株式会社八海山の東京営業所所長・余田氏のセミナーに参加

新潟県南魚沼市で造られる「八海山」というお酒は、日本酒好きはもちろん、日本酒を飲まない人でも名前を知っているほどの知名度を誇る、新潟を代表する銘酒のひとつ。スッキリとした飲み飽きない酒質が魅力のお酒です。

蔵は、新潟県の八海山という霊峰の麓に位置し、新潟県の名水100選にも選ばれている「雷電様の清水」と呼ばれる八海山の伏流水を仕込み水に使っています。

そんな銘酒「八海山」の製造は八海醸造株式会社が担っていますが、この会社とは別に「八海山」の名を持つ企業があります。それが「株式会社八海山」。八海醸造株式会社が造りだした高品質のお酒の販売を担っています。

今回、縁があって東京の築地市場近くにある株式会社八海山の東京営業所で、同蔵銘柄の試飲をさせていただき、営業所長の余田岳志氏のセミナーに参加してきました。

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営業所長として八海山への想いを語る余田氏

余田所長は兵庫県の生まれ。もともとはお酒とは関係のない印刷関係の仕事をしていたそうです。酒好きが高じてさまざまなお酒を飲んでいるうちに八海山と出会い、その味わいに魅了され、気がつくと同社の営業職として働きはじめました。もちろん、ご自身も八海山の愛飲家でもあります。

スマートな長身で知的な印象からクールに見えますが、話すととても穏やかでユーモアに溢れた方で、一緒に働かれている方々がうらやましくなります。他の従業員の方々とお話をさせていただきましたが、みなさんとても気さくで本当に自社のお酒を愛しているんだなあ、としみじみ感じるとても素敵な会社です。

pr_hakkaisan_story002_02 株式会社八海山 東京営業所の多目的ホール

この日は、八海山の酒造りへのこだわりや、地元・南魚沼の自然豊かな環境など、さまざなお話を伺うことができました。

八海山では、単に「八海山」というお酒を売るだけではなく、地元・魚沼地域の素晴らしさを広く知らせていこうと、本社蔵の近くに「魚沼の里」という、郷愁と安らぎをもった魚沼の魅力を五感で味わっていただく空間づくりも行っているんですよ。のんびりとお酒を飲みながら、魚沼を楽しむのもよいですね。

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目指すのは“料理を邪魔せず、飲み飽きしない酒”

純米酒や吟醸酒、冬季限定で発売される生酒なども造っていますが、八海山の主力商品は、醸造工程のなかでアルコールを添加した普通酒と特別本醸造酒で、生産量全体の約8割を占めています。

余田所長は言います。「純米酒を造りたくないわけではない。あくまで料理を邪魔することなく、飲み飽きしない酒を造りたいのだ」と。

アルコール添加は「お酒を辛口にするだけ」「お酒の量を増やすだけ」「添加するアルコールは化学薬品ではないの?」といった誤った理解をされることが多いですが、実は、酒の発酵を止め、優しい華やかさを持つ香りとスッキリした口当たりを生み出すために必要なとても大切な技術です。

八海山の特別本醸造を飲ませていただきましたが、飲み口も柔らかで、本当に飲み飽きしない落ち着きのある香味です。お燗もいただきましたが、ふくよかさが増し、どこか安心する味わいで料理ともバツグンに合う、食事の邪魔をしないお酒なのだとしみじみと感じました。

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妥協のない精米、醪づくり

酒造りは“米を白く磨けば磨くほどいい酒ができる”と昔から言われていますが、普通酒の精米歩合は新潟県の平均が64.5%(全国72.6%)であるのに対し、八海山では60.0%で精米を行い、雑味を少なくすることに注力しています。また酒米を多く削らなければならない吟醸や純米吟醸クラス以上は、米が割れやすくなるというリスクがあるため、さらに時間をかけて注意深くていねいな精米を行っています。

醪づくりにおいては、15トンや30トンという大きな生産ロットでの製造を行う蔵がある中で、今日においても3トン仕込み以下での造りにこだわり、蔵人の体と感性でコントロールできる仕込みの大きさを守っています。

これだけの量を造りながらも、職人の感覚は機械を超え、八海山の素晴らしい酒質を守っているというのですから驚きです。

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製造者のこだわりをお客様に届ける――営業・販売チームの姿勢

八海山の強さは、酒質だけでなく営業にもあります。余田所長が、営業としてのこだわりを語ってくださいました。

「製造側が酒質にこだわっているからこそ、その酒質を理解し、お客様にそれをどのように伝えて販売していただけるかを意識しながら顧客開拓を行っています。単なる拡販だけではなく「八海山からは、他の酒蔵とは違う魅力的な提案がある」と思ってもらえるように、常に新しい提案をし続けていく姿勢を大切にしています」

製造量についても、全国上位10社が日本酒全体の製造量の半分以上を占めている現状を伺うと、決して飛び抜けて多い生産量でないことがわかります。その限られた量を、製造者たちの想いを汲んでていねいに販売していく姿は、これもまた職人の姿であり、チーム八海山としてのこだわりをひしひしと感じました。海外展開は、北米を中心に酒サムライをアンバサダーに迎え啓蒙活動を行うなど、現在数十カ国まで広がっています。

時代に流されず、こだわりを持って自分たちの信じた酒造りをする。造り手にとって、魅力的でありながらも簡単ではない道のりを歩んでいる八海山。日本酒ファンとして、日本酒とそれを造る酒蔵の思いにもっと目を向けたいと思える機会でした。

(文/馬渡順一)

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