思いに工夫してもらえたらうれしいですね。

──今後はどのような展開を考えていますか。

一升瓶サイズでの展開を検討しています。"食中酒"と謳っているので、飲食店からの引き合いも多く、「一升瓶があればお店で提供したい」と言っていただけることも増えてきました。今後は、飲食店向けの一升瓶を展開したいと考えています。

──飲食店で飲めたら、ますます「Any.」のファンが増えそうですね。最後に、これから「Any.」を手に取ろうと思っている人に一言お願いします。

「Any.」はどちらかというと、"絶対に飲んでほしい"というお酒じゃないんですよ。良い意味で、「これでいいかな」と思って飲んでほしい。だから、もうひとつのキーワードは"素"。日常生活に寄り添うお酒として、あまり深く考えずに楽しんでもらえたらうれしいですね。

やさしい味わいで、どんな料理にも寄り添ってくれる「Any.」は、さまざまな食べ物を持ち寄る"家飲み"にもぴったり。洗練されたボトルデザインは、手土産としても喜ばれますよ。

生活感のある自宅にも、雰囲気の良いお店にも馴染むその佇まいは、まさに"Any"の名を体現していました。

今後「Any.」の認知が広がるにつれて、さらに多くの人が日常のなかで日本酒を楽しむようになっていくでしょう。「Any.」が打ち出す次の展開に、期待が高まるばかりです。

(取材・文/ミノシマタカコ)

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