硬水を生かした切れ味抜群の銘酒
明治31年(1898年)創業の水戸部酒造は、奥羽山系の伏流水を仕込み水に使用しています。この天然水は硬度120。ミネラル分を多く含む、日本酒蔵の中では有数の硬水です。硬水の特徴を生かし、「名刀・正宗の切れ味」と称されるようなシャープで硬質な酒質が特徴です。
また、美酒を醸すために、蔵元自ら米作りにかかわり、地元の酒米を使用する「ほぼドメーヌ化」を実現。2004年からは山田錦の栽培も行っています。2010年からは全量純米造りの蔵となり、2015年には100年以上使用してきた蔵を全面改装するなど、美酒造りの探求に余念がありません。また、県内の4蔵元で結成したユニット「山川光男」のメンバーでもあり、話題を提供しています。
赤ワインの醸造技術を転用
今回の「まろら」は平成27醸造年度(27BY)でふた造り目。赤ワイン醸造で使用する技術「マロラクティック醗酵」という技術を日本酒に取り入れた一品です。この技術を略して「まろら」と名付けられています。乳酸菌の働きにより、お酒に含まれるリンゴ酸が乳酸に変化し、やさしく柔らかい味わいを生み出すのだとか。
山形正宗のスタンダードな味わいは、リンゴ酸系統のきれいでスッキリしたものと捉えられることが多いですが、「まろら」でこれまでと違うやわらかい味わいを目指し、2014年に試験醸造を行いました。
香りはとても穏やかで、口に含むと独特の酸の出方が印象的です。乳酸っぽさも感じられますが、同時にリンゴ酸系の爽やかさも同居していると感じます。甘味と酸味が絶妙に混ざってワインらしさもあり、いろいろな味わいが一体となっていますが、やはり山形正宗らしい爽やかさ・透明感を軸に、柔らかさ・やさしさが加わったと言えるでしょうか。
冷やでも燗でも洋食も和食いける万能酒
アルコール度数14度ということもあり、非常に呑みやすく、日本酒初心者や女性、そしてワイン好きなどオールマイティーにオススメできます。ロックも試しましたが、氷で薄まっても味が崩れず、酸が表に出てきて夏にも合います。
また、お燗にしても、ふくらみが出て乳酸系のコクが出て、落ち着きを生みます。これは「冷旨酸=冷やして美味しい酸」のリンゴ酸、「温旨酸=温めて美味しい酸」の乳酸の両要素を兼ね備えているからでしょうか。和洋折衷、さっぱりした肉料理、生ハムや冷しゃぶサラダや、カルパッチョ、マリネ、和食ならさっぱした白身の脂っこい赤身などお刺身に幅広く合わせられそうです。