こんにちは、SAKETIMESライターの鈴木 将之です。
普段は某コンサルティング会社で堅い仕事をしていますが、暇さえあれば日本酒会に参加したり蔵を訪問しています。

今回は、高知駅から特急電車で1時間弱。
のどかな風景に揺られながら、土佐久礼駅に到着。
「黒潮おどる鰹の国」、「土佐の一本釣りの町」として知られ、新鮮な魚を販売する大正町市場でも有名な高知県中西部の中土佐町久礼という港町の、高知で最古の日本酒蔵へ訪問しました。

高知最古の蔵!230年の歴史を誇る西岡酒造店

西岡酒造店のご紹介

西岡酒造店は、この地で江戸時代中期の天明元年(1781年)に、初代井筒屋仁助が創業し、現在10代目に至っている約230年の歴史を持つ蔵元です。
仕込水は地下湧水、四万十川伏流水を使用。
原料米として、四万十川源流の里でできるだけ自然な農法で栽培した酒造好適米などを使用したこだわりの酒造りを行っており、全国新酒鑑評会金賞受賞など各種鑑評会での評価をいただいております。
ぜひ西岡酒造場のお酒をご賞味下さい。

住所:〒789-1301 高知県高岡郡中土佐町久礼6154番地
電話:0889-52-2018
公式サイト:http://www.jyunpei.co.jp/

(出典:西岡酒造店パンフレットより)

高知最古の蔵見学

酒造りは休みの期間で、来季の作りに向けて準備中のなか、10代目、西岡大介社長に蔵を案内していただきました。

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さすがは高知最古、蔵は230年の歴史がある建物です。
建物にも重み、歴史を感じます。
壊れている部分は「直す」よりも「留める」という形にしているそうです。

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蔵は2階建てになっており、滑車は現役で利用されています。

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2階は西岡社長は普通に歩いていらっしゃっていましたが、
歩くとミシっと音がしたり、ちょっと床が弛んだりと慣れていない筆者は、結構ドキドキしてしまいました。
壁には過去の杜氏、蔵人の名前が書かれている部分も。
「醸造極良好ニテ終ル」とあります。よほどおいしいお酒ができたのでしょうね。

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蔵の中には酒蔵ギャラリーも併設されています。
昔の酒造りの器具や写真などを観ることができます。

市場でいただく!鰹との相性を考え尽くされたお酒久礼

一通り見学させていただいたところ、ちょうどお昼ということで、
大正町市場へ西岡社長と移動しました。とても元気の良い市場です。

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なんとこの市場で魚を買うと、市場内の食堂で刺身にしていただき、さらに定食として食べられるのです!
この日はカツオの新子がちょうど出ていた時期。
そして高知といえば、カツオのたたき!
西岡社長が持参された西岡酒造場の日本酒、「久礼」と一緒にいただきます。

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久礼はそのままいただくとフルーティさを感じつつも、少し辛口。
ですが、塩たたきと一緒にいただく久礼は、口の中で甘味を少し感じつつ、鰹の旨みをしっかりと倍増してからすっきりと切れるお酒に変貌しました。
まさに鰹との相性を考えつくされた土佐の酒!

あっという間に味わい尽くして、実に贅沢なお昼をいただいたのでした。

西岡酒造店自慢の地酒を堪能!

蔵に戻って、改めて試飲をさせていただきました。
定番から今年の新商品まで、幅広く味わわせていただきました。

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まずは商品名検討中の今年の新商品。(写真一番右)
日本酒度+20度ということでさすがの「辛口」。
検討中のラベル案も数点見させていただき、どれになるのか楽しみです。

おもしろかったのは、「純米吟醸 山間米」。(写真右から2番目)
四万十で取れるお米とその米を育てた水で作ったザ・地酒。
これはかなりの骨太なお酒です。口当たりは柔らかめですが、あとから重厚な米の味がしっかりと。
燗にしてもおいしいお酒ではないでしょうか。

