「可杯(べくはい)」をはじめとする独自の宴席文化や大酒飲みの祭りなど、酒処として知られる高知県。幕末の志士・坂本龍馬の出身地でもあり、今年は没後150年を記念する特別展示などが各地で開催され、話題に事欠かない県です。

土佐の酒が飲みたくなったら、銀座へ!

東京・銀座1丁目にある高知県のアンテナショップ「まるごと高知」。地下1階の「とさ蔵」は、高知県内にある18酒蔵すべての日本酒がそろい、さらに試飲も楽しめる穴場スポットです。

県外には出回らない希少銘柄や数量限定の商品もあるので、高知清酒を飲みたいときには、真っ先に駆けつけたいお店です。

高知県は酒場詩人として有名な吉田類さんの故郷。地下へ降りる階段には、本人の等身大パネルも飾ってありました。ご本人も年に数回お店を訪れるそう。運が良ければ会えるかもしれませんね。

高知を代表する人気銘柄が集結

地下へ降りると、300種類以上の銘柄がぎっしりと並んでいます。

坂本龍馬にちなんだ日本酒として有名なのが、司牡丹酒造の「船中八策」

「船中八策」とは、龍馬が長崎から京都へ向かう土佐藩船「夕顔丸」のなかで、来たる明治維新への備えや新体制の在り方を説いた大綱のこと。新時代への希望に満ちた名前を冠するこの日本酒は、発売から20年以上経った今でも人気の商品です。

1603(慶長8)年創業の司牡丹酒造は、生家にも近いことから、龍馬と深い縁を持つ蔵とも言われているのだとか。龍馬が生きた激動の時代に思いを馳せながら飲みたい日本酒ですね。

他にも、日本一おいしい市販酒を決める「SAKE COMPETITION 2017」の純米吟醸部門で、みごと1位を獲得した「土佐しらぎく 純米吟醸 山田錦」(仙頭酒造場)も発見しました。

同じく、「SAKE COMPETITION 2017」の純米酒部門で3位、8位、10位を獲得した「美丈夫」(濵川商店)や、今年から新設されたラベルデザイン部門で4位に入賞した「酔鯨 純米吟醸 高育54号」(酔鯨酒造)も人気です。

「文佳人 夏純吟」(アリサワ酒造)は、入荷するとすぐに売り切れてしまうので要チェック。かわいらしいラベルで、思わずジャケ買いしてしまいそう。

こちらには、フルーティーで華やかな香りが印象的な「亀泉 純米吟醸原酒 CEL-24」(亀泉酒造)も。人気ランキング1位の逸品です。

「安芸虎 純米吟醸 阪神タイガースラベル」(有光酒造場)は、タイガースファンへのプレゼントにぴったりでしょう。

全体的に高知県の日本酒は、スッキリとして飲み飽きしない、食中酒に向いているものが多いようです。

「酒豪が多い県なので、飲みやすいお酒が好まれるのかもしれません」と教えてくれたのは、副店長の藤原浩司さん。山形県の酒蔵で働いた経験を生かして、高知清酒の魅力を伝えています。

※お酒の販売情報は取材日(6月15日)時点のもの。季節限定の商品もありますので、現在は在庫がない場合もあります。

「ためし酒」を楽しもう!

カウンターにある「ためし酒コーナー」では、有料の試飲も楽しめます。

お猪口1杯(200円)から試すことができ、3種類の飲み比べセットはおつまみがついて650円。担当者が日替わりでおすすめする6~8種類から、好きなものを3つ選べます。

ためし酒コーナーの目玉は、なんといっても「吉田類のセレクト3種」(900円)。吉田類さんが月ごとに選んだ3種類の日本酒を、お猪口でいただけます。

取材にうかがった6月のラインアップは「四万十の風 純米吟醸」(藤娘酒造)、「司牡丹 純米大吟醸」(司牡丹酒造)、「瀧嵐 吟醸」(瀧嵐)の3種類でした。

それぞれに個性がありながら、共通しているのは飲み飽きしないスッキリとした口当たり。爽やかな清涼感が初夏にぴったりですね。

また、「まるごと高知」のファンクラブ「類倶楽部」へ入会し会員証を提示すると、おつまみのサービスを受けられます。

さらに、「吉田類のセレクト3種」を注文することで押してもらえるスタンプを6個集めると、店舗おすすめの土佐酒が1本(四合瓶)もらえるという特典も。毎月1回ずつ通うと、半年でお酒がもらえるなんて太っ腹ですね。しかも、なんと会費は無料とのこと。

今回のおつまみは、高知名物の「きびなごケンピ」。まぶされた海苔から磯の香りが漂い、土佐のお酒とも相性ばっちり。ついついお酒が進んでしまいます。

高知のおもてなし文化を知る

高知県には「可杯(べくはい)」や「菊の花」「箸けん」など、"おきゃく"と呼ばれるユニークな宴席文化もあります。店内には、可杯で使える酒器も販売されていました。

可杯は、数名で輪になってコマを回し、倒れたコマの指している方向にいた人が、指定された絵の杯でお酒を飲み干すというゲーム。酒器に穴が空いていたり、自立しないようなつくりになっていたりして、すべて飲み干すまで置けない仕組みになっているところがポイントです。

天狗の器は80mlくらいの容量があるので、飲み切るにはなかなか手ごわいですが、お酒好きならむしろ当たった方がうれしいのかもしれません。

高知のカツオと高知の日本酒

1階のアンテナショップで高知の特産品を選び、その食材に合わせて日本酒を購入するのもおすすめです。自宅にいながら、高知の食を堪能できますよ。

この日は、藁焼きのカツオ(冷凍)と「久礼 純米酒」(西岡酒造店)を購入。「久礼 純米酒」には、どっしりとした旨味・酸味があり、藁焼きの香ばしさに寄り添う心地良い味わいでした。

大政奉還から150年の今年、高知県では「志国高知 幕末維新博」が開催されています。

「まるごと高知」では、2017年7日1日(土)~8月31日(木)の期間中、日本酒の試飲会やクイズ、抽選会など、さまざまなイベントが行なわれています。8月の金・土曜は、1階の店頭エントランスにて日本酒試飲販売会を開催するのだそう(時間は未定)。こちらにもぜひ足を運んでみてください。

高知県は「高知家」と名付けたプロモーションを5年前から行なっています。今年のコンセプトは『高知家は、いろんな家族で大家族』。よさこいを踊る人は"よさこい家族"、カツオ好きは"カツオ家族"、高知に関わる人はみな、大家族の一員なんですね。

日本酒好きは"土佐酒家族"でしょうか。高知の文化や日本酒に触れ、土佐酒家族の一員になれたような楽しい時間が過ごせました。

(文/橋村望)

◎店舗情報

まるごと高知「とさ蔵」

  • 住所:東京都中央区銀座1-3-13 リープレックス銀座タワー B1F
  • 電話番号:03-3538-4365
  • 営業時間:10:30~20:00
    ※ためし酒コーナー 平日 13:00~19:00(ラストオーダー 18:40)、土日祝 12:00~18:00(ラストオーダー 17:40)
  • 定休日:年中無休
  • アクセス:JR有楽町駅・東京メトロ有楽町線 銀座一丁目駅より徒歩1分

  

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