2023年2月に、経営・製造の体制を一新して再スタートを切った、長野県上田市に蔵を構える山三酒造(やまさんしゅぞう)。150年以上の歴史を持つ老舗酒蔵で、創業当初から続く銘柄「真田六文銭」に加え、酒蔵の名前を冠した新しい銘柄「山三」をリリースし、新たな酒造りに挑戦しています。
試験醸造を繰り返し、技術を磨いていく
山三酒造の創業は、1867年(慶応3年)。創業から150年以上の歴史がある老舗酒蔵ですが、蔵人の高齢化や設備の老朽化などにより、2015年からは事実上の休蔵状態となっていました。
そんな中、同じ長野県の佐久市出身の荻原慎司(おぎはら・しんじ)さんが事業を継承。代表取締役社長に就任し、2023年2月に再スタートを切りました。
山三酒造がある上田市は長野県の東部に位置し、美しい山々に囲まれた地域で、豊かな水源が複数存在しています。また、隣接する東御市(とうみし)の八重原地区には、「充分な日照時間」「地力の強い粘土質の土壌」「標高700mならではの日較差」など、日本酒の原料となる米の栽培に最適な環境です。
代表銘柄は「真田六文銭」と「山三」のふたつ。「真田六文銭」は、NHKの大河ドラマで話題になった、上田市に縁のある真田氏の家紋「真田六文銭」を酒名に冠した銘柄。「山三」は、酒蔵の再スタートに際して新たに立ち上げられた銘柄です。
平成初期のピーク時には約1,000石(一升瓶換算で約100,000本)の製造量があったそうですが、新しい体制のもとでは高品質の少量生産を前提に設備を一新。初年度は製造量を約60石(一升瓶換算で約6,000本)まで絞り、さまざまなアイデアや技術を柔軟に取り入れながら、酒造りに取り組んでいます。
酒蔵として大事にしているのは「最高品質を追求し続けること」。
厳選された原料、磨かれた技術、徹底した品質管理で、最高の日本酒を最高の状態で届けることを重視しています。現在は、試験醸造に積極的に挑戦し、試行錯誤を繰り返す中で技術を磨いています。昨シーズンは、小さめのタンクで4種類の試験醸造を行い、そのひとつが新商品である純米大吟醸酒の発売につながりました。
また、長野県上田市に蔵を構える酒蔵としての地域性を追求し、唯一無二の価値の提案にも挑戦しています。原料は、酒米はもちろんのこと、酵母も長野県発祥の7号酵母やアルプス酵母を中心に使用しています。
杜氏を務めるのは、39歳の栗原由貴(くりはら・ゆうき)さん。杜氏としては若いですが、京都府内の酒蔵で7年間、働いた経験があります。
再スタートを切った当初は、長野県内のみの流通でしたが、現在は東京都の人気酒販店「小山商店」のほか、北海道や栃木県の酒販店との取引も始まりました。
瑞々しい生命の活力を感じる「山三 山霞」
山三酒造の代表商品である「山三 山霞 うすにごり 無濾過生原酒 山恵錦」(以下「山三 山霞」)を、編集部でテイスティングしました。
「山三 山霞」は、上田市を囲む山々にかかる山霞をイメージした、うすにごりの無濾過生原酒。東御市の八重原地区の農家・柳沢謙太郎さんが栽培する酒米「山恵錦」を100%使用し、長野県オリジナルのアルプス酵母で醸した一本です。
「山恵錦」は、芳醇な香りとなめらかな味わいに仕上がりやすい酒米。「アルプス酵母」は、デリシャスリンゴのような甘い香りを生み出してくれる酵母です。
グラスに注ぐと、リンゴやメロンを思わせる、ジューシーで甘く華やかな香りを感じます。青パパイヤのような爽やかな風味や、生酒ならではの若々しい印象もあります。
口に含むと、生酒特有のフレッシュさを感じますが、口当たりはやわらかくジューシーで、身体に染み込んでいきます。やさしい甘みとふっくらした旨味は、強すぎず弱すぎずの良いバランス。香りや味わいの主張は強くないものの、旨味ははっきりと感じられ、飲み応えは充分です。中盤からキレの良い酸味が感じられ、後口はドライな印象です。
青々しく茂った森林のような、澄み切って穏やかでいながらも、瑞々しい生命の活力を感じる一本でした。
しっかりとした旨味とシャープな酸味が印象的なため、濃厚なタレをまとった焼き鳥など、こってりとした肉料理に合わせるのが良いでしょう。
2023年9月には、新しい商品として純米大吟醸酒をリリースした山三酒造。こちらは県外産の山田錦を使用していますが、来年は東御市八重原産の酒米を使用する予定とのこと。
さまざまな原料や製法を試しながら、山三酒造がこれからどのように成長していくのか、期待しましょう。
(取材・執筆:SAKETIMES編集部)
Sponsored by 山三酒造株式会社