創業120年を超える老舗蔵

創業は明治27年(1894年)に藤村酒造店として創業。太平洋戦争中は数社と企業合併し、花巻酒造株式会社として法人化しましたが、戦後は再び分離。復員した三代目・藤村久喜氏が「久喜が逆立ちしてでも盛り上げる」と現在の名称になりました。主力銘柄は日清戦争の勝利を祝って「凱旋」、戦後は「喜久盛」そして現在の「鬼剣舞」と続いています。

東日本大震災から立ち直り全量純米蔵へ

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しかし、平成23年(2011年)の東日本大震災にて蔵が半壊。映画のロケにも使われたり、雑誌にも取り上げられた趣のある醤油蔵は全壊する被害を受けました。莫大な費用がかかるため、蔵を直せないまま生産量を減らして酒造りをおこなってきました。そのような中、平成26年3月に隣接する花巻市の白雲株式会社が、杜氏の他界にともなって自主廃業することになり、蔵を借りることになりました。戦前は企業合併により、同じ会社だったよしみもあり、5代目・藤村卓也氏の頼みにご遺族も快く了承したようです。同年10月から新しい蔵での仕込みを始めています。同時期に南部杜氏の盛川泰敬氏も加わり、岩手県初の全量純米蔵となりました。

印象的なラベルは映画「タクシードライバー」から誕生

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タクシードライバーは一度見ると忘れられないラベルが印象的です。音楽や映画、そして格闘技(レスリング初段、和術慧舟会岩手支部長)に通じ、趣味人でもある5代目・藤村氏は映画雑誌のアートディレクターとして著名な高橋ヨシキ氏と呑んだ時に意気投合。新しい銘柄を考えようと盛り上がり、ロバート・デニーロ主演の名作『タクシードライバー』にしよう、ということになったそうです。その数日後には高橋氏がラベルデザインの原型を仕上げていたとか。平成17年(2005年)に商品化し、近年は大人気となっています。。

味わいもインパクト大の「破天荒酒」

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同銘柄は仕込みタンクごとに、仕込み時期、酵母が違います。筆者が呑んだのは「仕込み2号」で、岩手県産米「かけはし」を55%まで磨き、岩手県オリジナル「ジョバンニ酵母」を使用した純米生原酒です。呑んでみた印象も「東北の破天荒酒」。フレッシュな麹香と、口に含むと若干の渋みや荒々しさを感じますが、特徴的な太い酸味が舌いっぱいに広がります。密度の濃いジューシーさもあり、まさに元気一杯のフルボディ。スッキリしたタイプの多い岩手の中では最も濃醇なお酒かも。生酒ですが、お燗にしても面白いですし、和食、肉料理や洋食まで幅広く合わせることもできるでしょう。若い人に呑んでもらえれば、ラベル、味わいともに楽しめるはずです。

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