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しまなみ街道・尾道へ!「こめどこ食堂」で身も心も喜ぶ日本酒体験に出会う

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広島県南部、瀬戸内海に面する港町「尾道」。

古くから物流の集散地として栄え、その情緒あふれる街並みから、多くの文化人に親しまれてきました。現在でも、愛媛県と広島県をむすぶ「しまなみ海道」起点の街として、多くの人が訪れます。

今回訪れたのは、そんな尾道にあって、海辺の風景を眺めながら日本酒を楽しめる素敵なお店です。

尾道に旅したら、「こめどこ食堂」へ

尾道駅から歩いてすぐ、尾道水道を目の前にした白い建物の2階にあるのが「こめどこ食堂」です。

店名の「こめどこ」は、"米"と"ぬか床"をイメージしたもの。「食堂」というネーミングの親しみやすさもあり、旅の途中に、ひとりでふらりと立ち寄る人も多いのだとか。

店内の大きな窓からは、尾道水道の群青色と対岸の向島にある緑色の、彩色豊かな自然を眺めることができ、夜は造船所の明かりが海を幻想的に照らします。

各テーブルにはスタッフの方が摘んできたという野の花が飾られています。

こめどこ食堂は、昼は瀬戸内のおばんざいを中心とした1,300円の定食を提供するお食事処。"発酵"がテーマのメニューは、選び抜いたこだわりの調味料で味付けされています。

一方で、夜はガラリと様子を変え、お酒を楽しむ場になります。

夜のカウンターでは料理や好みに合ったお酒をおすすめしてくれたり、料理を通常の半分の量と値段にして提供してくれたりと、ひとり飲みにも行き届いた気遣いが嬉しいお店に。ひとりで訪れる女性も少なくないそう。

そんな優しさ溢れるこめどこ食堂が、大事にしていることはどのような事なのでしょうか。店長の行里(ゆきさと)さんにお話を伺ってみました。

日本酒をストーリーで味わう

行里さんは、日本酒をきっかけにしてお客さんとコミュニケーションをとることを大切にしているといいます。

「どんな土地で育ったお酒か、どんな人がどんな思いで関わったのか。相性の良い肴は何か。普段からお酒に親しんでいる人も、少し距離がある人も、それぞれが楽しめる時間になるよう心がけています」

最初の一杯としてすすめることが多いのは広島県呉市の宝剣酒造が醸す「宝剣 純米超辛口」。スッと入るようなシャープなお酒です。

「広島のお水ってやわらかくて、甘みのある味わいのお酒が多いんですけど、宝剣酒造の造られるお酒はそれよりもちょっとシャープな感じで、すっきりと飲めるものになっています。普段飲まない方とか、日本酒久しぶりなんですっていう方には、特におすすめしていますね。

呉も尾道と同じように海に面した町なので、宝剣酒造の杜氏さんはコンセプトとして、白身の魚に合うように造ってらっしゃるんです。まず最初に刺身をいただいたりするとき、とてもよく合いますよ」

もうひとつのおすすめは、広島県神石高原町(じんせきこうげんちょう)の三輪酒造が醸す「神雷 黒ラベル 純米吟醸」です。神石高原町の「神」の字にちなんでつけた銘柄名で、風神と雷神のイラストがラベルになっている「神雷 純米酒」もあります。

「蔵が300周年の年に、うちの2周年とコラボして、神雷の会というイベントを開催しました。三輪酒造さんは300周年記念として、神石高原町のお米を使った日本酒を造ったそうです。

日本酒って歴史とか伝統をすごく大切にするけど、同じようにその土地・地元も大事にしてると感じます。酒米にしても、他の土地から仕入れることはできるけど、地元のものを使ってお酒を造ることにこだわっている酒蔵に共感しますね」

