こんにちは、酒匠・利き酒師協会研究室専属テイスターの石黒です。
今回は、石川県の大学生が米造りから酒造りまでを手掛ける活動について取材を行い実際にN-projectのお酒について取材を行ってきました。
金沢大学の又木さんからお話をお伺いし、実際にN-project酒を利き酒師協会専属テイスターとしてテイスティングし、テイスティングコメントを通して私が感じた活動に関しての感想をみなさまにお伝えしようと思います。
モノづくりの再発見につながる
石川県の大学生が集まり平成26年3月からこのプロジェクトはスタートしました。県内の大学の学生さんと石川県出身の関西の大学に通う学生さんが一体になって米造りから酒造り、実際に商品の企画、販売までを手掛けるプロジェクトです。
私がこの活動をSAKETIMESの記事や又木さんのお話をお伺いして感じたのは、米造りから酒造り、商品の企画販売を学生さんたちが行うことにより、日本的なモノづくりや商売の原体験を学生さんたちが肌で経験しているということでした。
現代は、大学を卒業して企業に就職しても、現場にてモノづくりや商売を体で経験することが少なくなってきているように感じますので、学生さんたちにとっても、社会全体から見ても非常に有意義な活動を行っているなと感じることが出来ました。
学生さんの農業体験と休耕田問題
我々日本人はお米を主食にする一方で、実際にお米を作っている現場や田んぼ稲が育つ様子を見る機会は限られているように感じますし、日本の農業の現場では休耕田や若い世代の方が農業に進まないことが問題になっています。
このN-projectのお酒、企画は金沢市内、酒米の生産は志賀町、酒造りは能登町でやっていて、企画は北陸の大都会、酒米は過疎の町、酒造りはお酒の銘醸地である能登半島の能登町と見事なくらい製品になるまでの過程が分散されています。
今回休耕田を有効に使おうと考えるアイデアも素晴らしいと感じましたし、その休耕田から実際に農業体験を通して学生さんたちがお米を作ることは、日本の食文化を実体験で学べるという一石三鳥位の経験を出来ている訳で、このような貴重な経験は後で社会人になったときに、間違いなく役に立つのだろうと感じました。
石川の企業と行政からの支援
このN-projectには、酒蔵の数馬酒造さんをはじめとして、石川県の複数の企業が参加しているようですが、学生さんの酒造りのインターンというレベルを完全に超えて実際に商売として成り立つレベルで事業が展開していますし、商売がどれだけ厳しいかを学ぶ上で非常に有意義な経験をしているのだろうと感じました。
このプロジェクトに対して、石川県から助成金が出ているようですし、その助成金の背景には石川県として日本酒を何とか県の特産品として売っていきたいことや、若い世代の方に日本酒の良さを実体験から学んでもらい、まずは近いところから日本酒離れを変えていこうという姿が見えます。
実際にラベルのデザインから販売までを手掛ける
ラベルを実際に作っているのは金沢の会社のようですが、ラベルやボトルのデザインに関しては、金沢美大の学生さんが考えているようで、手に取りやすく、いままでの日本酒のイメージとはひと味違ったデザインになっているので、瓶を手にしたときに、このお酒は人気が出そうだと感じました。
白山菊酒と石川県の特産品である日本酒
日本の酒類の生産の地域認証が世界的に認められているのは、沖縄の琉球泡盛、鹿児島の薩摩焼酎と奄美の黒糖焼酎、熊本の球磨地方の米焼酎と長崎県の壱岐の麦焼酎、山梨県のワインと石川県の白山菊酒で、日本酒の銘醸地であるはずの兵庫の灘や伊丹も、京都の伏見も、広島の西条も地域認証されていないと私は考えます。
もちろん、白山菊酒の原点である加賀菊酒に関しても、歴史的にも食文化的にも長い歴史を持っています。
白山菊酒に関しては、国税局や石川県の働きがあって認証されていますが、何とか石川県の特産品として日本酒を売っていこうと官民一体になって努力をしていることが見えるように感じましたし、実際に白山菊酒の認証の審査の様子を去年目にしましたが、非常に厳しく審査されているのが理解できました。
やはり、先般NHKで公開されたドラマのリキッドの舞台に石川県が選ばれたりすることも、石川県が特産品として日本酒を売り込んでいこうということが影響しているように感じました。
日本酒テイスティングフォーマット
基本情報 | 銘柄 | Chikuma N N-project酒 | ||
蔵元名 | 数馬酒造 | |||
特定名称 | 純米酒 | |||
評価日 | 5/13 | |||
テイスティング者氏名 | 石黒 建大 | |||
お客様向けコメント | この日本酒の特徴 (Ⅰ香りⅡ味わいⅢ後口) | Ⅰ原料香主体、ハーブ系の香りを含み、淡い柑橘系の香りを含む・Ⅱ爽やかでありながらふくよかな飲み口・Ⅲキレ良くスッキリしている ※燗の方が料理に合わせやすい | ||
このお酒をお勧めする際のポイント | 非常にフレッシュで、ふくよかで柔らかい味わい。燗でさらに柔らかくふくよかに。特に女性や若い世代の方にお薦め。器は小ぶりのワイングラスや陶器の盃がお薦め | |||
相性の良いと 考えられる料理例 | シーザーサラダ・スモークサーモンのマリネ・ブリの照り焼き・ブリの造り・春巻き・茄子の煮浸し・からすみ・シューマイ・レタスチャーハン・小龍包等 | |||
香り | 華やかな香り(1~10) | 2 華やかな香り・甘み | ||
爽やかな香り(1~10) | 2 ふくよかな香り・旨味 爽やかな香り・酸味 | |||
穏やかな香り(1~10) | 3 | |||
ふくよかな香り(1~10) | 3 | |||
味 | 甘味(1~10) | 2 | ||
酸味(1~10) | 4 | |||
苦味(1~10) | 3 | |||
旨味(1~10) |
4 穏やかな香り・苦味 | ||||
テイスティング者コメント | 外観 | 健全度 | 健全 | |
具体的色調 | 淡い山吹 | |||
香り | 強さ | 中程度 | ||
複雑性 | 中程度 | |||
香りの具体例 | 炊いた白米・ヨーグルト・マシュマロ・すだち・ミネラル・スペアミント・クレソン・瓜・青竹等 | |||
味わい | 強さ(アタック) | 中程度 | ||
複雑性 | やや複雑 | |||
甘辛度 | やや辛口 | |||
具体的な味わい | すっきりしつつもふくらみのあるテクスチャー・ふくらみがあり柔らかい旨味が主体・キレ良くスッキリとした後口・さっぱりしつつもふくよかな含み香 | |||
この日本酒について 自分で感じた特徴 | キレ良くスッキリしつつも柔らかくふくらみのある旨味を持った醇酒 | |||
4タイプ | 分類 | 醇酒 | ||
飲用したい温度 | 15℃前後又は45℃前後 |
※このフォーマットはSSI日本酒香味評価総合データベース酒仙人のテイスティングフォーマットを参考にして、新たに作成したものです。
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