都内の有力酒販店などが主催して、市販されている日本酒の中で1番美味しいものを決める「SAKE COMPETITION 2017」の結果が発表されました。全7部門で、それぞれ栄冠を獲得した蔵元の受賞直後の声を紹介します。

【純米酒部門】「作 穂乃智」(清水清三郎商店/三重県鈴鹿市)

(代表取締役・清水慎一郎氏)
「2位にも『作 玄乃智』が入り、ワンツー受賞ができたのには驚きました。両方とも60%精米の純米酒で、穂乃智が金沢系酵母を、玄乃智が協会7号酵母を使っています。どちらも派手な香りの酒ではありませんが、穂乃智の方が金沢酵母の特徴である穏やかで品のある香りが出ているので、1位になったのでしょう。

25歳で杜氏になった内山智広は現在45歳になりました。まさに脂が乗ったベテランの域に入りつつあり、基本を大事にしながら、キレの良い旨い酒を造ってきた彼の腕が評価されたことは蔵元としても喜びの極みです。

三重の酒は全国的にはあまり知られていませんが、昨年の伊勢志摩サミットで多くのお酒が乾杯酒となって脚光を浴びました。今回の受賞が、三重酒のイメージをさらに良くすることにつながれば幸いです」

【純米吟醸部門】「土佐しらぎく 純米吟醸 山田錦」(仙頭酒造場/高知県安芸郡)

(杜氏・仙頭竜太氏)
「受賞したお酒は今季、高知酵母の新しい種類に切り替えたばかりだったので、造りは苦労と迷いの連続でしたね。出来上がったお酒についても周囲からも厳しい意見を聞かされ、正直どう評価されるのだろうかと気になっていました。1位をいただき、ほっとしています。

本来この表彰式には、妻である蔵元の仙頭美紀が来る予定でしたが、都合が悪くなってしまい私が参りました。思いがけない受賞でびっくりしています。こういうことになるのなら、床屋へ行っておけばよかったですね(笑)。

いま高知県の酒蔵は、力を合わせて土佐の酒を広くアピールしようとしているので、今回の受賞がその追い風になればと期待しています」

【純米大吟醸部門】「開運 純米大吟醸」(土井酒造場/静岡県掛川市)

(会長・土井清愰氏)
「息子で社長の土井弥市が海外出張のため、会長の私が代理で出席したところにこの朗報。うれしさよりも驚きの方が大きいですね。

開運は、能登四天王であった波瀬正吉杜氏と二人三脚で40年かけて育て上げたブランド。波瀬が2009年に亡くなり、2014年には私も息子に社長の座を譲りました。以降、若い蔵元と杜氏が力を合わせて、波瀬の酒造りを引き継ぎ、発展させる努力をしてきたので、その努力が報われたのだと思います。

静岡の酒蔵は香りと味のバランスが良い静岡酵母の酒を造ってきたものの、最近話題になることが少なく、心配していたんですよ。しかし、今年の全国新酒鑑評会では金賞を獲得する蔵が増え、さらにこうして私たちの酒が最高峰である純米大吟醸酒で1位になれました。呑んで美味い、静岡の大吟醸酒への関心が高まってくれたらなあと思っています」

【吟醸部門】「来福 大吟醸 雫」(来福酒造/茨城県筑西市)

(蔵元・藤村俊文氏)
「このお酒は、今年の全国新酒鑑評会で金賞をいただいた大吟醸酒とほぼ同じスペックのもの。鑑評会で金賞を獲得するために、香りが明快に出る協会1801号を使う酒蔵が多いのですが、私どもはすべてのお酒で花酵母を使っています。もちろん、このお酒も花酵母ですよ。

香りのバランスを取るために、香りが強く出るアベリア酵母と抑制気味な香りが魅力のベゴニア酵母をブレンドして造りました。それが評価されたことは、花酵母のポテンシャルがまだまだあるということだと思います。

本音を言うと、昨年1位をいただいたSuper Premium部門での連覇を狙っていましたが、お米をよく磨いた大吟醸酒造りの実力が評価されたことは喜ばしいですね」

【Super Premium部門】「七賢 純米大吟醸 大中屋 斗瓶囲い」(山梨銘醸/山梨県北杜市)

(常務取締役 兼 醸造責任者・北原亮庫氏)
*北原亮庫氏は35歳以下の若手蔵元(杜氏)の最優秀者に贈られる「ダイナースクラブ若手奨励賞」も受賞しました。

「山梨県はワインが有名で、日本酒にスポットがあたる機会が少ないのを残念に思っていました。今回1位をいただけたことで『山梨にも美味しい日本酒があるぞ』とアピールできたのではないかと思っています。特に、山梨出身で実行委員を務める中田英寿さんが高く評価してくださったことで喜びもひとしおですね。

数年前から兄(北原対馬さん)とともに、酒蔵の改革に取り組み、毎年ステップアップしてきたと自負していました。その成果がこういう形で表れて、報われた気分です」

【発泡清酒部門】「南部美人 あわさけ スパークリング」(南部美人/岩手県二戸市)

(常務・久慈雄三氏)
「昨年の暮れ、全国の有志9蔵とともに発泡清酒の市場を拡大するための『awa酒協会』を立ち上げ、その協会が決めた基準に従って瓶内二次発酵のスパークリング清酒を造りました。

1年目は手探りで苦労しましたが、当蔵らしい綺麗な吟醸香のあるお酒ができ、こうして1位をいただくことができたので喜んでいます。発泡清酒は日本酒の市場をさらに拡大するために期待されているジャンル。他の酒蔵と切磋琢磨しながら、発泡清酒の魅力アップに努めていきます」

【ラベルデザイン部門】「越後鶴亀 越王 純米大吟醸」(越後鶴亀/新潟県新潟市)

(越後鶴亀 代表者コメント)
「越後鶴亀のお酒を長年造っていた上原酒造が2010年に民事再生法を申請し、その銘柄を引き継いだのが当社です。

お酒は嗜好品なので、"楽しくなければならない"、"かっこよくなければならない"と考え、新しい越後鶴亀をアピールするため、4年前に優秀な若手デザイナーにラベルの製作を依頼しました。

そうして、鶴と亀を連想する今回のデザインが誕生したのです。大吟醸のほかに、季節限定商品にも幅広く使い、越後鶴亀のイメージアップに取り組んできました」

お酒選びの参考に──「SAKE COMPETITION」の意義

SAKE COMPETITION」は今年で6回目をむかえ、知名度も高まり、出品点数も1730点まで増加。出品される商品は市販酒に限定しているため、日本酒に興味を持って間もないビギナーや流通業界にとって、ひとつの基準となりますね。今後もますます参加蔵が増えて、注目度がさらに高まっていくことを期待したいです。

今回受賞した各商品は市販酒。一般の方が手に入れることができるのも魅力でしょう。興味のある方は酒屋などで手に入れて、審査員気分でじっくりと呑んでみてはいかがでしょう。

(取材・文/空太郎)

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