日本酒の熟成酒
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日本酒の熟成酒

いま、ビジネスパーソンが知るべき「熟成酒」の価値─日本酒のプロに聞く、熟成酒市場の可能性

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「伝統的酒造り」が2024年12月にユネスコ無形文化遺産として登録されたことを追い風に、日本酒への興味・関心が国内外でますます高まっています。

日本酒という酒類のなかでも、日本酒の価値を高める存在として期待されているのが「熟成酒」。ワインやウイスキーの熟成(ヴィンテージ)と同じように、日本酒の世界にも、時を重ねることで生まれる特別な香りや味わいがあるのです。

日本酒の熟成酒

そんな日本酒の熟成酒は、国内外においてどのようなポテンシャルを持っているのでしょうか。

たとえば、日本のビジネスパーソンが自国の文化に関する教養として熟成酒への理解を深めていくこと、さらにコミュニケーションツールとして活用していくことが挙げられます。

今回は、書籍「ビジネスエリートが知っている 教養としての日本酒」の著者であり、トータル飲料コンサルタントとして活動している友田晶子(ともだ・あきこ)さんに話を伺いました。

記事の前半では、主にビジネスパーソンに向けて、日本酒市場の現状や熟成酒の魅力を教えていただき、後半では、近年注目の熟成酒ブランド「八継」をテイスティングしていただきます。

日本酒の魅力は、まだ世界に知られていない

友田さんは、2024年12月に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを踏まえて、現在の日本酒市場は「国内外からの注目が高まっていくことが期待されている局面」と話します。しかし、「業界内では盛り上がっていますが、広く一般にはまだまだ浸透していません」と指摘します。

現在も続く世界的な和食ブームは、日本酒の海外展開を後押ししていますが、和食を食べる時に日本酒も試してみるという、あくまでも“和食のお供”として飲まれていることが多く、日本酒そのものの魅力が充分に伝わっているとは言えないようです。

その一方で、四合瓶(720mL)で1万円を超える高級酒の台頭など、日本酒の新しい価値が認識され始めていることも事実。従来の有力銘柄だけでなく、ベンチャー企業などの新しいプレイヤーによるブランドが高価格で取引されるようになるなど、日本酒に対する見方は、国内・国外ともに変わってきています。

さらに、海外の人々が現地で清酒を造るという事例も広がっています。世界中に60以上の醸造所がある現状について、「ワインが世界中で造られているように、日本酒も世界中で造られるべき」と、友田さん。日本酒はグローバルな酒類へと進化しつつあるのです。

トータル酒類コンサルタントの友田晶子さん

トータル酒類コンサルタントの友田晶子さん

そして、もうひとつの大きなトレンドが「ペアリング」への関心の高まりです。

「これまではお酒のみで楽しまれることが多かったウイスキーやジンの世界でも『このお酒はどんな食事に合うのか』を考える時代になりました。もともと、日本酒は料理やおつまみといっしょに飲まれることが多いですが、最近は和食以外の料理とのペアリングを楽しもうとする文化も広がっています」

ビジネスシーンに求められる、“教養としての日本酒”

そんな市況のなか、日本酒はビジネスシーンにおいて、大きな変化を遂げています。

友田さんは、日本酒がワインのように扱われることで、国際的な場面でも通用するようになってきたと話します。ワイングラスで日本酒を飲むなど、古くから続く日本酒独自の慣習に囚われない楽しみ方が定着しつつあるのです。

「私の経験では、仕事の接待の席でも、日本酒がワイングラスで提供されることが増えています」

こうした変化の背景には、香りに特徴のあるフルーティーな日本酒の増加があります。

白ワインのようにしっかりと冷やしてから飲むというスタイルが定着し、海外の方々も日本酒のおいしさを理解しやすくなりました。ワインのような国際的酒類の作法に日本酒が乗ることで、コミュニケーションツールとしてグローバルに通用する可能性が生まれ始めているのです。

同時に、友田さんは日本人が日本酒の文化をもっと知るべきだと強調します。

「国際的なビジネスシーンに日本酒が必要とされる時、その場にいる私たち自身(=日本人)が、日本酒の魅力や個性を正しく知っていなければなりません」

友田さんのセミナーの様子

友田さんのセミナーの様子

実際に、友田さんが開催しているセミナーや講演会では、“教養としての日本酒”を学びたいという、ビジネスパーソンのニーズが高まっているのだとか。

「以前は、ワインの作法を知らないとビジネスシーンで劣勢になると言われていましたが、最近は日本酒の基本的な知識を勉強したいという方が増えています」と、友田さんは話します。

世界中の酒類では、「熟成」こそが最大の価値

近年の日本酒業界では、1本数万円〜数十万円の高級日本酒が増えるなか、日本酒の「価値」をどのように提案していくかが議論されていますが、友田さんは「熟成」による価値を強調します。

