「日本酒は稲をくぐり抜けた水」をモットーに王道をいく良酒
澄川酒造場は1921年(大正11年)に米問屋だった澄川家が、親戚の酒蔵を引き継いで創業しました。
『東洋美人』の銘柄名は、初代が亡き奥様に捧げたものです。酒造年度(13BY)から若き天才杜氏と呼ばれた澄川宣史氏が蔵元杜氏となり、より酒質が向上し、透明感がありなめらかでフルーティーな酒質で、一躍全国でも注目される銘柄となりました。
「日本酒は稲をくぐり抜けた水」をモットーに奇をてらわない王道を行く良酒を醸し、杜氏就任当初は約350石程度の小さな蔵でしたが、現在は約2000石を生産するまでになっています。
多くの日本酒ファンに支えられ災害から復活!
地酒業界を引っ張る蔵のひとつとなった澄川酒造ですが、まさかの天からの災害に襲われます。2013年7月28日、山口県萩市から島根県を襲った豪雨災害により、同蔵のそばの田万川が決壊し甚大な被害を受けました。酒蔵や蔵元の自宅は1階部分がすべて浸水し、数千本のお酒、帳簿類が流され、伝統ある家屋や貯蔵庫、蒸米器、瓶詰め機など多くが使い物にならなくなりました。ただ、不幸中の幸いで蔵元や蔵人の皆さんは全員無事でした。
全国の飲食店、酒蔵、酒販店、日本酒ファンから、義捐金やボランティアで復旧作業の協力を得て不死鳥のごとく復活します。同年は生き残ったお酒をブレンドなどして「生き残ってくれた酒たち」として販売します。年内に蔵を改修することができ、「原点」シリーズで「奇跡の新酒」として新酒を仕込むことができました。また、2014年12月には新しい蔵も稼働しています。
東洋美人らしいフルーティーで滑らかな味わい
ippoシリーズはその豪雨災害から「原点からの一歩」を踏み出すという意味で、昨年度から販売されています。特定名称をあえて名乗っていませんので、スペックなどは不記載ですが、山田錦を50%精米した純米大吟醸の規格で、無濾過生詰酒です。これを聞くと3240円というお値段は大変リーズナブルだと思います。
回栓すると、穏やかな上立ち香で若いマスクメロンのような心地よさを感じます、口に含むと甘酸っぱく、東洋美人らしくひっかかりのない滑らかでフルーティーな味わい。山田錦特有の丸い膨らみが適度に広がり、後口もスッと優しく切れていきます。
お刺身やカルパッチョ、薄味の煮付けなど、上品な料理に幅広く合わせることができるでしょう。穏やかながら芯はしっかり。蔵の酒質の高さを改めて実感できる一品です。
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