“キリッと冷やして香り華やぐ、旨味が冴える”――これは、2015年の秋に菊正宗酒造から発売された「純米酒 香醸」のキャッチコピーです。

昔ながらの「生酛(きもと)造り」で醸す、重厚な辛口酒が売りのキクマサ。そんな日本酒業界の老舗大手が、従来のイメージを覆す“キリッと冷やしておいしいフルーティーな純米酒”を出したということで、「香醸」は発売当初から現在まで大きな注目と人気を集めています。

そんな「香醸」が、2017年3月にリニューアルされました。一体、どんな点が刷新されたのでしょうか。さらに、日本酒ファンからは、どんな点が評価されるのでしょうか。

今回は、装い新たになった香醸の魅力を徹底解剖。日本酒の伝道者として活躍する“飲み手のプロ”の方々とテイスティング会を実施し、率直な感想をいただきました。

純米酒で大吟醸酒並みの香りを実現!秘密は「キクマサHA14酵母」

試飲の前に、まずは「純米酒 香醸」の特徴と今回のリニューアルの内容について、おさらいしておきましょう。

「香醸」の最大の特徴は「キクマサHA14酵母」を使用している点。これは、菊正宗が独自に開発した“米を多く削ることなく、吟醸系の華やかな香りを引き出す酵母”です。

日本酒における「香りのよい」という要素は、精米歩合が60%以下の吟醸・大吟醸酒の特徴です。お米を磨くことによって出る“吟醸香”が、お酒に華やかさをもたらします。ただし、精米すればするほどコストがかかるので、一般的に「香りがよい」お酒は、総じて値が張るものが多い傾向にあります。この傾向を打破し、“米を磨かない≒コストを抑えて、香り高い日本酒づくり”を可能にしたのが、キクマサHA14酵母なのです。

今回の「香醸」リニューアルでは、製造ラインを見直すことでキクマサHA14酵母の力をさらに引き出すことに成功。華やぐ香りと純米酒らしい旨みはそのままに、よりスッキリとした味わいを実現しました。これに合わせて、これまで透明だったビンを、緑色にチェンジ。しっかりと“純米酒”としての存在感を押し出します。

そして、新たにカップ酒のラインナップ「純米酒 香醸ネオカップ」が加わります。シルバとブルーを基調としたデザインで清涼感とスタイリッシュさを演出し、従来のカップ酒のイメージを刷新しようと試みています。そんな菊正宗の研究・技術の粋が詰まった「香醸」を、若き日本酒の有識者として知られる面々はどのように評価するのでしょうか? 先日、SAKETIMESでは発売前の新「香醸」を入手し、試飲会を行いました。

リニューアルした純米酒 香醸を、“プロの飲み手”に飲んでもらいました!

新しくなった「純米酒 香醸」の試飲会に参加してくれたメンバーは、こちらの3名です。

まずは、日本酒をこよなく愛するフードコーディネーターの真野遥さん。日本酒・出汁・発酵・地域の食文化を主な研究テーマとして、飲食店向けのレシピや地域密着型の商品の開発、ケータリング、料理教室、撮影のコーディネートなど、さまざまな活動を展開しています。

中でも“日本酒”は力を入れている領域で、旅をしながら日本中の酒蔵を巡ったり、日本酒バーの女将をやったり、SAKETIMESでも日本酒ライターとして寄稿したり。おそらく"日本で最も日本酒をこよなく愛する若手フードコーディネーター"と評しても過言ではないはず。

真野さんの日本酒愛は留まることを知らず、なんと今年の4月から、東京農業大学の醸造科学科に聴講生として通うことが決まっているのだとか。

もう1組は、日本で唯一の“きき酒師漫才コンビ”として人気上昇中の漫才コンビ「にほんしゅ」の浅浦史大さん(通称:あさやん)と北井一彰さん。

おふたりとも、きき酒師、日本酒品質鑑定士、日本酒ナビゲーター、焼酎ナビゲーター、ビアナビゲーター、フード&ビバレッジナビゲーターなどの資格を持つ、名実ともに日本酒の飲み手としてのプロフェッショナルです。

コンビ名である“にほんしゅ”は、「今から10年ほど前、居酒屋で飲んでいた時にたまたま付けた名前」だと語るおふたり。それから5年ほど経って、「コンビ名として掲げてるし、お酒も好きだから、ちゃんと勉強してみよう」と、日本酒ナビゲーターの資格を取る勉強を始めたのだそう。これを機に、ふたりは日本酒の世界にドハマり。一時は漫才業を休業して、酒屋さんに住み込んで修行を積んだことも!

