EXILEを筆頭に、多くのアーティストや俳優、アスリートなどが所属する「LDH JAPAN」。事業内容はアーティストのマネージメントや企画製作のみにとどまらず、さまざまなグループ会社が独自に展開されています。

そのなかのひとつで、飲食関連の事業を行う「LDH kitchen」が進める「LDH kitchen WALKABOUT 47. JAPAN」は、全国各地の優れた食材やその生産者、日本酒の造り手をはじめとする職人がコラボレーションして、地域の魅力を多くの人たちに知ってもらおうというプロジェクトです。

きっかけは、EXILEのリーダーであるHIROさんが、長野県知事の阿部守一さんを表敬訪問したこと。阿部知事は地域貢献活動を始めようとしていた「LDH kitchen」の話を聞き、「ぜひ、長野県の特産品をテーマにしてほしい」と要請したのだといいます。

その話は、大の日本酒好きであり、全国各地の酒蔵に足を運んでいるEXILE / EXILE THE SECONDのメンバー・橘ケンチさんのもとに届きました。そこで、橘さんが「長野の食材と地酒を組み合わせたイベントはどうか」と提案したことから、本プロジェクトはスタートしたのです。

イベント第1弾では、井賀屋酒造場の「岩清水」や「GOWARINGO」「NIWARINGO」、第2弾では伴野酒造「澤乃花」「Beau Michelle」が登場しました。今回は「十六代九郎右衛門」を醸す、長野県・湯川酒造店とコラボした第3弾の様子をお伝えします。

一度飲んだら、忘れられない酒

長野県木曽郡にある湯川酒造店は、標高936メートルに位置する『日本で最も星に近い酒蔵』です。創業は1650年と長い歴史があり、現在の社長・湯川尚子さんで16代目になります。

造っている銘柄は「木曽路」と「十六代九郎右衛門」。「木曽路」は日常に寄り添う酒として、地元の人たちに愛され、木曽へ観光に来たお客さんに楽しんでもらう、そんな味わいを思い描きながら仕込まれています。

一方、「十六代九郎右衛門」では、蔵元と杜氏の感性をもっとも大事にしています。尚子さんは、前蔵元から「十五代九郎右衛門」を引き継いだ後、試行錯誤しながら自分の味を表現してきました。結婚を機に「十六代九郎右衛門」と名を変え、現在に至っています。

湯川酒造が醸す「十六代九郎右衛門」

EXILEの橘ケンチさんが飛行機のなかで飲んだ「十六代九郎右衛門」の美味しさを忘れられなかったことから、今回のコラボが実現したのだそう。その後、仕込み真っ最中の2月に、酒蔵を訪れました。気遣いにあふれた態度と質疑の熱心さに湯川さんも納得し、今回のコラボが実現したのだとか。

長野県産の食材と見事なペアリング

前回と同様、参加者のほとんどが女性。和やかな雰囲気でイベントがスタートしました。まずは、先付けとともに提供された「十六代九郎右衛門 低アルコール 原酒 生」で乾杯。

「十六代九郎右衛門 低アルコール 原酒 生」で乾杯

まろやかな口当たりと、しっかりとした酸味。原酒のため、ボリュームのある味わいです。

「フルーツトマト コンソメ煮」と「十六代九郎右衛門 低アルコール 原酒 生」

こちらは「フルーツトマト コンソメ煮」。酸味の強いトマトに、信州ワインを使ったソースが濃厚さを加えている一品です。日本酒と料理の酸味に注目したマリアージュですね。

「信州プレミアム牛一口ステーキ 信州サーモンの昆布締め 市田柿とクリームチーズ」の3品盛り合わせ

前菜は「信州プレミアム牛一口ステーキ 信州サーモンの昆布締め 市田柿とクリームチーズ」の3品盛り合わせ。

厳しい規定をクリアして認定される「信州プレミアム牛」は、肉質が柔らかく旨味も充分。炙った信州サーモンは香ばしく、クセのない味わいです。柿と乳製品の組み合わせも抜群でした。

合わせるのは「木曽路 生酛 純米大吟醸」。すっきりとした香りとアルコールのもつボリューム感、若干の苦味と旨味の余韻が特徴的です。生酛造りの酒と動物性たんぱく質がもつ旨味の組み合わせに、みなさん満足している様子でした。

