少し贅沢な"ごはんのお供"であり、贈答品・お土産としても大変人気が高い「ちりめん山椒」。同時に日本酒にもよく合う逸品として知られています。
今回は、そんな「ちりめん山椒」と日本酒が合う理由をわかりやすく解説しながら、日本酒がおいしくなるレシピを紹介します。
「相性」で重要な考え方「五味の調和」
まずは相性を考える上で、五味の調和という考え方をご紹介します。五味とは、甘味、辛味、苦味、酸味、塩味の五つの味の要素を表すことば。
料理の世界、特に和食の世界ではこの「五味」の調和を重視することが多いです。
各要素を含む調味料や食材、そしてお酒などを合わせることで、単独で食べるよりも味覚のバランスを取ることができます。では、この五味と日本酒の持つ味覚成分を考えましょう。
日本酒からは甘味、辛味、苦味、酸味に関してはその成分を感じることができます。しかし、「塩味」に関しては日本酒は成分的に持ちえません。そうすると、この「塩味」をおぎなってくれる存在は、五味のバランスが取れ、「日本酒と相性が良い」と考えられます。
ちりめん山椒が合うのは「補完」と「同調」
ちりめん山椒は、醤油の持つ旨みとともに実山椒の心地よい苦味と爽やかな香り、そして何より日本酒に足りない「塩味」を持ち合わせています。そのため、日本酒に足りない塩味を「補完」しながら、旨みでは「同調・増幅」するという、何重にもかけて日本酒と相性の良い成分構造になっています。
香りでは、実山椒の持つハーブ特有の香りが、日本酒の爽やかな香りと似通っていて「同調」しているといえるでしょう。
「日本酒との相性がよい」というのにはしっかりとした理由が存在しているのですね。
日本酒に合う「理にかなった」ちりめん山椒おつまみ
その理にかなった「ちりめん山椒を使った簡単なおつまみ」を紹介します。
「簡単につくれて相性が抜群」「手軽にできるもの」今回はこの2点で考えてみました。
水菜と新玉ねぎとクリームチーズのちりめん山椒サラダ
山椒とチーズの相性が良いことは意外に知られていないかもしれませんが、日本酒とチーズの相性は今や定番となりつつもあります。
旬を迎える甘い新玉ねぎ、そして実山椒の爽やかさを考えると、チーズは同じくフレッシュな要素の強いクリームチーズ。塩気とミルキーな甘味、そして発酵食品の持つ旨み成分がよい組み合わせ。爽やかでお酒もすすむ、前菜の1品です。
合わせる日本酒のおすすめは低アルコールのスパークリング生酒。
フレッシュさ、爽やかな香りと、ほんのり広がる旨みなど、非常に相性がいいおすすめの食べ合わせです。
ちりめん山椒塩で食べる。ほたて貝柱のあぶり焼き
もう1品、おすすめの簡単料理をご紹介します。
まずちりめん山椒を細かく砕いて塩昆布と合えた特製の山椒塩を軽く炙ったほたて貝にさっと降ります。
メインとなるほたて貝はミルキーな甘味とともに、貝独自のコハク酸という有機酸を含むため旨み成分が豊富。旨みの同調とともにちりめん山椒の持つ塩気と甘味が絡んで「あまじょっぱい」という日本人好みな組み合わせを楽しむことができます。
お米の香りとトロッとした甘さを感じるにごり純米酒などを合わせるとさらに効果的です。
普段とは違う「ちりめん山椒」の食べ方も試してみてはいかがでしょうか。
相性の考え方を知れば、自分でバリエーションを増やせる
お酒と料理の相性を良くすることは、やみくもにやっても難しいものでが、紹介されているレシピ通りに作れば、美味しいおつまみは作れます。
今回ご紹介した「五味の調和」のお話や、足りないものを補う、同じものを重ねるという「相性が良くなる理由」のは、実はものすごく汎用性が高いツールです。これを遣えば、「冷蔵庫にあるもので日本酒に合うおつまみをつくりたい」という希望にも答えることが出来るのでぜひ使ってみましょう。
ちりめん山椒専門 京都下鴨「すぐり」
最後に、「日本酒にあうお気に入りのちりめん山椒」もご紹介させていただきます。
京都下鴨にある、専門店「すぐり」のちりめん山椒。こちらは、大々的に露出はされていないお店なのですが、許可を頂き少しだけご紹介させていただきます。
生粋の京料理人であった先代が「本当に美味しいものは人づてで伝わる」という信念のもと、下鴨神社の近く、閑静な住宅街の中で現在は2代目の手で作られています。もちろんそのような想いからお店も構えていないので、店頭販売などもありません。電話で注文すると、そこからひとつづつ丁寧に作られ発送して頂ける「作り手の姿が目に浮かぶ販売スタイル」。
無添加でしっとりと水分を含んだ素朴な味わいは日本酒との相性抜群。体にも優しくて、いつもよりちょっと贅沢で幸せな気分にさせてくれる、贈り物にもおすすめの京都では知る人ぞ知る「ちりめん山椒」です。
この記事を読んで、皆さまの毎日の食卓が、もっと楽しく、ウキウキするものになれば幸いです。
◎ 京都下鴨 「すぐり」
住所:〒606-0802 京都市左京区下鴨宮崎町 82
TEL:075-711-5876