2015年に漫才師としての活動を再開してからは、日本酒業界やお酒にまつわるイベントに引っ張りだこに。現在は全国津々浦々に巡業をしながら、日本酒をはじめとしたお酒のすばらしさ、漫才の楽しさをたくさんの人に伝えるため、精力的に舞台に上がっています。

こちらのメンバーに、新「香醸」のテイスティングを行ってもらいました。

試飲会スタート! 「純米酒 香醸」はどんなシーン、どんな料理に合う?

ここからは、試飲会の様子を座談会形式でお伝えします。“プロの飲み手”である3人は、果たして「純米酒 香醸」にどんな感想を抱くのでしょうか?

―(SAKETIMES編集部) 今日はお集りいただき、ありがとうございます! 堅苦しい話は抜きにして、リニューアルされた「香醸」を飲んで、率直な感想を聞かせてもらえたら幸いです。では、一応お仕事ではありますが(笑)、カンパイからはじめましょう!

一同:かんぱーい!!!

浅浦史大さん(以下、あさやん):「カンパイ」という響きは、人を幸せにしますよね。

真野遥さん(以下、真野):わかります、ずっとカンパイしていたい。

北井一彰さん(以下、北井):あの、わかりますけど2人とも。お酒の感想言うのが今日の僕らの役目ですからね。わかるけれども。

―みなさん、一口飲んでみての所感はいかがでしょうか? 菊正宗さんには「いい面も悪い面も、出た意見は正直に載せます」と許可をもらっているので、ぜひ忌憚なくご意見を聞かせてください。

北井:これ、「香醸」って純米酒ですよね?

―そうです。

北井:いや、まず飲む前に鼻に通る香気が、めちゃくちゃ華やかですね。吟醸らしい、カプロン酸エチル由来のお手本みたいな香りがします。

真野:ホントですね! 純米って言われなきゃ「吟醸かな?」って思っちゃいそう。

―飲み口はどうでしょうか?

真野:香りは強いんですけど、飲んでみると吟醸よりもまろやかな口当たりで、しっかりと余韻が残りますね。

あさやん:そうそう。そこに“キクマサらしさ”が感じられるというか。

北井:伝統の「押し味」ですね。味の切れはありつつ、後の引く風味は残る。吟醸酒と純米酒の併せ持った、非常にバランスのいいお酒ですね。

―菊正宗のお酒って、普段飲まれますか?

北井:恥ずかしながら、大手の酒蔵のお酒を飲むようになったのって、ここ最近のことなんですよ。ようやく少し日本酒のことが詳しくなってきて、初めて大手の偉大さがわかってきたなと。

真野:わかります、私もです。

あさやん:外で飲む時はどうしても、珍しい地方の地酒とか頼んでしまいますもんね。研究のためにも。

北井:いろいろ飲んでから、あらためて大手のお酒を飲んでみると、やっぱりコスパではズバ抜けているなと感じます。値段以上に価値のあるお酒も沢山ありますよね。

あさやん:せやな、ワンカップとか「おっさんのお酒やん(笑)」って思ってたけど、いま飲むと「これでこの値段ってウソやろ?」ってなるわ。

真野:多分、場所やシーンによって、合うお酒もかわってきますよね。地方の地酒は、やっぱりその土地で飲むのが一番合う。一方で、大手酒蔵のお酒も、たとえばキクマサさんだったら、老舗の蕎麦屋さんとかで、そば切りと一緒に徳利で出してほしいな、とか。

北井:しっぶい! 平成生まれの子の言うことじゃないで(笑)

―いま、飲むシーンの話が出てきましたが「香醸」はどんなシチュエーションに合いそうですか?