「世界中の醸造酒や蒸留酒において、『熟成』は最大の価値を持っています。私の考えでは、品質の低いお酒は適切に熟成しません。熟成に耐えられること自体が、そのお酒の高い品質を証明しているともいえます」

ちなみに、友田さんが運営している、女性審査員による日本酒の品評会「美酒コンクール」では、熟成酒への注目や評価が高いそうで、各年の全出品酒の1位に与えられる最高賞には、2023年と2025年の2回、熟成酒が輝いています。

友田さんのセミナーの様子

友田さんのセミナーの様子

熟成酒は、初心者にとってハードルが高いイメージがありますが、実際に飲んでみることで理解が深まるのだとか。友田さんは、セミナーでの実体験をこう語ります。

「私のセミナーでは、さまざまな製法・酒質の日本酒をテイスティングしていただきますが、熟成酒は初めてという方の多くが驚いた表情を見せます。想像していなかった慣れない味わいに、最初は戸惑うのです」

しかし、ここからが熟成酒の真骨頂です。

「チョコレートやナッツ、チーズ、和スイーツなどといっしょにもう一度飲んでいただくと、表情が一変します。『日本酒にこんなおいしさがあったのか』と気付き、ペアリングの魅力を身体で理解していただけるのです」

日本酒の熟成酒

友田さんが考える熟成酒の魅力は、食事との相性。前述した食材や料理はもちろん、濃い味付の肉料理や煮込み料理、中華料理とも抜群の相性なんだとか。

「北京ダックや東坡肉(トンポーロー)のような、油分が多く濃い味の料理と合わせると、熟成酒の複雑な深みが素晴らしい働きをしてくれますよ」と、友田さんは語ります。ワインのように口中の油分を切るだけでなく、うまみを強調するソースとなって、相乗効果を生み出してくれるのです。

そして、熟成酒は温度の変化による幅広い楽しみ方も魅力です。一般的には、常温か少し冷やして飲むことが多いですが、温めると香りがさらに広がり、異なる表情を見せてくれます。

加えて、友田さんは熟成酒ならではの価値について、こう語ります。

「熟成酒を飲むと、『時間』そのものを味わっているような感覚になります。特別な時間を共有するという意味で、大事な人との食事や特別な記念日にふさわしいお酒だと思います」

熟成酒は、強力なビジネスツールになる

友田さんによると、熟成酒に関する知識は、ビジネスパーソンにとって強力なコミュニケーションツールになるといいます。

特にワインやウイスキーを嗜む人にとって「熟成」という価値は理解しやすいため、「日本酒にも熟成の世界があるのか」という新たな発見と興味を与えることができます。

「熟成酒を通じて、日本酒の複雑さや奥深さを伝えることができる」と、友田さん。海外のビジネスパートナーとの会食で日本酒の熟成酒を飲んでもらうことは、その後の関係性をプラスに変える有力な選択肢だといいます。

日本酒の熟成酒

実際のところ、海外のソムリエやワイン関係者から、日本酒の熟成酒への問い合わせが増えているようです。「ソーテルヌ(フランスのソーテルヌで造られる貴腐ワイン)に似ている」といったワインの言葉で表現されることもあるようですが、その事実が、海外でも理解が進んでいる証といえるでしょう。

また、高級酒の市場でも、日本酒の熟成酒が注目されています。熟成には手間と時間がかかり、希少性も高いため、ヴィンテージワインやオールドウイスキーと同程度の価格帯であることへの理解があります。接待や贈答などの場面において、日本酒の熟成酒を選択肢に持つことは、幅広い教養を示すことにもつながるのです。

50年以上の熟成とは思えない、驚きの軽やかさ

今回は、注目が高まっている高級熟成酒のなかから、2023年に誕生した熟成酒ブランド「八継(はっけい)」を、友田さんにテイスティングしていただきました。銘醸地として知られる兵庫県・灘の酒蔵である沢の鶴にて、1973年に醸造されたという50年熟成の商品を中心に、異なる個性をもつ4種類の熟成酒がラインナップされています。

「八継」のコンセプトは「時間を旅する」。まさに、日本酒の「時間」という価値を新たに提案する熟成酒ブランドとして、注目され始めています。

熟成酒ブランド「八継」

テイスティングするのは、1973年醸造の「八継 刻50 純米」と「八継 刻50 本醸造」、2008年醸造の「八継 刻15 実楽(じつらく)」、2007年醸造の「八継 刻17 伝承」という4種類。

友田さんは、まずは「八継」のブランドについて、こう評価しました。

「全体的にバランスが良いですね。しっかりとした熟成感がありながらも、飲みやすさを保っています。熟成年数もさまざまで、味わいを比較できる点も素晴らしいです」

また、「他ブランドの熟成酒と比較しても、いずれもきれいな印象です。重たさやくどさが少なくスッキリとしていながら、熟成ならではの複雑さと深みがあります」と、高く評価します。

