新潟市の古くからの繁華街・古町(ふるまち)の一角にある「居酒家こばちゃん」。佐渡出身のご主人が2002年に開いたというこのお店は、もうすぐ創業20周年を迎えます。新潟の豊かな食材と地酒が楽しめるので、県内外のお客さんでいつもにぎわっている人気店です。

「居酒家 こばちゃん」の外観

食材の仕入れはお客さんのことを思いながら

のれんをくぐって店内に入ると、通路を挟んでカウンターと小上がりの席。2階には大人数でも対応できる広いお座敷があり、ゆったりとくつろぐこともできます。

「居酒家 こばちゃん」の店内

各テーブルに置いてあるメニューの他に、壁面のホワイトボードには本日のおすすめが並んでいて、そのメニューの多さに迷ってしまいます。

「居酒家 こばちゃん」のメニューボード

毎日、市場に行って「これはいいな」と思ったものを仕入れて、その日のメニューを考えているんだそう。

「今日はあの人が来るから、これを仕入れておこうかな」とか、「あの人は、このメニューが好きだからな」とか、常連のお客さんの顔を思い浮かべて仕入れをしていると、店主の小林さんは話してくれました。時には「あれが食べたいから作って!」なんてリクエストも。

「居酒屋こばちゃん」店主の小林さん

「居酒屋こばちゃん」店主の小林さん

「うちは常連さんが多いから、よく来る方が飽きないようにメニューがどんどん増えていったんですよ。食べたいと言ってくれたものをできる限り作ってあげたいんです」

そんな小林さんのお話を聞きながら、メニューを注文します、1品目は、新潟名物の「栃尾の油揚げ」。

「栃尾の油揚げ」

一般の油揚げよりもとっても大きいのが特徴で、長岡市・栃尾地域の歴史あるソウルフードです。

生地は極厚ですが、中はふんわり。そのまま食べてもおいしいのですが、今回は納豆入りを注文しました。表面をカリッと香ばしく焼いた油揚げに生姜を添えて醤油をかけていただきます。口いっぱいに旨味が広がる「居酒屋こばちゃん」の人気メニューです。

どんな料理にも合わせられる新潟地酒の品揃え

「居酒屋こばちゃん」の日本酒ラインナップ

「お店にはどのくらいの日本酒を揃えているのですか?」とたずねると、一升瓶を次々と並べてくれました。カウンターに載せきれないほどの日本酒は、すべて新潟県内のものです。銘柄を選ぶ基準は「飲んでおいしいもの!」と小林さん。

季節限定のものや、なじみの酒屋さんおすすめの銘柄を中心に揃えています。日本酒を注文するお客さんが多いからこその種類の多さなんですね。

「えごねり」

佐渡の名物「えごねり」には、同じく、佐渡の地酒、加藤酒造店の「金鶴 純米吟醸生酒 風和(かぜやわらか)」を合わせました。

「えごねり」とは。乾燥したエゴ草(藻の一種)を煮溶かしてよく練り、冷やし固めたもの。磯のよい香りがしてツルっと食べやすい一品です。酢味噌で食べるお店もありますが、こばちゃんでは生姜、ネギ、醤油でサッパリといただきます。

加藤酒造店「金鶴 純米吟醸生酒 風和」

夏にかけて限定で販売される「風和」の生酒は、栓を開けるとシュッとガスが漏れる音が聞こえました。甘味と酸味のバランスがよい、暑くなる時期にぴったりな日本酒です。

「お刺身盛り合わせ(タイ・イカ・自家製〆サバ)」

この日のお刺身盛り合わせは、タイとイカと自家製〆サバ。タイの厚切り具合に驚きます。プリプリとした歯ごたえがたまりません。キラキラと光るイカは見るからに新鮮。自家製〆サバのほどよい締め具合から、小林さんの料理の腕が確かなことがわかります。

佐渡の漁師さんから直接仕入れるという魚介類は、こばちゃんに来たら必ず食べてほしいメニューです。

加藤酒造店「上弦の月 純米大吟醸」

これに合わせるのは、加藤酒造店の「上弦の月 純米大吟醸」。

農薬や化学肥料を使用せずに育てられたお米で造る純米大吟醸で、旨味と軽い酸を感じるまろやかなお酒です。キレもよいのでスルスルと杯が進みます。

「イカ丸焼き」

佐渡から取り寄せているという丸干しのイカを焼いた「イカ丸焼き」。香ばしい良い香りが漂います。

「イカ丸焼き」

一切れつまむと、中にはたっぷりの肝。このほんのり苦味がある肝が、佐渡の丸干しイカのおいしいところ。ちびりちびりと口に運べば、熱燗が飲みたくなってきました。

緑川酒造「緑川正宗」

この丸干しイカに合わせて、緑川酒造の熱燗専用酒「緑川正宗」を注文しました。

四段仕込みの四段目にもち米を使っているため、熱燗にすると米の香りとほんのりとした甘味を感じます。熱めの燗にしてイカと一緒にいただくと、とても幸せな気持ちになりました。

「佐渡産トビウオのすり身の味噌汁」

最後は、佐渡産トビウオのすり身の味噌汁で。ふわふわのすり身とネギだけのシンプルな味噌汁で優しい味がします。飲んだあとの〆にぴったりの椀物でした。

常連さんに支えられた、くつろげる“家”

「居酒屋こばちゃん」ののれん

大阪の調理師学校で料理を学んでから新潟に戻り、古町の老舗飲食店で18年間働いてから独立したという店主の小林さん。店名の「こばちゃん」は、小林さんのあだ名からとったものです。

「お客さんが『おいしかったよ!』と笑顔で帰ってくれる。『また来るよ!』って言ってくれる。コロナ禍で本当に大変だしお客さんも減ってしまったけれど、いつも来てくれる人がいることが本当にありがたいんです。30年以上、飲食の仕事をしていてよかったなと思います」

新潟を訪れた際には、新鮮な魚介類と野菜が中心の身体に優しい料理と新潟の地酒が揃う“こばちゃんの家”に、ぜひ立ち寄ってみてください。

(取材・文:茜/編集:SAKETIMES)

◎店舗情報

  • 店舗名:「居酒家 こばちゃん
  • 住所:新潟県新潟市中央区本町8番町1364
  • 電話番号:025-222-7683
  • 営業時間:17:00~23:00
  • 定休日:日曜・祝祭日

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