秋田最古、日本でも3番目に古い老舗蔵
室町幕府の足利義政が銀閣寺を建立した長享元年(1487年)創業という、途方もない歴史をもつ飛良泉本舗。蔵元の斉藤家は現蔵元が26代目で、もちろん秋田最古の酒蔵でもあり、国内の酒蔵でも3番目に古い歴史を誇ります。大阪の泉州(現泉佐野市)から移住して、創業当時は廻船問屋であり、酒造業は副業でした。明治初期より酒造りが本業となり、明治15年建造の蔵を今も使用しています。銘柄の由来は廻船問屋時代の屋号「和泉屋」と地名の「平沢」により「平沢の和泉屋」として自然に名づけられたようです。
手作りの山廃仕込みにこだわり
同蔵は、かたくなに山廃仕込みにこだわっています。昭和39年(1964年)、マグニチュード7・5の新潟地震が発生し、秋田県南部の仁賀保町(現にかほ市)も大きな被害を受けました。蔵も壊滅的な打撃を受け、酒造りに1年、本格的な復興には15年もかかったそうです。倒産の危機もあったようですが、ほかの蔵がアル添酒や吟醸酒の増産に走った中、同蔵は、手作りの山廃酒を地道に作り続けました。昭和43年(1968年)には飛良泉本舗に名前を改組し、丹念な山廃づくりの個性的な酒が徐々に市場に浸透し、今や秋田の山廃といえば飛良泉という、銘酒の地位を築き上げることになりました。酒蔵の仕込み水は鳥海山系の伏流水でミネラル分が豊富な硬水を使用。協会酵母では乳酸発酵には向かないため、自社で分離した7号系酵母を使用しています。
蔵の代表酒はお燗で抜群の旨み
飛良泉 山廃純米酒は蔵の代表的な銘柄で、美山錦を60%まで精米しています。口に含むと乳酸発酵由来の酸味と、ふくよかな米の旨みを感じます。この強い酸味が飛良泉の特徴だと思いますが、尖ったところはなく丸みのある味わい。ですが、かつての飛良泉ほどの強烈な酸味は感じられません。やはり現代に合わせた味わいになっていると思います。お燗にすると、予想通り化けます。眠っていた旨みや、複雑味が出てきてふくらみが増して大変美味で作りの良さが伝わってきます。ぬる燗から熱燗(50度)の温度帯でお勧めです。合わせるおつまみも、淡白な和食より、洋食や肉料理、ブルーチーズなどが合うと思います。魚料理なら煮つけや脂分の多い刺身がおすすめ。秋田名産のミルキーで野趣あふれる岩牡蠣も相性が良いでしょう。
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