その土地に育まれたお酒を、その土地で味わうことができるのは、旅の醍醐味。魅力的な広島のお酒との出会いの場がここにはあります。

もちろん、広島以外の地域の美味しいお酒やめずらしいお酒もたくさん用意してありますので、気になる方はぜひお試しくださいとのこと。

お酒の話を始めると止まらなくなる、とご自身でもおっしゃる行里さんですが、大好きなものを語る人の話はいつでも面白い。

きっとこの店のカウンターに座ったならば、お酒との付き合いが深い人も、これから深めていきたい人も、気負うことなく自由にお酒談義を楽しむことができるのでしょう。そんな雰囲気を感じさせてくれるひとときでした。

行里さん以外のスタッフの方々も、気さくに話しかけてくださいます。お酒の話、料理の話、尾道の話、ここでしか聞けない話に耳を傾けてみてください。

次に、豊富なお酒と一緒に楽しむ肴について伺いました。

素材にこだわる瀬戸内おばんざい

こめどこ食堂では、無農薬野菜や発酵食品を使ったおばんざい4種を、お通しで味わうことができます。

こちらはいりこ(煮干し)をミキサーで砕いてガーリックオイル、ごま、醤油などと合えたペースト。脇役になりがちないりこですが、こんなに香り高くて滋味深いのかと驚いた一品。

梅酢で漬け込んだ山芋も、シャクシャクした食感と爽やかな酸味が、食欲をそそります。

クリームチーズを、白味噌にみりんを加えたものに漬け込んだ一品。こだわりの調味料が威力を発揮していていて、発酵の力を感じる奥深い味わいです。もちろん日本酒にもぴったりで、思わずおかわりしたくなったほど。

豆乳を練りこんだこんにゃくに自家製の酢味噌を添えたもの。優しい口当たりにほっとします。

味噌と山椒で炊いたごぼうは、こめどこ食堂の人気メニュー。ごぼうを主役級にしてみたかったという行里さんの思いから生まれた一品で、ランチでも楽しむことができます。

これは「あずま」といって、シャリの代わりにおからを握り、酢で締めたコノシロ(コハダが成長したもの)と一緒にいただくもの。瀬戸内海沿岸で食べられていた郷土料理です。

他にも、自家製らっきょう、世羅牛のローストビーフや、土鍋の炊き込みごはんなどおすすめのメニューが目白押し!特に土鍋で炊いた白米を藻塩で握ったおにぎりは、忘れられなくなるほど絶品ですので、こめどこ食堂を訪れる際には要チェック。

こめどこ食堂というだけあって、お米には特にこだわりがあるそう。所属する飲食店グループで世話をしている田んぼは、毎年スタッフ全員で田植えや稲刈りなどをおこなっているのだとか。

こめどこ食堂でしか食べられないメニューの数々。提供されるお酒や料理ひとつひとつに、この「こめどこ食堂」というお店で提供される意味や思いが込められているのが印象的でした。

ここにしかない出会いを楽しんで

「僕は尾道に来た人に、どこ行ったらいいですか?って聞かれたら『自分で探してください』って言うんです。ランドマークみたいなものはないけれど、好きに歩いてもらって、なんなら時計も外して。商店街にはいろんなお店があるし、路地を入ればまた小さなお店もたくさんあります。

でも、そこがいつも開いてるかっていうと、そうじゃない。出会いなんですよね。それと一緒で、料理もうちにしかない料理に出会ってもらえたらと思っています」と行里さんは語ります。

旅先での出会いも、お気に入りの日本酒との出会いも、きっと一生もの。尾道という魅力的な街で、ぜひここだけの日本酒体験を楽しんでみてください。

(文/小鳥あんず)

◎こめどこ食堂

  • 住所:広島県尾道市東御所町5-2 2階
  • TEL:0848-36-5333
  • 営業時間:火~日ランチタイム 11:00~14:00 / ディナータイム 18:00~23:00
  • 定休日:月曜日

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小鳥あんず

1988年生まれの駆出しライター。美味しい酒と肴を愛し、燗の温度で季節を感じます。晩酌は毎日まじめに。日常生活のなかで日本酒を楽しむための小さなコツや、日本酒というものに関わる方々の姿やその思いが伝わっていくよう、丁寧な記事を心がけて精進してまいります!