「山廃」仕込みの意味、酒造りの特徴、味わいはどういったものなのか。また、よく山廃仕込と比較される生酛造りとの違いはどういったものなのか。

大人気シリーズ「わかりやすい!すぐに話せる!用語解説」の第3弾は、山廃仕込みについて解説します。

山廃仕込みは生酛造りの派生

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おさらいも兼ねて生酛のお話を簡単に。

生酛造りとは、日本酒を造る時の「酛造り=日本酒のもとになる酒母造り」に関わる言葉です。酒母は速醸系酒母と「生酛系酒母」に大きく分けられます。日本酒造りに必要な乳酸を得るために、乳酸菌を一から育てるのが「生酛系酒母」の特徴でした。

山廃仕込みは、「生酛系酒母」から造られた生酛造りの派生であり、同じく乳酸菌を一から育成する流れをたどっています。つまり、生酛ならではの複雑な味わいや香味も引き継いでいると言えますね。

とは言っても日本酒は一本一本それぞれに個性が存在しますので同じ系統でも同じ味ではありません。これを踏まえて次に進みます。

「生酛」と「山廃」のちがい

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生酛と山廃の違いは難しいわけではありません。どちらも同じ酛づくりの手法をベースにしていることは理解できました。ではその中で何が違うのか・・・それを理解するために、押さえておくポイントがあります。

生酛と呼ぶためには、生酛系酒母を造ることと、その前に行う「山卸(やまおろし)」という作業が必須です。

「山卸」とは、酒母を作るタンクにいれる蒸米を、あらかじめ櫂(かい)と呼ばれる棒を使ってすり潰す作業のことです。蒸し米・・仕込み水を混ぜたものを小分けし、手で混ぜて仕込む手酛という作業から入れると、長ければ丸1日、2~3時間おきに米をかき混ぜるハードワークです。

米を溶かす時間を早めるために行う、この山卸の工程を踏んで作られるのが「生酛」なのです。

では、「山廃」とは?それは言葉を見ればわかります。「山廃」→「山卸廃止酛」の略、まり「生酛」から「山卸」を廃止すると「山廃」になるというわけなんです。

でも山卸を廃止してお米は溶けるのか?山卸のハードな作業は誰がやるのか?という疑問が残ります。答えは「麹」です。の持つ力とは、お米のデンプンを糖に変えるはたらきのこと。そしてできた糖に酵母がはたらきかけてアルコール発酵がおき、日本酒になっていきます。

そもそも生酛系酒母とは、酵母が働きやすい酸性の環境を作るために乳酸菌をイチから育てるというやり方です。酵母がとってもはたらきやすい状態の「日本酒のもと」が酒母ですからね。

1909年に国立醸造研究所の実験で、山卸を行った酒母と行わなかった酒母に成分の違いがなかったことから、重労働の山卸をせずに酒造りを行う蔵元が増えていき、山廃造りが広がっていきました。

山廃の味わいは?

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以上の話を踏まえて山廃の味わいはどういうものか想像しましょう。

基本はお伝えした通り、乳酸菌を一から育てて、乳酸を得る生酛系酒母ならではの、複雑な酒質に仕上がりやすいという性質はあります。

ただ、生酛と山廃という製造方法の違いが味の違いにどう影響するかは科学的にははっきりしていません。しかし、生酛造りで行う山卸のように米をあらかじめすり潰しておくことで、微生物が活動する環境は少なからず変わります。

それが、生酛独自の香りや味わいにつながってくるのではとも言われています。

もちろん、味わいの感じ方は人によって違います。また、同じ「山廃」でも蔵元によって、銘柄によって、年度によっても1本ずつ違います。

しかし、酛造りにおいて「山廃」も「生酛」も、似た工程を辿っていると理解することで、共通性が見えてくるのではないのでしょうか?

山廃のまとめ

1 . 生酛系酒母から作られる日本酒の造り方で「生酛」の派生である
2 . 生酛と山廃の違いは「山卸」を行うか行わないか
3 . 「生酛系酒母」を感じる複雑な酒質のものが多い

以上、2回にわたって「生酛」「山廃」についてご説明しました。

わかりにくい専門用語が、少しでもシンプルにわかり、みなさんの今後の日本酒ライフが楽しくなればとても嬉しいです。

(文/sake_shin)

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