家族経営の小さな蔵が酒米を栽培

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寒梅酒造は、先祖の岩崎氏が「岩崎酒造」の名で大正5年(1916年)に宮城県大崎市にて、創業しました。地域一帯の田畑を有する地主だったので、小作人から集めた産穀米を使って酒造りを始めたとのこと。「誉の高川」の銘柄で地元を中心に人気を博しました。

昭和14年戦時下の中、米不足のために製造を中断しましたが、昭和32年に「合名会社 寒梅酒造」として復活します。銘柄名は、酒造りに欠かせない宮水の「宮」と、厳しい寒さに耐え花開き、人々の心を和ませ、美しい雄姿を表す「寒梅」を合わせ、「宮寒梅」と命名しました。家族経営の小さな蔵ですが、一家総出で酒米の「愛国」「美山錦」「ひより」を栽培。蔵の醸すお酒の大半は、自社田の栽培米となっています。

東日本大震災の被害から蔵を再建

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2011年3月11日の東日本大震災では、内陸部とはいえ、蔵が全壊する被害を受けました。新酒の瓶約4,000本が破損し、最後に搾るだけだった3トン近い醪も廃棄せざるを得ない状態となりました。一時は廃業も頭をよぎりましたが、電気も復旧したころから、全国の日本酒ファンや同業の蔵の励ましと協力もあり、再興を決意。同年12月には新しい蔵が完成し、酒造りを再開しました。

現在は、蔵元4代目の娘さんの岩崎真奈さん・ご主人の健弥さんの若いご夫婦が中心となり、「心に春を呼ぶ酒」をモットーに香り高い美酒を醸し続けています。2011BY(酒造年度)から、著名な書家の方がデザインしたシンプルで清潔感のあるラベルにリニューアルされています。

味乗り十分な蔵元の一番人気酒

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この「宮寒梅 純米吟醸 ひやおろし」は、蔵でも特に人気のある一品だそうです。同酒の元となる純米吟醸は、蔵のスタンダードでもあり、SAKE COMPETITION2016の純米吟醸部門で金賞にも輝きました。自社田で栽培した「美山錦」を、大吟醸なみの45%まで磨いています。

レギュラー品は華やかな香りでやや淡麗、キリッと引き締まった味わいで、冷やして美味しいタイプでした。このひやおろしは、ひと夏寝かした効果が十分に感じられ、非常に味が乗っています。ジューシーで膨らみを感じる味わいがあり、香りは熟した果実のように濃密です。しかし、宮寒梅らしく後口のシャープな切れ味は健在。味は膨らみすぎず、ちょうど良いバランスを保ち、柔らかさと上品さをあわせ持っています。

常温・ぬる燗でも美味しく、味の変化を楽しめます。お燗にするとシャープな味わいとなり香りも抑えられますので、食中酒としてもいけます。癖のない料理と相性が良く、塩気と甘味がある桜餅にも合うかもしれません。洗練されているのですが、そこはかとない素朴さも感じます。秋の夜長にホッとできる一品でしょう。

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