最近「世の中は日本酒ブームだ」という話をあちらこちらで耳にします。それでもまだ、日本酒というと「飲みにくい、親父くさい、オシャレじゃない」というイメージを抱いている人が多いかもしれません。

そんなイメージを変え、新しい日本酒の楽しみ方を提案するイベントが7月7日、神戸で開催されました。

「KOBE SAKE STYLE ~灘の酒 七夕 Night in sola~」と題されたこのイベントの主催は灘五郷酒造組合。華やかでオシャレな雰囲気の会場・神戸北野クラブsolaに、若い女性グループや男女ペアを招き、各酒蔵のラインアップに合わせたフィンガーフードをつまみながら、ワイングラスで華やかに日本酒の飲み比べを楽しむパーティーです。

灘五郷の蔵はブースで15蔵、バーカウンターで4蔵が出店。イベントの参加希望者がたいへん多く、なんと倍率は約2.5倍。約200人あまりが参加する盛況ぶりでした。

神戸を一望しながら楽しむ日本酒

JR・神戸市営地下鉄新神戸駅から、急な坂道を10分ほど登ると、モダンでオシャレな建物が見えてきます。こちらが会場の「神戸北野クラブ sola」。

玄関では正装したスタッフと「灘の酒」と書かれた菰樽(こもだる)がお出迎えしてくれます。

高台にある会場からは神戸を一望することができました。神戸らしい風景に、気分もアガりますね。

会場までのアプローチにはカラフルな和傘のディスプレイがあり、七夕らしい和モダンな雰囲気を演出していました。

まずは、フリーアナウンサー・和酒コーディネーターのあおい有紀さんによる「OSAKEセミナー」で灘の日本酒について楽しく学びます。

日本酒の基礎知識から始まり、灘酒の歴史や特徴、料理との合わせ方などの日本酒の楽しみ方、さらにはご自身の経験によるスペイン料理と日本酒のペアリング、日本酒の美容効果、神戸でおすすめの日本酒スポットなど、明日から役立つ日本酒情報が満載のセミナーでした。

灘の酒に乾杯!フィンガーフードとのペアリングを楽しむ

セミナー後、パーティー会場に移動して、みんなで乾杯!

ドレスコードはスマートカジュアル。七夕らしく、浴衣に身を包んだ美しい女性の姿も多く、会場に華を添えていました。

いよいよ、各蔵自慢の日本酒と神戸北野クラブのシェフが腕によりをかけたフィンガーフードとのペアリングを楽しむ時間がやってきました。乾杯と同時に、ジャズの町・神戸らしく、ジャズ演奏も始まります。

こちらは泉酒造のブース。「仙介 純米大吟醸」× ポロネギのキッシュ。

「華やかな吟醸香のあとにキレがあり、日本酒本来の旨味も感じられるので、クリーミーなキッシュにぴったりなんです」

こちらはカニとリコッタチーズのクネル。2年熟成酒をブレンドした「瑞穂 黒松剣菱」と合わせます。

熟成酒といっしょに飲むと、カニの繊細な風味が負けてしまいそうと思ったのですが、杞憂でした。こちらの熟成酒は軽い香りとボディで、バランスの良い上品な味わい。カニの滋味と、リコッタチーズのやわらかいパンチが寄り添います。意外な組み合わせにびっくりでした。

熟成酒を軽めに冷やして、ワイングラスでいただくのもおしゃれですね。

「香りも穏やかで、まるみのある味わいなので、女性にも楽しんでいただけるように考えました」

こちらは、イクラのプーシェ。「日本盛 生原酒 純米吟醸 ボトル缶」といっしょにいただきます。

200mlの缶に詰められた珍しい酒。「コンビニでも売ってます!純米吟醸で300円です!」とのこと。生原酒の濃淳でフルーティな甘みの中に、灘酒らしいふくよかさとボディ、キレが健在。この甘みとキレが、イクラがもつ磯の香りとパイ生地の組み合わせにマッチしていました。

続いては、スパイシーチキンと「白鹿 ICE SAKE あいす酒 原酒 Sweet」の組み合わせ。

こちらも甘口で、濃厚なコクがあります。このコクと甘みに、スパイスの香りとほんのり甘いチキンの旨味が寄り添っていました。日本酒はエスニック料理にも合うんですね。素晴らしいマリアージュです。

どのブースも素晴らしいペアリングで、参加者の方々も楽しそうに利き酒を楽しんでいました。

今回、取り上げられなかったペアリングは以下の通りです。

  • 「菊正宗 百黙 純米大吟醸」× スモークサーモンのカナッペ
  • 「沢の鶴 SHUSHU」× 鴨のコンフィ ブランダード
  • 「大黒正宗 純米吟醸 無濾過生原酒」× パテドカンパーニュ
  • 「道潅千代田蔵 特別純米生原酒 千代田蔵フクノハナ15°」× 鮪の生春巻き
  • 「大関花泡香」× タコのマリネ
  • 「櫻正宗 SparklingSakeDry」× 生ハムのカナッペ
  • 「超特選白鶴 純米大吟醸 白鶴錦」× アブルーガとポテトのブリニ
  • 「福寿 純米吟醸」× ホタテ貝のタルタル
  • 「松竹梅白壁蔵『澪』」× 海老のカクテルソース
  • 「吟醸純米 超特選白鷹」× 蒸し鶏
  • 「美人蔵部 本醸造 生酒原酒 島美人」× ブルーチーズのカナッペ

「灘の伝統×神戸らしさ」の可能性

会場が大盛り上がりしているところで、人気雑誌『JJ』で専属モデルを務める、有末麻祐子さんのトークショーが始まりました。

「和食はヘルシーなのでよく食べるのですが、それに日本酒を合わせることが多いです。モデル仲間の間でも人気なんですよ」。有末さんの美の秘訣は"日本酒と和食"にあるのだろうと思わせる華やかなトークに、会場のみなさんは日本酒を片手に耳をかたむけていました。

ほろ酔いのところで、参加者の方にお話をうかがいました。地元神戸から参加されている、仲良し二人組。

「今日はいろいろな種類を飲めて良かったです。地元の日本酒を知るきっかけになりました。日本酒のイベントは大阪や京都などで行われることが多く、神戸ではあまり開催されないので少し寂しく思っていました。しかし、今回は神戸らしいおしゃれなイベントに参加できてうれしいですね」

いよいよイベントもフィナーレ、お楽しみの抽選会。各蔵元が用意した、純米大吟醸酒などのプレミアム酒が当たるたびに、観客席から歓声があがりました。

気づくと夜もとっぷり暮れ、神戸の美しい夜景がほろ酔いの眼下に広がっていました。

灘五郷の日本酒は、硬水から醸し出される、しっかりしたボディとキレが魅力。神戸らしいインターナショナルなフィンガーフードに合わせ、ワイングラスでオシャレに美味しくいただくことで、日本酒の飲み方に新しい光を当て、若い人や女性など、日本酒離れがささやかれる層の日常に寄り添うペアリングを提案する、たいへん興味深いイベントでした。

(文/山口吾往子)

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