八継 刻15 実楽

八継 刻15 実楽

「八継 刻15 実楽」は、兵庫県三木市吉川町の実楽という地区で栽培された特Aの山田錦を使用。「熟成酒の入門編として、さまざまな方々に試していただきやすい味わいだと思います。特にワイン好きにおすすめしたい」と、友田さん。「鶏の煮込み料理などに合わせながら、お酒の長い余韻を楽しんでいただきたい」と、語ります。

八継 刻17 伝承

八継 刻17 伝承

「八継 刻17 伝承」は、大吟醸酒をベースにした低温熟成酒。繊細さを保ちながら、熟成による奥行きが加わった味わいが特徴です。「伝承」という名前には、大吟醸造りの技術の伝承という意味が込められています。友田さんは「脂が乗った白身魚を炙った料理に合わせたいですね。鯛やのどぐろとの相性が良さそう」と、笑顔を見せました。

「八継 刻50 純米」「八継 刻50 本醸造」

「八継 刻50 純米」「八継 刻50 本醸造」

そして「八継 刻50 純米」と「八継 刻50 本醸造」について、友田さんは「長い時間がもたらす味わいの変化が如実に感じられます。これほどの年数を寝かせるのは、酒蔵としての覚悟と技術がなければできません」と、評価します。

さらに「ただ『飲む』というよりも『味わう』という感じです。50年という長い時間の重みを、お酒を通じて感じられる、本当に貴重な体験ですね」と、話します。

トータル酒類コンサルタントの友田晶子さん

また、ペアリングについては、こう説明してくれました。

「『八継 刻50 純米』は、単体でバランスが取れているので、上質な生ハムやチーズなど、うまみを増幅してくれるような軽めのおつまみで充分。一方で、『八継 刻50 本醸造』については、より酸が高いため、イノシシの炭火焼きのような脂身に特徴のある肉料理にも合わせやすいと思います。

どちらも余韻が長く、かつ軽快。50年以上も熟成していながら、重厚な印象ではなく軽やかな味わいという点が素晴らしいです」

八継

熟成酒は、酒蔵の「技術」と「意志」があってこそ

最後に、友田さんは「八継」のポテンシャルについて、このようにまとめました。

「沢の鶴という業界大手の酒蔵が、本気で熟成酒に取り組んでいること自体が、熟成酒全体の価値を高めるものだと考えています。50年以上もの長い時間、熟成させ続けることは、他の(小規模の)酒蔵ではなかなか真似できません。熟成酒に長く向き合ってきたからこその技術や、その価値を信じる強い意志がなければ、成し遂げられないことですね」

「八継」の熟成用タンク

日本酒を通じて、時間を味わう。それは、ただ単に古いものを飲むということではありません。何年も、何十年も、造り手の技術と意志によって大事に守り育まれた時間の重みや、その時間に込められた思いを知ること。その豊かな味わいを通じて、過去と現在、そして未来をつなぐことです。

そんな魅力を持った日本酒の熟成酒は、ビジネスシーンをはじめ、大切な相手との良い関係性を築いてくれるひとつのツールでもあります。熟成酒を通じて日本酒の魅力を体感し、深い体験を共有することで、さらに親密な関係となる。それは、グローバルな場面でも大きな力を持つでしょう。

世界が注目し始めている日本酒、そのなかで新たな可能性を秘めた「熟成酒」を知ることで、ビジネスパーソンとしての教養をさらに深められるはずです。

(取材・文:土田貴史/編集:SAKETIMES)

◎商品の概要

  • 商品名:八継 刻50 純米
  • 原材料:米、米麹
  • 精米歩合:70%
  • アルコール度数:16.5度
  • 醸造年:1973年
  • 製造者:沢の鶴株式会社
  • 内容量:720mL
  • 販売価格:275,000円(税込)
  • 販売場所:「八継」公式オンラインストア
  • 商品名:八継 刻50 本醸造
  • 原材料:米、米麹、醸造アルコール
  • 精米歩合:70%
  • アルコール度数:16.5度
  • 醸造年:1973年
  • 製造者:沢の鶴株式会社
  • 内容量:720mL
  • 販売価格:275,000円(税込)
  • 販売場所:「八継」公式オンラインストア
  • 商品名:八継 刻15 実楽
  • 原材料:米、米麹
  • 精米歩合:70%
  • アルコール度数:17.5度
  • 醸造年:2008年
  • 製造者:沢の鶴株式会社
  • 内容量:720mL
  • 販売価格:33,000円(税込)
  • 販売場所:「八継」公式オンラインストア
  • 商品名:八継 刻17 伝承
  • 原材料:米、米麹、醸造アルコール
  • 精米歩合:33%
  • アルコール度数:16.5度
  • 醸造年:2007年
  • 製造者:沢の鶴株式会社
  • 内容量:720mL
  • 販売価格:77,000円(税込)
  • 販売先:「八継」公式オンラインストア

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