こんにちは、SAKETIMES編集部です。
日本酒の歴史は永く、諸説ありますが今の造りは平安時代から続いているとか。
そんな歴史の永い日本酒業界で、なんと室町時代から続いている酒屋さんがあります。
それが有限会社油忠(あぶちゅう)。その歴史もさることながら、油忠は日本酒の定期購入サービス「SAKELIFE」というネット通販事業で
月額会員をこれまで延べ1000人以上獲得し、テレビ・新聞・ネットで注目を浴びています。
今回は有限会社油忠の代表取締役、高橋正典さんにお話を伺いました。
あなた×お酒をもっと楽しく!が自分のテーマ
油忠代表高橋正典さん(以下高橋さん):
「油忠は千葉県香取市の酒屋です。創業は室町時代に端を発し、僕の代で25代目となります。酒屋なのでビールや焼酎も扱っていますが、先祖代々、日本酒へのこだわりが強く、父親も自分も日本酒を愛飲しています。現在は酒屋業務を行いながら、ネット通販事業「SAKELIFE」の運営も行っています。SAKELIFEは月額会員を募り、会員様にお酒・酒器や肴・お酒の情報満載のメルマガをお届けする定期購入サービスです。特徴的なことは、これまでのネット通販にあったような一方通行型の販売ではなく、毎月のお客様のお酒への感想や意見を取り入れながら、次月に配送するお酒を変えていく、双方向でのコミュニケーションを行いながら好みのお酒にパーソナライズしていく点です。店舗運営では、地元の飲食店への酒類の提供や、日本酒に合う料理の提案など地元密着型の経営を行っています。目指していることは、『あなた×お酒をもっと楽しく!』です。お酒は普通に飲んでいても楽しいものですが、それを今よりもっと楽しめるような手伝いをしたい、ということです。」
人見知りの学生時代、家業を継ぐことへの葛藤もあった
「もともとは人見知りだったんです。人の目を見て話すこともできないくらい。自分を出すのが怖くて、素を出すと人に嫌われてしまうんじゃないかとビクビクしていました。大学のころは普通に就職して普通にサラリーマンをやって普通に生きて行くんだろうと思っていました。けど、ある日実家の都合で急遽、兄である長男から次男の僕が家業を継ぐことになったんです。酒屋業は専門知識が必要ですし、接客がメインの仕事です。自分にそれが務まるかと不安がありました。ただ、周りに相談し、考えていくうちに『家業を引き継ぐことができるのは世界で自分しかいないんだ』と気づきました。使命感というか、これが自分のやるべきことなんだと、自分の人生を実感した瞬間でした。ただ、酒屋業を引き継ぎ発展させていくには日本酒に詳しいだけでは難しい部分があります。なので父親に『二年間時間が欲しい』とお願いしました。この二年間の間に、経営の勉強はもちろん、同年代で起業しているIT界隈のスタートアップの人と出会ったり、広く社会を見渡すことができました。これは今でも自分の中で大きな財産となっています。」
SAKELIFEで自分のやりたいことを確信できた
「家業を継いで数ヶ月経つころ、SAKETIMESの代表である生駒くんから連絡をもらいました。『日本酒の定期購入サービスをやらないか?』という誘いです。家業を継いでから、日本酒の魅力を広げるためにはネットの力は必要不可欠だということを感じていたものの、安売り型・一方通行型の従来のネット販売には魅力を感じていませんでした。定期購入はお客様との継続的な付き合いが前提のサービスなので「これだ!」と思いました。二つ返事で創業を決め、クラウドファンディングで資金を調達した上で2012年の4月にサービスをリリースしました。情報過多でどれを選べばよいのかわからないというお客様の抱える課題を解決できるSAKELIFEは大きな反響を呼び、継続率90%以上、全国44都道府県にお客様を抱えるサービスに成長しました。SAKELIFEの運営を行うなかで、自分のやりたいことは『お客様ひとりひとりの人生に寄り添えるようなお酒を提供したい』ということなんだと感じました。創業から3年が経ちますが、3年間お付き合いいただいてるお客様もいます。」
家業と事業の乖離に悩み続けた時期もあった
「サービス拡大は心から嬉しい反面、成長に伴う悩みも増えていきました。油忠は地元に貢献することが目的の酒屋です。地域の繋がりを大切にし、対面の接客でコミュニケーションを取りながらお酒を販売していきます。地元への貢献という意味では、やるべきことはいくらでもあります。一方でSAKELIFEは全国にお客様を抱え、全国規模にスケールをしていく事業です。全国へ拡大していく事業と、地域に密着し、地元へ貢献する家業とでは、規模の問題ではなく、性質に差があります。当初はこれを「どう統一していくか」と悩んでいました。幸い、自分は人には恵まれており、いつでもサポートしてくれる仲間が側にいました。周りの仲間にも相談をして、家業は家業、SAKELIFEはSAKELIFE。それぞれを成長させていくべきだと決めました。SAKELIFEについては業界のためにも酒屋の1サービスではなく、蔵、酒屋、お客様をつなぐサービスとして他社との連携を図っていこうと考えています。人を巻き込んでいく形でSAKELIFEをより成長させよう、ということです。今後の大きな動きにはぜひ期待していて欲しいですね。」
油忠の25代目として、自分にしか歩けない人生を歩みたい
「油忠としては、これからもっともっと地元のお客様を大切にしていきたいと思っています。最近では常連のお客様の情報をクラウド上で管理し、お客様の好みのお酒や、購入頻度や過去にどんなやりとりがあったかを店舗全体で管理・把握できる運用にしました。そのおかげで、いつお客様がきても、その方にベストマッチな提案ができるようになりますし、経営の観点から言っても効率が上がりました。売上自体は僕が継いだ時に比べて3~4倍に伸びています。これからも、人と人との繋がりを大切にしながら、『あなた×お酒をもっと楽しく!』を追求していきたいですね。」