「農家の酒プロジェクト2017」は、北海道旭川市の酒蔵で旭川産の酒造好適米「彗星」を使って、"純・旭川産の日本酒"を造ろうという試み。市民の人々が田植えや稲刈りなどの農作業や酒造りの見学、ラベル貼りなどの作業を通して、田んぼで育てられた米が酒となって市場に出るまでの流れを、リアルに体験できるのが特徴です。

いよいよ蔵出し、私たちの酒

農家の酒プロジェクト2017・これまでのプログラム

このプロジェクトではこれまで、田植え体験や、高砂酒造での仕込みと搾りの見学会を実施してきました。

そして2018年2月、いよいよ日本酒が完成。2月17日の発売日に合わせて、高砂酒造の蔵内でお披露目会が開催され、プロジェクトの会員とその家族ら、約80名が集まりました。

農家の酒プロジェクト2017・ラベル貼りの様子

お披露目会のスタートは、瓶にラベルを貼る作業から。会員が入会特典として持ち帰るぶんに1本、さらに当日来られなかった会員に発送するぶんや、会場で販売されるぶんを合わせて、ひとりあたり数本を担当します。お披露目会が開催された2月は、まさに厳寒期。蔵の中は暖房をつけても肌寒く、参加者はコートを着たまま、作業に精を出しました。

農家の酒プロジェクト2017・完成披露会とラベル貼りの様子

ラベルは、酒の顔になる「胴ラベル」、その反対側に貼るスペックなどが記載された「裏ラベル」、前面上部に貼るセールスポイントを書いた「たすき」の3種類です。

農家の酒プロジェクト2017のラベルデザイン

これを1枚ずつ手作業で貼っていきます。曲がったり傾いたりせずに美しく貼るためのコツを、酒蔵のスタッフがていねいに説明してくれました。

瓶の表面をそっとなでると、工場で製造されたときにできる、うっすらとした縦線があることがわかります。この線にラベルの辺を合わせることで、垂直に貼ることができるのです。また、胴ラベルの高さを合わせたり、裏ラベルを胴ラベルの真裏に正確に貼ったりするために、スタッフが手づくりした専用の定規を使います。

農家の酒プロジェクト2017・ラベル貼りの様子

悪戦苦闘しながらも、すでに数回参加しているベテラン会員が手本になってくれたおかげで、和やかな雰囲気のなか、およそ1時間で作業を終えることができました。

みんなで味わう完成の喜び

そしていよいよ、参加者たちが植えた酒米で醸した新酒のお披露目です。

はじめに、高砂酒造の森本杜氏が「5月の田植えから今日まで、みなさんご苦労様でした。みなさんの育てた米を使い、無事に酒を造ることができてホッとしています。美味しい酒をゆっくりと味わってください」と、あいさつ。鏡開きを合図に、宴会が始まりました。

農家の酒プロジェクト2017・完成披露会の様子

みんなで乾杯をして、新酒を味わいます。口々に「香りが清々しいね」「スッキリとしていて、美味しい!」と、感想を交わしていました。

味わってみると、甘酸っぱい香りとフルーティーな旨味を湛えた、いかにも新酒らしい美味しさ。泥の中で悪戦苦闘した田植えや、秋に首を垂れる稲穂の様子を思い出すと、味わいもまた格別です。まろやかな口当たりとスッキリとしたキレで、ついつい杯が進んでしまう軽快さがあります。そのおかげか、次第に参加者の心もほぐれ、初めて会った会員同士が自然と仲良くなって会場がにぎやかに。酒が取り持つ縁ですね。

参加者のなかには、子ども連れの家族や、今回が2度目・3度目の参加という人もいました。プロジェクトが始まってから6年間、毎回欠かさずに参加しているという熱烈なファンも。このプロジェクトの魅力は、非日常的な体験を交えながら日本酒により親しむことができるところなのでしょう。

お披露目会の肴は、粕汁や魚の粕漬けが用意されました。今回のお酒を搾った酒粕で料理したという粋な演出です。酒との相性も良く、あっという間に完食。また、同じ酒粕を使った甘酒も振る舞われました。

締めのあいさつでは、プロジェクトを主催する「株式会社うけがわファーム」代表取締役の請川幹恭さんが謝辞を述べるとともに、次年度もプロジェクトを行うことを発表。「より楽しんでいただけるように準備を進めていくつもりです」と、抱負を語りました。

これにて2017年度のプロジェクトはすべて終了。会員は自分でラベルを貼った「農家の酒 無濾過生原酒」を持ち帰りました。4月には、火入れをした酒が会員特典として送られる予定です。

酒を楽しみに待ちながら、来年のプロジェクトにまた期待しましょう。

◎「農家の酒プロジェクト2017」概要

  • 主催:株式会社うけがわファーム(北海道旭川市東旭川町)
  • 共催:高砂酒造株式会社
  • 作付面積:6,000坪
  • 酒の生産量:8,000リットル (無濾過生原酒:1800ml×500本/火入れ:1800ml×2,700本・720ml×3,600本)

(取材・文/KOTA)
(撮影/高砂酒造株式会社・KOTA)

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