台湾在住のSAKETIMESライター、謝ひかりです。

日本酒好きならいまや知らぬ者とてない「獺祭(だっさい)」。フランスのグラン・メゾンで「東洋のロマネ・コンティ」と紹介されているとかいないとか・・・。

何を隠そう、ワタクシの地元・山口県のお酒です(ドヤッ)。10年ぐらい前までは、地元だけで流通していた生原酒を年2度いただく楽しみ(ドヤッ)も、今はむかし。何やら嬉しいような寂しいような、複雑な心境です。

でもね、声を大にしていいたい!獺祭だけじゃないんです!帰省にともない、今回は山口のおいしい日本酒「ドヤッ」尽くしでご紹介いたします。

近年ワタクシのお気に入りは、萩市・澄川酒造場の「東洋美人」。絶妙な甘み・コクにフルーティな香りで人気のこの澄川酒造場さん、2013年の水害でものすごい被害を受けたあと大復活を遂げられた酒蔵さんです。当時は中田英寿さんもボランティアで復旧に駆けつけられた様子がテレビに出ていたとか(ドヤッ)。

もっと「ドヤッ」顔がしたいので、山口のお酒についてさらに知るべく山口市内の「ムラタ酒店」に伺います。五重の塔(瑠璃光寺)から目と鼻のさき、かつては「西の京」と評された大内文化の面影が色濃くのこるエリアです。

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なんておしゃれな酒屋・・・。

都内ならともかく、地方ローカルの「酒屋」というイメージをくつがえす佇まい。木の香りに「清浄感」を感じる心地よい空間。冷蔵リーチインと丸太をスライスした贅沢な一枚板の棚に、焼酎・日本酒・ワインへの情熱的なセレクトが並んでいます。

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其の上にまします「杉玉」の後ろには、ストリートな雰囲気の「SAKE」というポップ。維新で革新的なイメージとは裏腹にかな~り保守的なこの土地に、こんな酒屋があったとは。

それもそのはず。ムラタ酒店の村田社長は、多摩美術大学のご出身。東京でビジュアル関係のお仕事に就いたのち山口に戻りお祖母さまの酒屋を継がれたのが、 36年前。 20年ほど前に改装して2階のスペースで定期的にジャズ・ライブを開催したり(知る人ぞ知る『渋さ知らず』のライブもあったとか!)それで500万円ぐらい赤字を作ってやめたり(笑)と紆余曲折を経て現在にいたる、筋金いりのステキスト。

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ちょっと横尾忠則っぽい風貌と「がっはは」と大らかな笑い声を聞いていると、このひとの選ぶお酒はさぞかし旨かろう、と思ってしまいます。

ということで、村田社長に聞いてみた!山口のうまいお酒5選をご紹介します。(解説は謝によります。)

 


 

1. 上酒屋(かみさかや)

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なんとコレ、村田社長がプロデュース&ラベルデザインされたというシリーズです。「長陽福娘」という銘柄を造る萩(現在大河ドラマの舞台)の老舗酒蔵・岩崎酒造さんで造られています。山口県産の米100%で作られた、山口人による山口のお酒。プロデュース名は其の名も「山口酒吞童子(やまぐちしゅてんどうじ)」!!!

2. 貴(永山本家酒造場)

なんと酒蔵が米から造ってしまっているというコダワリ。いまや山口を代表するお酒のひとつです。宇部の酒蔵。

3. 中島屋(中島屋酒造場)

現在11代目を数えるという、周南の老舗の酒蔵。

4. 雁木(八百新酒造)

ワタクシ10数年ほど前、京都の酒処「たかはし」さんで「飛露喜」「早瀬浦」なんかと一緒に出会った銘柄で旨いお酒だなあと思っていたのですが、そのときは山口のお酒だなんて知りませんでした。「獺祭」とおなじく、岩国のお酒です。

5. 五橋(酒井酒造)

山口育ちには「日本酒=五橋」というぐらいにおなじみのこれも岩国の地酒。村田社長曰く『代替わりして、前にも増してフレッシュで旨い酒になったんだよ』とのことでした。この「代替わり」というところすごく重要です。

 


 

「獺祭」の旭酒造も、潰れかけていた蔵を継いだ若き桜井社長が大きく方向転換して建て直し、今やもっとも勢いのある酒蔵に成長したといいます。「ムラタ酒店」も現在は社長ご夫婦・息子さんご夫婦と2世代で運営。

息子さんは金沢の「福光屋」という酒蔵で修行し日本酒造りの専門家の目で商品をセレクト(取材時も息子さんご夫婦が新たな旨いお酒をもとめてご出張中)。

冒頭で紹介した「東洋美人」澄川酒造場の水害のときも若い蔵元仲間が全国から集結して再起を助けたというし、朝の連続ドラマじゃないが「旨い日本酒をつくる/売るんじゃ!」という「若旦那」集団のキラキラした心意気。

ここに近年の醸造技術の大発展が加わり現在の「日本酒新時代」が訪れているといっても過言ではないと思います。これはエリーちゃんばりに「ガンバテ!」と応援したくなるというものですね。

最後に「じゃあ、今日購入して帰りたいのですが一本お勧めを」というところで、村田社長が選んでくれたのがコレ(っていうか5選に入ってないんですけど!笑)

 

【番外編】 村田社長お勧め! 「長門峡生原酒」

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これ、帰ってからさっそくいただきましたけどほんとうまかったです。精米60%だけど、梨やリンゴのような吟醸香もして後口もくどくない、でもコクがあって止まらなくなっちゃうお酒。

それもそのはず、酒蔵の「岡崎酒造」さんは、全国新酒鑑評会において3年連続で金賞を受賞したこともある実力派の蔵なのです。

取材帰りに「ムラタ酒店」から程ちかいベジ・カフェ「ToyToy」さんへ。ひと手間かけられたおいしい野菜のおかずが並ぶプレートランチはおすすめ。

たとえば午前中に「雪舟庭」でぼんやりし、ムラタ酒店に寄ってから「ToyToy」のマクロビランチで胃腸を整え、YCAMで映画を観てから湯田温泉「山水園」外湯にゆっくりつかった1日のおわりに、ムラタ酒店お薦めのお酒で家吞み。

山口で過ごす「ワタクシ的最高のコース」、といえるかもしれません。

【参考】
ムラタ酒店
ベジタブル喫茶ToyToy
YCAMシネマ
湯田温泉「山水園」/翠山の湯

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