昔ながらの情緒を今に残したような路地裏が魅力的な神楽坂。その一角に「ふしきの」という和食店兼ギャラリーがあります。

京都の老舗料亭で研鑽を積んだ料理長・荒巻吉男さんによる会席料理と、店主・宮下祐輔さんが全国各地からセレクトした、料理をもっとも引き立てる日本酒のペアリングを、選び抜かれた酒器で楽しめる名店です。

「ふしきの」の宮下祐輔さん

「ふしきの」店主・宮下祐輔さん

学生時代に働いていた料亭で、京料理と日本酒が供される器にすっかり魅了された宮下さん。2011年、神楽坂に「ふしきの」をオープンしました。翌年に獲得したミシュランの1ツ星は、今日まで7年連続で獲得しています。2017年には、同じくフランスの美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ東京』に掲載されました。

店内には、人間国宝をはじめとした日本を代表する作家の酒器を集めたギャラリーが併設されています。古美術の酒器に至るまで、その特徴を知り尽くしている宮下さんは、みずからを「SAKE Gastronomist(酒道提唱者)」と称し、日本酒とその魅力を最大限に引き出す酒器の魅力を世界中の人々と分かち合うことを目指して、日々活動しています。

「ふしきの」で使われている酒器

その熱い思いはもちろん、酒器が日本酒の味わいに与える影響を理論的に説明し、料理とのペアリングを提案する力が高く評価され、香港や上海、パリなどの海外でもワークショップやイベントを数多く開催しています。

お酒の温度を変え、加水でアルコール度数を調節し、酒器によって日本酒の味わいを変化させることで、もっとも美味しい体験を楽しんでもらうことが、宮下さんのモットー。しかし、日本酒の魅力はまだ充分に引き出されていないと感じているのだそう。

みずからが店で提供するのと同じように、もっとも美味しい状態で日本酒と料理のペアリングを楽しめるような酒器づくりを、長く模索してきたのです。

同じお酒でも味わいが変わる!

「asobi sake ceramics(アソビ サケ セラミックス)」のロゴ

宮下さんが、およそ12年の歳月をかけて研究してきた理論の集大成を込めた酒器が12月4日に発売されました。それが「asobi sake ceramics(アソビ・サケ・セラミックス)」です。「世界中の人々が『sake(酒)』を『asobi(遊び)」』として楽しめるように」「料理・日本酒・酒器の魅力を三位一体で体験できるように」という願いが込められています。

3種類セットの酒器は、400年の歴史をもつ有田焼の美しい白磁でつくられています。お酒の色が見やすいだけでなく、ガラスの酒器とは違い、温度を変えて燗を楽しむことできるようにデザインされているとのこと。また、白磁でありながら、飲み口に跡が残りにくく、女性が気軽に日本酒を楽しめる意匠になっています。

「asobi sake ceramics(アソビ サケ セラミックス)」と料理のペアリング

サイズや形状、厚みや角度などが緻密に計算された3種類の器は、同じ日本酒でも、それぞれで甘味や酸味の感じ方が異なります。

右の「TYPE DRY」は、もっともすっきりとした味わいに。飲み終わった後の余韻が長く、日本酒の独特な酸味を楽しめます。

中央の「TYPE MILD」は、甘味と酸味のバランスに優れたもの。全体的にまろやかな味わいに感じられ、米の旨味を堪能することができます。

左の「TYPE RICH」は、もっとも濃醇な味わいです。飲み終わった後、口の中に豊かな香りが広がり、日本酒の複雑な味わいを感じることができます。

酒器の特徴をわかりやすくまとめたオリジナル冊子には、日本語版と英語版が用意され、それを参照しながらテイスティングすれば、だれもが味わいの違いを知ることができるでしょう。

海外も視野に

「asobi sake ceramics(アソビ サケ セラミックス)」

「asobi sake ceramics」は、パリで行われた日仏友好160年記念の複合型文化芸術イベント「ジャポニズム2018:響きあう魂」や、EU最大の日本酒イベント「Salon du Sake」でも展示されました。

宮下さんは、一般消費者向けのワークショップとプロフェッショナル向けのペアリングランチを担当したそうですが、現地での反響は大きく、海外での手ごたえを感じたのだとか。

「asobi sake ceramics」は今後、国内はもちろん、海外での販売も進めていく予定です。

◎商品概要

  • asobi sake ceramics(アソビ サケ セラミックス)
    ※「TYPE DRY」「TYPE MILD」「TYPE RICH」の3種類
    ※ 桐箱、オリジナル冊子付(日本語版・英語版)
  • 価格:9,600円(税別)
  • 発売日:2018年12月4日
  • 購入方法:「ふしきの」店頭、もしくは公式サイトから
  • 問い合わせ先:ふしきの 宮下
    [Tel] 03-3269-4556
    [Mail] info@fushikino.com

(文/中大路えりか)

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