薬屋から造り酒屋へ「医食同源」の酒

山和酒造店の創業は明治26年(1893年)。その当時の当主・伊藤和平衛氏がそれまでの家業の薬屋を、造り酒屋に転換させたのが始まりです。蔵のルーツゆえなのでしょうか、この蔵の酒造りのコンセプトは「医食同源」だそうです。米にもこだわり、契約栽培された無農薬の有機米を使って「水が如くのどを潤す酒造り」にまい進しています。海外輸出も積極的に取り組み、ニューヨークなどの大都市のセレブ達に人気が広まってきています。

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蔵元7代目の変革で「山和」ブランド誕生

創業当時から続く銘柄、「わしが國」。最盛期の昭和40年代には約4000石という宮城県内有数の規模でしたが、大半の酒蔵と同じように、普通酒中心の売り上げでした。時代の変遷、ワインや洋酒人気に押され蔵の経営はじり貧となっていました。

若き現蔵元の7代目・伊藤大祐氏が東農大農学部醸造学科を卒業後、福島県の酒蔵で修業後の平成14年(2002年)に当主となり、特定名称酒中心の高級路線へ転向。ベテラン南部杜氏から、蓋麹法や600㎏という大吟醸酒並みの小仕込みや、すべて自らの手でおこなう瓶燗の加熱殺菌などの指導を受けました。こうして、普通酒中心時代とは真逆をいく手作りの醸造法で、特約店限定ブランド「山和」を誕生させました。山和は呑み手や合わせる料理を選ばない食中酒というこだわりを持ち、醸されています。

地元銘柄「わしが國」が全国発売

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「わしが國」は2016年3月から全国特約店で販売開始しました。岡山県産の米「朝日」を50%まで磨いています。1升瓶で税込3,024円というリーズナブルな純米大吟醸です。銘柄の由来は伊達藩の愛唱歌「わしが国さで見せたいものはむかし谷風いま伊達模様」からきています。地元では「燗で良し、冷やで良し、飲み飽きしないわしが國」とうたわれ、創業からの人気を誇ります。

「朝日」は岡山県の代表的な食用米で、西日本では代表的な米でしたが、背が高いため台風などで稲が倒伏しやすいため、徐々に姿を消しました。そのため「幻の米」と呼ばれますが、岡山県内では地道に生産が続けられています。心拍は小さいですが大粒のため酒米としても使用されています。

真面目なお酒を醸す蔵の、贅沢な食中酒

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「山和」ブランドに共通する華やかな香りとは違う、穏やかで爽やかな吟醸香。口当たりは非常にきれいで透明感を感じられ、朝日米のスッキリした米の旨みと軽快な酸味のバランスが良いです。派手さは抑え気味で後口は引き締まった渋みを持ってスッと切れていきます。真面目なお酒を醸す蔵らしく、主張は少ないがすべてが高次元にまとめられ、贅沢な食中酒としても楽しめるはず。茹でそら豆や落花生、湯豆腐、アスパラのお浸しなど、アッサリしたおつまみと合わせると幸せになれそうです。

銘柄「山和」は、2014年度「SAKE COMPETITION2014」純米大吟醸部門の第1位に選ばれました。今後も注目の蔵です。

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