日常の食卓に寄り添い、毎日飲んでも飲み飽きしないことを大切にして造られている、沢の鶴の純米酒。SAKETIMESでは、そのなかでも、パック酒の「米だけの酒」に注目し、連載を通してその魅力をお伝えしてきました。

「米だけの酒」は、軽量で持ち運びやすく、飲み終わった後の処理も簡単というパック酒としての利便性はもちろん、どんな食事やシーンにも合う飲みやすい味わいも大きな魅力。麹米を精米歩合65%まで磨くことで、軽やかな飲み口でも米の旨味がしっかりと感じられる純米酒として、多くの人々に愛飲されてきた、"ワンランク上のパック酒"です。

純米酒売上No.1ブランドを誇る、沢の鶴「米だけの酒」

合わせる食事を選ばない「米だけの酒」。まだまだコタツから出たくない今の季節に食べたくなる定番料理・おでんといっしょに楽しむのはいかがでしょうか。沢の鶴のベテラン社員とともに都内の人気おでん店を訪ね、おでんと日本酒の相性を探ってきました。

おでんと日本酒を愛する人気店「件」で日本酒トーク

訪れたのは、東急東横線 学芸大学駅から徒歩2分の場所にある居酒屋「件(くだん)」。2004年のオープン以来、たびたび予約困難になるほど酒好きが集まり、さまざまなメディアにも取り上げられてきた有名店です。

東急東横線「学芸大学」駅徒歩2分の場所にある居酒屋「件(くだん)」内観

「件」の看板メニューは、こだわりのだしで仕込んだ種類豊富なおでん。定番から店のオリジナルまで、常時20~25種類ほどのおでん種を取り揃えています。お酒は全国の地酒をメインに取り揃え、酒質や料理に合わせた最適な温度で提供しています。特に、お燗番が絶妙な温度でつけた燗酒とおでんのペアリングは、多くの日本酒ファンを魅了してきました。

「お店に入ってすぐ、だしの良い香りがしますね」

そう言って目を細めるのは、沢の鶴でマーケティング室副部長を務める樋口隆彦さん。「米だけの酒」とおでんの相性を体感してもらうべく、今回の取材に参加していただきました。勤続38年のベテランで、沢の鶴の味わいを熟知しています。

沢の鶴マーケティング室副部長の樋口隆彦さん

沢の鶴 マーケティング室副部長の樋口隆彦さん

「だしを引くところから、毎日の仕込みが始まるんです」

そう答えたのは「件」店主の川辺輝明さん。透き通るような美しいだしからは強いこだわりが感じられます。また、三軒茶屋の日本酒居酒屋「赤鬼」出身という経歴や、ショーケースにずらりと並んだ全国各地の銘酒からは、その日本酒に対する愛がひしひしと伝わってきます。

「件」店主の川辺輝明さん

「件」店主の川辺輝明さん

ふたりとも、毎日のように晩酌するほどの日本酒好き。さっそく「米だけの酒」と「件」自慢のおでんを前に、日本酒トークに花を咲かせ始めました。

常温で、熱燗で......「米だけの酒」と楽しむ絶品おでん

樋口「こちらはおでんがメインの店ですが、1年中おでんを出されているんですか?」

川辺「もちろん。だしは鰹と昆布をベースにシンプルに仕上げていて、冬は鰹、夏は昆布が強めに出るように味を変えています。やっぱり、温かいものを食べるのは、季節を問わず身体に良いですから。夏に燗酒を飲む方もいますしね」

ぐつぐつと煮られる、冬に美味しそうなおでん

樋口「良いだしの香りがしますね。日本酒を合わせたくなります」

川辺「うちには『だしで酒を飲む』というコンセプトがあるんです。燗といっしょに冷えた和らぎ水を飲むと、熱さと冷たさで身体の温度調節がおかしくなってしまいます。燗とともに温かいだしを飲むのは身体にもやさしく、次の日もおいしくお酒を飲むことができる。そんな食べ方・飲み方をお客様に伝えたいと思っています」