「虹鱒の燻製 もろこし真丈 松茸のフライ マー坊茄子」

続いては、秋らしく盛り付けられた「虹鱒の燻製 もろこし真丈 松茸のフライ マー坊茄子」です。

酒は冷やされた「十六代九郎右衛門 山廃特別純米 赤磐雄町」と「十六代九郎右衛門 山廃純米 美山錦」の燗酒。

「十六代九郎右衛門 山廃特別純米 赤磐雄町」の冷酒

湯川酒造店は、さまざまな種類の米を使って日本酒を造っています。それぞれの性質を活かした方法で醸しているため、このような飲み比べにはぴったりです。

「黄金軍鶏のロースト」

肉料理は「黄金軍鶏のロースト」。信州の地鶏・黄金軍鶏は歯ごたえのある肉質で旨味たっぷりです。舞茸の薫り高いソースがポイントで、添えられた信州名産のくらかけ豆もアクセントになっています。

こちらにも、2種類の酒がペアリングされました。「十六代九郎右衛門 生酛 特別純米 金紋錦」と「十六代九郎右衛門 生酛 愛山」です。

「愛山という米は初めて知ったけど、とても美味しい!」など、参加者も会話を楽しんでいる様子。金紋錦のほうは、ふくよかさと芳醇さの印象的な仕上がりでした。

「塩イカのかき揚げ せいろそば」

食事は「塩イカのかき揚げ せいろそば」。海と隣接していない長野県では、新鮮なイカが手に入らなかった遠い昔、塩漬けにしたイカを保存食として食べていたのだとか。今回は、それをかき揚げ。そのままで充分、酒の肴になります。

合わせるのは「木曽路 三割麹 純米酒」。通常よりも多くの麹を使用して醸した1本です。すっきりとした甘味、苦味とコク、そして、麹由来の複雑な風味も残っています。

「桃のカプレーゼ バニラアイス ナガノパープル」

デザートは「桃のカプレーゼ バニラアイス ナガノパープル」

カプレーゼからはバジルの香りがふわりと立ち上り、アイスにはブルーベリーのソースが。すっきりとした甘さのデザートです。締めの酒は「木曽路 特別純米 大寒仕込 ひやおろし」。味わい深くボリュームのあるフィニッシュです。

と、ここで終わりではなく、最後の締めとして、橘ケンチさんの考案したカクテルが提供されました。

ナガノパープルの良さを引き出した日本酒カクテル

信州名産のぶどう・ナガノパープルと「十六代九郎右衛門 生酛 愛山」でつくった、ナガノパープルの良さを引き出した日本酒カクテルです。とても飲みやすく、デザートの後にふさわしい1杯でした。

「生酛造りに力を入れていきたい」

今回のイベントをとても楽しみにしていたという、蔵元・湯川尚子さん。

「お客さんが若い女性ばかり。これまでの試飲会やイベントとは雰囲気がまったく違いました。自分の力だけでは、こうした方々へのアプローチは難しかったので、さまざまなお客さんに飲んでもらえてうれしいです」

杜氏の湯川慎一さん(左)と蔵元の湯川尚子さん(右)

杜氏の湯川慎一さん(左)と蔵元の湯川尚子さん(右)

今後は、生酛系の造りを増やしていきたいと意欲を見せていました。

昨年度(28BY)から生酛造りを始めた湯川酒造店。「生酛で造ることで、味の寿命が延びるんです」とのことです。挑戦したいことがたくさんあるようで、これからの酒が楽しみでなりません。

「十六代九郎右衛門 山廃純米 美山錦」の燗酒

参加者のみなさんも「イベントに来て世界が変わった!」「日本酒の原料になる米に、こんなに種類があるとは知りませんでした」など、多くの学びがあったようです。

リピートで参加しているお客さんのなかには、イベントで知った銘柄を別の店で注文したり、自分で購入したりするようになったという方もいました。若い女性に日本酒が広まっていくのは、うれしいことですね。

次回の「LDH kitchen WALKABOUT 47. JAPAN」は11月26日(月)、今回と同じ中目黒の錦織にて、「龍勢」を醸す広島県・藤井酒造との会を予定しています。楽しみに待ちましょう。

(文/まゆみ)

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