これからも地元、高知の地酒でありたい

お昼や試飲のなかで、西岡社長にお話しを伺いました。

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-本日は蔵見学から昼食まで、ありがとうございました。蔵見学に来られる方は多いのでしょうか。

大正町市場と一緒に見学に来られる方は多いですね。
蔵開きも行っていますので、結構お客様はいらっしゃいます。

-東京では「久礼」ブランドが少しづつ有名になってきました。
私も「久礼」で西岡酒造店さんを知りまして、今回見学させていただきました。

「久礼」は県外向けに作ったお酒です。ほぼ県外に出荷していますね。
県外で知名度が上がり、高知に逆輸入されているようです。
高知県内では、「純平」が飲まれています。
青柳祐介さん作の漫画、「土佐の一本釣り」は当地が舞台で、その主人公から名前を頂いている清酒です。

-どのような体制で酒造りをされているのでしょうか。

自社杜氏を筆頭に蔵人は全部で6人います。
造りを始めると半じまいで一切造りをとめないので6人中4人が交代で出勤するような体制にしています。
でも杜氏は休みの日も気になってしょうがないようで蔵にずっといるような感じです。

-蔵人のみなさんはどのような方がいらっしゃるんでしょうか。

蔵人の中には元自衛隊の人もいます。長年働いている蔵人よりもスコップさばきが実にうまい(笑)
また、今年から女性が1人、バイトで入りました。これから続くかは彼女次第ですね。

-石高(生産量)は300石ですね。個人的にとても好きなお酒なので、もっと生産してほしいところなのですけども。

生産量は増やしたいと思っているのですが、酒米がありません。
酒米は高知の米にこだわりたいので、なかなか増やせません。
また、酵母は高知独自の酵母、「高知酵母」を使っています。
しかし酵母を分けてくれる高知県工業技術センターへ取りに行くのが大変なので、自家培養しています。
「純米吟醸 山間米」は、まさに四万十の米と水と酵母で造った地元の酒です。

-どのようなシーンで飲んでいただきたいでしょうか。

やはり鰹を食べるときや、楽しい時間に飲んでいただきたいと思いますね。

-まもなく今年の仕込みが始まる時期かと思います。どのようなお酒を目指していこうと思われていますか。

当社は、土佐の水と米に感謝し、狩猟採取の基本である自然の恵みを酒と共に味わってもらいたいと願っています。
酵母は高知県の酵母を自家培養し、料理と合わせて飲んでもらえる酒にしたいと考えています。
できるだけ地元の水と米を使い、地元でしかできない清酒を全国の愛飲家の方にも味わってもらいたいです。
そして、全国どこでも通用するお酒というよりも、「高知の地酒」として「高知の料理」(鰹のタタキ等)に1番あう地酒を
目指しております。

また、工業製品ではないので 1つとして全く同じものがありません。
その年のその米を使って最高のお酒を造るつもりでやっています。
杜氏の言葉を借りると、「毎年1年生」ということを毎年実践しています。

-最後に、記事をお読みの日本酒ファンのみなさんに一言お願いします。

「久礼をくれ!!」と恥ずかしがらずに言ってください。

-ありがとうございました!

鈴木の取材後記

旅行に行くと、その土地の食べ物、そしてお酒をいただきたくなります。
西岡酒造店は、地元料理である「土佐の鰹」をどうすれば最もおいしくいただけるか、この1点に注力されている酒蔵でした。
また西岡社長のお話されている姿からは、高知、そして久礼の町を知り、そして好きになってほしい、という
地元愛が伝わってきました。

鰹を食べて、久礼を飲む。

東京に居ても、ただそれだけで、高知の記憶が思い出されます。
まさに土地と一体となった「地酒」と言えるのではないでしょうか。

まもなく戻り鰹のシーズンです。
鰹を見かけたらこういってください。

「久礼をくれ!!」

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