樋口「お客様はどういう方がいらっしゃるんですか?」

川辺「最近は女性が多いですね。日本酒ブームの影響か、しっかりとメニューを見て銘柄を指定してくる方も多いです。店を始めた14年前には、そういうことがなかったので、飲み手も世代交代しているのかなぁと。日本酒の未来は明るいと思います」

樋口「若い方は、日本酒に対する先入観があまりないから受け入れやすいのかもしれませんね」

川辺「そうですね。あ、ぜひ温かいうちに召し上がってください。今日はいろいろな種類のおでんを用意しました」

定番の大根、玉子、ちくわなどの他に、旬の真っ赤な京人参、人気の鶏つみれなどバラエティ豊か。

定番の大根・玉子・ちくわなどの他、旬の真っ赤な京人参、人気の鶏つみれなど、バラエティ豊かな盛り合わせ。

樋口「これはおいしそうですね。ぜひ『米だけの酒』といっしょにいただきましょう」

常温でお猪口にそそぐ、沢の鶴「米だけの酒」

川辺「それではまず常温で、いただきます......あ、これは毎日飲めちゃいますね(笑)。(だしをひと口すすって)うん、やっぱりだしとの相性も良い」

樋口「だしがすごくやさしい味ですね。味に尖った感じがなくて、とてもおいしいです」

おでんを食べる沢の鶴・樋口さん

川辺「おっしゃるとおり、うちのおでんは『連休明けに食べたい』『外食続きで疲れたときに食べるとホッとする味』とよく言われるような、やさしい味が特徴です。そういうおでんに合わせるなら、インパクトの強いお酒よりも、主張が控えめで一歩引いたようなお酒が良いと思っています。落ち着いた味わいのお酒と合わせたいので、スッキリと飲める『米だけの酒』はぴったりですね」

樋口「『米と麹だけで、毎日飲んでも飲み飽きしないお酒を造ろう』とスタートしたのがこのお酒です。発売当時の1998年前後はいろんな純米酒があって、重いものや飲みづらいものも多かったと思います。そんななか、麹米を極力削ってスッキリ感を出そうというチャレンジングなお酒ですね」

川辺「ふだん、パック酒はあまり飲まないんですが、こんなにおいしいならアリだと思いました」

樋口「『宮水』という酒造りに適した水、良い米が獲れる地域が近く、蒸米を効率的に冷やしてくれる『六甲おろし』の風......灘にはおいしいお酒の条件がそろっているんです」

六甲山と、沢の鶴本社すぐ横を流れる都賀川

六甲山と、沢の鶴本社すぐ横を流れる都賀川

川辺「どうしても、"東北などの寒い地域で行われる冷蔵施設の要らない寒造りこそ、日本酒"というイメージがありましたが、西には西の文化があるんですね。せっかくなので、燗も飲んでみましょうか。このお酒ならあまり熱くしすぎないほうが良さそうですね」

樋口「45~50度ぐらいを推奨しています」

川辺「では、こちらもひと口......あ~なんだかお風呂に入っているみたい。いい湯だなって感じですね(笑)。常温でもするする飲めますが、燗にするとおいしい酸が出てきます」

樋口「この鶏つみれともよく合いますね。噛むとやさしいだしがじゅわ~っと出てきます。私もここ最近『米だけの酒』を家で燗にして飲むのが楽しみになっているんです。料理の味にも、よりふくらみが出ますね」

おいしい「米だけの酒」と「おでん」で、沢の鶴・樋口さんと、件・川辺さんの会話もはずみます。

川辺「大手メーカーのお酒は味がブレないようにしないといけないから、技術が必要ですよね」

樋口「どうしてもタンクごとに微妙な味の違いがあるので、それをいかにうまくブレンドして、いつもの『米だけの酒』にするかが大事になってきます」

川辺「年によって米の出来が違うなかで、そこを合わせるのがやっぱり大手メーカーの技術力だなと思います。僕たちと付き合いのある蔵は、規模の小さいところが多いので、どうしても毎年味が変わる。それはそれで楽しいのですが、再現性が高いというのは、ものづくりとしてすごいと思います。今度、造りを見学しに行ってもいいですか?すごく勉強になると思うので」

