日本酒を知る

日本酒を楽しむ

日本酒を考える

特集

食ブームと日本酒の関係 ~時代ごとにみた日本酒の飲まれ方~

> > > 食ブームと日本酒の関係 ~時代ごとにみた日本酒の飲まれ方~
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本の食は多種多様。明治維新から欧米を中心に世界中の食を取りこんでいった日本の「食」。洋食や中華はもちろん、エスニックや北欧、アフリカ料理など、日本には世界の食が溢れています。そこには流行語大賞という言葉があるように、日本人の新しいもの好きな気質や「食」への興味が旺盛な国民性がうかがえます。

一方、日本酒ははるか昔から日本人の「食」とともに根付いてきた歴史の長い飲み物。過去の食ブームと日本酒の歴史を振り返り、俯瞰することで見えてくる共通点について考察します。

過去の「食ブーム」をふりかえる

sake_g_shokutonihonsyu01_01

ざっと時代の流れを俯瞰してみると、これまでの「食ブーム」には、いくつかの共通原理が存在します。

それは
・時代ごとの景気や世相と連動する
・本流ブームへのアンチテーゼが同時進行する
ということ。

まずはそれらを紐解いてみましょう。

1.時代ごとの景気や世相と連動

sake_g_shokutonihonsyu01_02

歴史を遡るほど「食と世相」の関連は強まります。

明治維新~戦後/
政府による西洋文化・料理の導入や、戦後GHQの文化啓蒙によるアメリカフードの浸透。

1960年代~高度経済成長期/
量と均一化を重視したモノづくりを背景にインスタント食品が誕生。

1970年代/
大阪万博やメディアの影響で、食事がレジャーや趣味になり、食べものへの嗜好性が高まる。

バブル期~崩壊/
高級フレンチやワイン、イタメシが人気、バブル崩壊後には高級路線から一転、食べ放題が台頭。

2000年代以降/
リーマンショックの後に、○○均一居酒屋や、脱サラ組のバルや立ち飲み系カジュアル酒場が増加。

まさに時代や景気の影響と食のブームは連動していますね。

2.本流ブームへのアンチテーゼも同時進行

sake_g_shokutonihonsyu01_03

本流のブームが大きくなればなるほど、それに飽きてきたり、新しいものを生み出そうという気運が高まります。

高度経済成長時代の公害、健康被害の反省から、健康志向ブームが生まれたのが70年代です。2000年代には低価格路線に反するかのようにメガフードが大ヒットしました。

昨今の不透明な情報の多さと選択する難しさに疲れた消費者は、お店選びに信頼性を求める傾向があり、「食べログ」や「Retty」などのグルメサイトが活況。これもひとつのアンチテーゼと言えるでしょう。

日本酒の歴史とブームについて

sake_g_shokutonihonsyu01_04

では、一通り過去の食ブームをふりかえったところで、今度は時代ごとの日本酒業界の出来事を紐づけていきます。

明治維新~戦後/
日本酒も政府の富国強兵策と切っても切れない関係です。

政府にとっては、日本酒は税収を増やすための大きな政策のひとつ。日清・日露戦争のときには、国家歳入の約30%を酒税が占めるなど日本酒と国策はべったりの蜜月関係でした。今でこそアルコールは嗜好性で語られますが、このころは全く別物でお国の政策そのものだと言えます。

そして戦後の苦しい時代には、米不足、日本酒不足が深刻化。そのような経済状況が「三増酒(さんぞうしゅ)」を生み出します。賛否両論のあるこのお酒ですが、物資の少なさの中でがんばる戦後の日本人を潤してきたという事実と、それを生み出すことになった戦争という引き金の存在は理解しておくべきポイントでしょう。

1960年代/
高度経済成長期の大きな流れは、均質化・大量生産です。

日本酒でもこの流れにそって、大量生産の体制が大手酒造メーカー中心にできあがってきます。地方の酒造メーカーが製造した日本酒を大手メーカーが買う桶売り・桶買いもそれにともなって横行します。またインスタント食品が生み出された時代に、日本酒のカップ酒が初めて販売され、どこでも日本酒が楽しめるようになりました。

1970年代/
食がレジャー化し、嗜好性が高まる世の中は、日本酒にも大きな変革をもたらします。

それまで国からの配給制だった酒造り用の米が、1969年に政府を通さない自主流通米制度に変わりました。お米が手に入りやすくなったため、質の高い純米酒や本醸造酒を造る気運も高まります。まさに「量から質」の変化です。フルーティーで香り高いもの、キレのよい淡麗な味わいなどグルメ日本酒が生み出されるきっかけになった時代です。1974年には日本酒の醸造数量がピークに達しました。

1980年~バブル期/
グルメ志向は経済成長とともに高級化へ向かいます。

日本酒でも地酒という言葉が全国的に広まり、新潟の淡麗辛口ブームが起こりました。これは1970年代から積み重ねた新しい酒造りの成果であると同時に、海外食ブームのアンチテーゼとして起こった日本の魅力再発見ブームとも連動しています。

バブル絶頂の90年代前半には、高級志向の大吟醸ブームがやってきます。香り高い酒質は日本酒のイメージを変えるきっかけになり、女性にとっても日本酒を嗜みやすくなりました。80~90年代はアサヒスーパードライの大ヒットや、ボジョレーヌーボーの流行、チューハイの登場などアルコール業界全体が盛りあがった時代ともいえるでしょう。

2000年代~/
バブル後からリーマンショックまで「失われた20年」と呼ばれる長期経済低迷期にあって、アルコール市場も低迷します。

日本酒の流れは、バブル期の吟醸ブームで起こった行き過ぎた高級志向のアンチテーゼのためか「伝統」がひとつのブームになりました。「無濾過生原酒」「純米」「熟成」「生酛」など古くから受け継がれてきた伝統的な製法に注目が集まるようになります。

その一方で世代交代と技術革新も同時に起こり、低アルコール酒など、新たな市場開拓に向けてさまざまな日本酒が生まれています。

sake_g_shokutonihonsyu01_05

最後に、日本酒の世代を大きく3つに分類してみます。

◆日本酒第一世代(明治~戦後)
=国策と深く連動した「お国の日本酒」時代

◆日本酒第二世代(1970~2000年代)
=景気変動とともに、嗜好性が高まり多様化した「グルメ日本酒」時代

◆日本酒第三世代(2010年~)
=国内ブームも一巡し世代も交代。グローバルな価値観の中で求められる「ネオ日本酒」時代

今、私たちは第三世代「ネオ日本酒」の時代にいます。

国策という色合いが薄まり、嗜好性に合わせて多様化も進んできた日本酒に対して、人々がこれから日本酒に求める「価値」とは何なのでしょうか?

次回は、今後の食と日本酒はどんな変化が起こるかを、今の食ブームや経済状況とあわせて予想します。

(文/sake_shin)

【関連】日本酒ブームの光と影。消費量から見る日本酒業界の現状
【関連】国税庁の資料から読み解く!地方の蔵人が考察する海外での日本酒市場

日本酒の魅力を、すべての人へ - SAKETIMES

このエントリーをはてなブックマークに追加

ライター募集中!

sake_shin

「お手本になる、日本酒生活」をテーマに、 ウェブサイト・ブログにて、伝わりやすい日本酒・グルメ情報を発信。 また日本酒を媒介に自身の感性を磨くイベント【ITADAKI sake&sense】など各種イベントを開催。 第3回・4回世界唎酒師コンクールセミファイナリスト。日本酒学講師・唎酒師。

ウェブサイト