近年、スーパーでも簡単に手に入るようになった「麹」。塩麹や甘酒を作るのに、自宅で使う方も多いのではないでしょうか。この麹、蒸した米に「麹菌」を繁殖させたもので、日本酒造りには欠かせないものです。
ぶどうなどの果実は、糖分がすでに含まれているため、菌を使わなくても発酵が進んでアルコールができますが、お米には糖分が含まれていません。そのため、最初に糖分を作り出す工程が必要になり、その工程で不可欠なのが「麹」です。
デンプンを分解するために必要な麹
日本酒の製造には、最初にお米のデンプンを糖分に変え、その糖分をアルコールに変える過程が必要になります。
糖をアルコールに変換させる酵母は、蒸米に含まれているデンプンをそのまま食べることができません。そのため、麹を使って、「お米のデンプンを糖分に変える」役割を果たします。このように麹がなければ日本酒は造れないのです。
温度管理が麹作りの肝
「麹を繁殖させた米」のことを「米麹」と呼び、米麹を作る工程を「製麹(せいぎく)」といいます。現在は麹菌を蒸米一粒ずつに付着させるというやり方が主流となっていますが、中国大陸から日本に伝わったときには、米粉を練って餅のようにしたものに菌を繁殖させていました。その後日本の気候に合わせた結果、現在の蒸した米に繁殖させる方法へと変化していきました。
製麹は日本酒造りの中でも、一番重要な工程です。
日本酒造りの工程の重要さを表す言葉で
一、麹
二、酛(もと=酒母)
三、造り(=発酵過程)
というものがあります。
麹は日本酒造りにおいて、要とも言えるものです。
麹造りにおいて一番大切な仕事は、温度管理です。麹菌は寒い環境だと繁殖しないので、常に30~40℃で保たせなければなりません。温度が上がりすぎたら空気を入れたり、温度上昇が弱ければ、毛布をかけるなど、まるで赤ちゃんを育てているように気を使います。
そして、温度管理と同じくらい気をつけなければいけないのは、雑菌です。麹菌が元気になる30~40℃は、雑菌にも心地よい温度。良い麹菌をしっかりと育てるためには、服、手、室内、全てを清潔にし、雑菌を繁殖させないことも大切です。
こうした徹底した温度管理、清潔さが美味しい日本酒の土台になっているのです。もちろん、日本酒はさまざまな要素によって成り立っているので、麹だけが味を左右するわけではありません。それでも、麹の出来不出来がそのお酒の味を左右してしまうというのは面白いですね。
(文/SAKETIMES編集部)