樋口「ぜひいらしてください。しっかりと案内させていただきます。いやぁ、それにしても本当にだしがおいしいなぁ」

自宅で、"おでん×日本酒"を楽しむコツ

おでんと「米だけの酒」のやさしい味わいにすっかり打ち解けた様子で、会話を弾ませるふたり。まるで自宅で盃を交わしているようなリラックスした表情です。

実際に、家でおでんとお酒を組み合わせるなら、どんな工夫をすればよりおいしくいただけるのでしょうか?

川辺さんに、家庭でも真似できるポイントをうかがいました。

川辺さん

「大根・たまご」と「それ以外」は別々の鍋で

「ちょっと手間を増やすだけで、プロの味に近づけられますよ。

おでんに対して、"ごった煮"というイメージがあるかもしれませんが、実際は"炊き合わせ"なんですよね。たとえば、大根は下茹でをして味を含ませてからおでんの鍋に入れますが、茹でていると少し臭みが出てくる。たまごもそうですね。

家庭でつくる場合は鍋を2つ用意して、臭みが出がちな『大根・たまご』と『それ以外(練り物など)』を、それぞれ別の鍋でつくることをおすすめします。うちでも、大根とたまごは他の具材と味付けを変えて、別々に茹でています」

お酒を選ばない、やさしい味つけを

「家庭では、みりんを使うことも多いですよね。みりんを使えば、旨味を出すのは簡単です。ただ、みりんを使わずにできるだけエッジを丸くするようなイメージでだしを引いていくと良いですね。甘辛な味付けにすると、合わせるお酒が、熟成酒や味の強いお酒に絞られてしまいます。あっさりとした薄味にすると、いろいろなお酒を受け入れられるおでんになります」

物足りないときは調味料に「酸」をプラス

「僕、だしの取り方はお客さんや同業者に聞かれたらすぐに教えちゃうんですよ。絶対再現できない自信があるので(笑)。でも、辛子味噌などの手づくりした調味料のレシピは門外不出。うちの店から独立したスタッフも、だれにも教えていないと思います。家庭で試してみるなら、カラシにちょっと味噌を入れて、酢や柑橘系で少しの酸を足すと良いかもしれません。味付けが物足りないと思ったら、適度な酸を足すことでおいしくなりますよ」

毎日食べたいおでん、毎日飲みたいお酒

樋口「素材の良さを引き出すおいしいおだしで、ついお酒が進んでしまいました。また飲みに来ますね」

川辺「お待ちしてます。僕もおいしいお酒に出会えて良かったです。ぜひ、蔵へ遊びに行かせてください」

まるで旧知の仲のように、別れ際まで談笑していたふたり。熱々のおでんと、するすると飲める燗酒が身も心も温め、ふたりの距離をグッと縮めてくれたようです。

まるで旧知の中のように、別れ際まで談笑していた沢の鶴・樋口さんと、件店長・川辺さん

おでんと「米だけの酒」。これらに共通しているのは、毎日の食卓に並べても、食べ疲れしない・飲み疲れしないということ。豪華な食事や香りの華やかなお酒はたまのごほうびに取っておくとして、日常的に楽しむなら、あっさりとしただしの料理とその味を邪魔しない日本酒が最適ですね。

川辺さんのアドバイスを参考におでんをつくるのも良し、スーパーやコンビニで購入して手軽に楽しむのも良し。寒い季節に食べたくなるおでんと、毎日飲んでもスッキリとした飲み口を楽しめる「米だけの酒」。この組み合わせこそ、冬の晩酌の最強タッグかもしれません。

(取材・文/芳賀直美)

◎店舗情報

  • 店名:「件」
  • 住所:東京都目黒区鷹番3-7-4 関口ビル1F
  • 電話:03-3794-6007
  • 営業時:火~土 17:00~24:00(L.O. 24:00)、日・祝 17:00~23:00(L.O. 23:00)
  • 定休日:月曜日

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