食ブームと日本酒の関係について、前回は食ブームの歴史を振り返り、日本酒業界にどんな影響があったかを考察してみました。

今回はそれを踏まえて、これからの食ブームに大きな影響を与えるであろう要素日本酒の未来の姿について予想を膨らませていきたいと思います。

時代によって変わる消費のトレンド

その前に、前提としておさえておくべきことがあります。

当たり前ですが、国内で今後数十年、数百年と日本酒の魅力を引継ぎ、残していくためには、消費の中心を作る若い世代に支持され続けなければなりません。そのためには時代に求められる価値が必要です。

たとえば、今から50年前の世の中と現代の消費トレンドはどのくらい違うでしょうか?

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少しタイムスリップしてみましょう。今から50年前は1966年です。

この年に「明星チャルメラ」や「サッポロ一番しょうゆ味」が発売され、インスタント食品ブームがはじまりました。また、ビートルズが初来日し、新三種の神器(カラーテレビ・カー・クーラー)が流行語となりました。情報を得る手段はラジオやテレビ、あとは身近なコミュニティという極めて限られている時代で、高度経済成長期に湧いていますが、現在に比べると食の多様性はさほど広がってはいません。

そのような50年前の20~30代の消費の傾向と、インターネットやスマートフォンを通して世界中の情報を簡単に手に入れられる現代の20~30代の消費の傾向が同じであるはずがありません。

物事を俯瞰せずにただ見ているだけでは、その違いの大きさになかなか気づけないものですが、こうしてみると、今の世代の人が求める日本酒も、50年前の人が求める日本酒と全く違っていても何ら不思議ではないです。

これからの「食」ブーム

では、これからの日本のフード業界では、一体どんなものが流行するのでしょうか?

率直に私の予想をいうと「内食文化の拡大」と「質への信頼性」いう本流に、逆行として「好きなもの爆食ブーム」が定期的に繰り返されると思います。

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内食文化の拡大

今後の国内消費の中心を担う20代~30代を中心にコスパ意識が顕著です。

自分にとって必要なものを吟味し、無駄を省こうとするこの考え方は、外食に求める価値そのものが変わることを意味します。SNS映えする強烈なインパクトを持った店舗や特定のイベントにはお金をかける一方、一般化された店舗にはわざわざ行かない。ネット販売で珍しい食材やお酒も手に入る今、コスパの高い家飲みやホームパーティーなど、内食にシフトしていく可能性が高くなります。

2017年から始まる軽減税率の導入で、テイクアウト商品には軽減税率が適用されますが、外食と酒類には適用されません。これらの動きから、さらに内食が広がる傾向にあり、すでにコンビニのイートインスペースの拡充や、大手飲食店もこぞって持ち帰り商品を強化しています。

質への信頼性

「質への信頼性」が担保されていることも「食」において重要視されています。

2015年にも廃棄食材の横流し事件や、過去のハンバーガーチェーンの食肉偽装問題などが有名ですが、ますます消費者の安全面への基準は厳しくなっています。

また、こだわりという点で例を挙げると、食のつくり手を特集した情報誌と彼らが収穫した食べものがセットで定期的に届く「食べる通信」や、生産者から直接購入できるファーマーズマーケットのように、食材とともに生産者のストーリーや想いの部分も見える化されてきています。

社会が成熟するにつれ、食の価値は「食欲を満たすもの」から「味覚を追求するもの」へ、そして「精神的に満たされるもの」へと変わってきているのです。

好きなもの爆食ブーム

逆行ブームの例でいうと、2015年に流行した肉厚ハンバーガーや、タコス、ローストビーフ丼など「プレミアムカジュアルフードブーム」があります。健康やコスパを気遣うのが当たり前の時代に「たまにはガッツリいきたい!」「縛られずに食をただ楽しみたい!」という気運が高まった結果だといえるでしょう。このような定期的な流れはしばらく続くと考えられます。

日本酒の未来予想

それでは、具体的にこれからの時代に求められる日本酒とはどんなものかを予想していきます。

品質保証と機能性のあるデザイン

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まずは見た目です。例えばパッケージでいえば、今後の日本酒はビンではなく、全て詰め替え用のエコボトル日本酒になるかもしれません。コレクションとしての四合瓶は家に1本あれば画になります。捨てるのも場所を取り、重くて持ち運びが面倒なガラス瓶は内食需要が増える世の中では選んでもらいにくいものとなるでしょう。

また、見た目の派手さや物質的こだわりではなく、「中身の良さと機能をわかっている」ことに価値を置く消費者が増えていますから、商品の質が担保されつつ、画期的な使いやすさが表現されているデザインやパッケージが今後好まれると思います。

かなり突飛なアイデア例をあげますが、宇宙食の包装のように長期保存に向き、持ち運びしやすいパッケージで販売される日本酒が出てくればとてもおもしろいと思います。

「質を追求する結果、行きつくのが宇宙食」というストーリー、そこにフォトジェニックな見た目が備われば、時代を反映する日本酒が生まれるかもしれません。若者は質へのこだわりから錫やガラスのマイお猪口を持ち歩き、世の中では「日本酒が宇宙食になったw」なんてSNS中心に拡散する。そんな風にカルチャーができあがっていってもおもしろいですね。

持ちこみ文化に合うテーマ性

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コスパ意識が高く、多様性のある社会に生まれた若い消費者は、決められた料理や飲料を押し付けられるのではなく、自分たちが趣向にあわせた料理や飲み物を持ち寄り、そこで生まれる新しいコミュニケーションと発見を楽しむという傾向にあります。

例えば、持ち寄り要素を取り入れた人気店、酒屋併設の日本酒バー「酒の大桝 雷門店」は店舗で買った日本酒をとなりの飲食スペースに持ち込める角打ちスタイルですし、常時100種類以上のの日本酒を飲み比べできる「KURAND SAKE MARKET」も食べ物は持ち込み自由ですね。

このように若年層に向けての今後の日本酒のポイントは、持ち寄りたくなる要素があるかどうか、集まりのテーマに沿っているかどうかといえるでしょう。焼肉のための日本酒、寿司のための日本酒など家飲みやパーティで使われる食材にピンポイントに合わせた商品がこれから増えてくるかも知れません。

生産者×生産者のハイブリッド

生産者への注目が高まっている時代ですから、人々は商品に「なぜ?」というストーリーを強く求めます。

そういう意味で、異業種の生産者同士で新しいブランドを立ち上げるなどのハイブリッドな日本酒、例えば「海を知り尽くした漁師と、米にこだわり続けた杜氏が醸す魚介専門日本酒ブランド」などといったストーリー性の強い日本酒がより高い価値を生み出すことになるかもしれません。

こうしたメディアの流れにおいて、メイン料理のそばに日本酒が寄り添う構図が増えるかが一つのターニングポイントになるでしょう。

以上、今回は未来にスポットライトをあてて日本酒の今後を想像してみました。

日本酒ブームが徐々に大きくなっていますが、これを一過性のブームに終わらせないよう全国の生産者、販売者、表現者が今必死になって取り組んでいます。これからの日本酒の動きにますます注目してみてください。

(文/sake_shin)

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