戦国時代から続く名家の酒蔵
神奈川の山間地にある大矢孝酒造は文政13年(1830年)に酒造業を始めたという歴史のある蔵です。大矢家の歴史は古く、現当主の大矢俊介さんで20代目というから驚きです。初代は戦国時代、北条氏の騎馬隊長だったとのことですから、由緒ある名家といっていいでしょう。
燗上がりする力強い純米酒を目指して
大矢さんが平成12年に酒蔵を継いでから、近年はグングン酒質を上げ、熟成してよりおいしくなる純米酒、それも燗上がりするしっかりとした味わいのお酒を醸すようになり、全国の日本酒ファンに注目を集めるようになりました。
昇龍蓬莱は、現酒蔵が全国に売り出すために生み出したブランド。地元でお馴染みの伝統の銘柄は「残草蓬莱」です。大矢さんが蔵を継ぐ前までは、普通酒を中心に作っていた典型的な地元の小さな酒蔵だったようです。しかし、いち早く全量純米蔵となった「神亀」(埼玉県・神亀酒造)を飲む機会があり衝撃を受け、現在のような力強い米の旨みを生かした酒造りに力を入れるようになりました。
力強くてスタイリッシュ
この生酛純米は徳島県産の山田錦を7割の低精白で米の旨みを引き出しています。おだやかな柑橘系の香りですが、呑んでみると酸とともに、意外と辛みを感じスパッと切れていきます。ぬる燗にすると、生酛らしい骨太の酸と複雑味が出てきますが、非常に落ち着いたやさしい味わいに。熱燗では酸の強さが出て口中の余韻を洗い流してくれます。
25BYだけに、まだまだ熟成して良くなりそうです。神奈川酒はスタイリッシュな辛口酒が多いという個人的な印象がありますが、このお酒は生酛の力強さの中に、洗練さも融合されているように感じます。呑み易いので、生酛が苦手という方にも試して頂きたい一品です。
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