北井:なんやろ、普段使いもできるんやけど、この豊かな香りが華やいだ気持ちにさせてくれるから、仲間うちが集まる場に持っていきたい感じもしますね。

真野:そしたら、いまの季節だとお花見ですね!

あさやん:あー、それはピッタリですね! 花見って日本酒がガッツリ好きな人もいれば、そんなに飲まない人もいるから。

北井:確かに。「香醸」は日本酒初心者でも、口当たりがフルーティーだから飲みやすくて「おいしい!」ってなると思うし。

あさやん:日本酒おじさんに飲ませても「これは、なるほど……」ってなるヤツですよ(笑)。「大手の酒なんか安っぽくて飲めるか!」って偏見を持っている人なら、なおさらね。

真野:友だちとまったり家飲みしてて、お酒足りないから「買い足しに行こう」ってなった時に、「香醸」がコンビニに置いてあったらうれしいなあ。

北井:感覚的にですけど、休みの日の午後3時くらいから飲みたくなる気がします、「香醸」は。

―家飲みのシチュエーションで香醸を飲むとしたら、どんな料理と合わせます?

真野:香りの印象から考えると、洋風な料理との相性がよさそうかなと思います。

北井:そうですね。トマトソースとかクリーム系の味付けの料理だと、日本酒との組み合わせの意外性も含めて、楽しめるんじゃないかなと。

あさやん:ピザとかも合いそうやね。

真野:コンビニで一緒に買えるものだと、チーズもきっといけますよ!

―合わせるなら和食より洋食、といった感じでしょうか?

北井:いや、和食が合わないというわけではなくて。やっぱり、純米酒らしい芳醇な味わいもありますから。

あさやん:言っちゃえば、日本酒って基本的に合わない食べ物ないですから(笑)

真野:日本酒に対するイメージをちょっと変えるためにも、せっかくなので洋食とのマリアージュを試してみてほしいです。

―最後にもうひとつ。香醸を勧めるとしたら、どんな人にオススメしますか?

あやさん:若い人に飲んでもらいたいね、コレは。大学生とか。

北井:あ、大学生のみなさん、くれぐれもお酒は二十歳になってからですよ!

真野:日本酒を飲んだことない子にも、一口飲んでみてもらいたいですね。

あさやん:それこそ、花見とかで大学生が「香醸」を飲んでたら、日本酒好きの玄人おじさんが「お、お前ら若いのにキクマサなんか飲んでるんか? わかってるやないか!」って混ざってきそう(笑)

真野:素敵ですねー! 日本酒ってそういう引力を持っている気がします。世代を超えて繋がれるきっかけになりやすい。

北井:僕らも、日本酒をきっかけに可愛がってもらったり、お仕事をもらえたりしていて、その力をリアルタイムに実感しています。だから、若い人たちを含めて、もっと日本酒が日常的なものになってくれたらいいなと感じていて。そのファーストステップとして、「香醸」はピッタリですね。

あさやん:あの……、もう一杯もらっていいですか?(笑)

―どうぞどうぞ(笑) みなさん、たくさんのお話をありがとうございました!

フードコーディネーターの真野さん、きき酒師の資格を持った「にほんしゅ」のおふたりからも太鼓判をもらった「香醸」。(記事には盛り込めていませんが……)北井さんが座談会中に言われた“コンビニでも手に入る、身近なお酒の一等賞”というフレーズが、「香醸」を最も的確に捉えている表現ではないかなと、編集部では感じています。

ともあれ、香醸の香り・味のよさは実際に飲んでいただかないと、残念ながらお伝えしきれない部分も多いです。この記事をご覧になって「どんなお酒なのかな?」と気になった方は、ぜひ「香醸」を見かけたら手に取ってみてくださいね。

(取材・文/西山武志)

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