みなさんは、日本酒を選ぶとき、どういった基準で選んでいますか?精米歩合や醸造方法、特定地域、純米酒かアルコール添加酒かなど10人いれば10通りのさまざまな基準があるかと思います。
ただし、それは日本酒の知識をお持ちの方の基準であって、日本酒ビギナーの方や日本酒の知識をあまり持ち合わせていない方が日本酒を選ぶのはなかなか難しいですよね。そんなとき、なにか評価基準になるような日本酒があれば、選びやすくなると思います。
そんな、日本酒の評価基準となりえるようなイベントがあります。今回は、その日本一おいしい市販酒を決めるきき酒イベント「SAKE COMPETITION」をご紹介します。
「SAKE COMPETITION」とは?
「SAKE COMPETITION」は、出品酒世界最多、唯一日本酒だけのコンペティションとして2012年から始まりました。
日本酒は日本の食生活ともかかわりの深い伝統的な飲料ですが、その消費量は減少傾向にあります。その理由のひとつとしてしばしば挙げられるのが、"日本酒はわかりにくさ"です。「日本酒」と一言でいっても品質はさまざま。ラベルに記載されている情報は少なく、専門的な用語の記載も多数あるため、消費者は何を拠り所に選んだらよいのかわからないという課題があります。
その課題解決には日本に流通しているできるだけ多くの日本酒を集め、それらの品質を評価し、日本酒の選択基準をつくることが必要とされます。「SAKE COMPETITION」は、その選択基準を明確にするために企画・開催されました。
「SAKE COMPETITION」では、その選択基準を設けるために、毎年、複数の部門を設定して各部門ごとに順位をつけます。「純米酒部門」「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」は、開催年から変わっていませんが、2014年には清酒表示があれば特定名称酒に限らず出品できる「Free style部門」、2017年には「発泡清酒部門」「ラベルデザイン部門」が増設されるなど、流行を抑えた部門設定がなされています。
また、審査は日本酒業界の著名人が集まり、特定名称酒の部門では、予選審査、決選審査をおこない、各部門のトップ10を決定します。「新酒鑑評会」では、金賞といっても複数の蔵が受賞することができますが、「SAKE COMPETITION」では順位がつけられることが特徴です。
SAKE COMPETITIONの展望
本来日本酒は“國酒”であり、国内および世界に認められるべき酒質を備えています。それには、世界共通の日本酒の基準をつくり上げ、それを多くの消費者の方に知っていただくことが重要です。
「SAKE COMPETITION」を重ねていくことで、日本酒が世界各国の食中酒として選ばれるような品格及び飲用特性の評価基準を明確にしていくこと、さらには、世界各国で行われているきき酒コンテストの頂点としての「INTERNATIONAL SAKE COMPETITION」を、日本で開催することを視野に入れています。
では、いったいどういった基準で日本酒を評価しているのでしょうか?
審査基準について
◎ 審査基準と審査ポイント
清酒の品格及び飲用特性から香味の調和や特性がどんなものか評価していきます。
【審査基準】市販酒の審査のため、特に飲用に適した清酒を審査基準とする。
- 1:香味の調和や特徴が清酒の品格及び飲用特性から特に良好である。
- 2:香味の調和や特徴が清酒の品格及び飲用特性から良好である。
- 3:香味の調和や特徴が清酒の品格及び飲用特性から普通 (平均的)である。
- 4:1、2、3以外のものでやや難があるもの
- 5:1、2、3、4以外のもので難があるもの
- 減点:香味の調和や特徴が清酒の品格及び飲用特性から難がある。特に飲用に不適当な香りは1点減点
【審査のポイント】(1)審査の概要
ラベルは隠され、すべてブラインドチェックで行われます。出品酒を官能し、特徴を認めない場合は香味の調和を清酒の品格と飲用特性の双方から評価します。特徴を認めた場合はその特徴を踏まえて香味の調和を清酒の品格と飲用特性の双方から評価します。
何をもって清酒の品格とするかは各審査委員に委ねられます。また、飲用特性はその概念や評価方法がまだ十分な合意基準がないことから、比較的にわかりやすい飲みにくさに限定して評価しています。
【審査のポイント】(2)総合評価の付け方
総合評価は清酒の品格からの評価と飲用特性からの評価を総合して付けますが、はじめに清酒の品格から評価して(1,2,3,4,5)を付け、これを必要に応じで飲用特性(飲みにくさ)の評価で補正(減点)することとします。なお、補正は次の申し合わせにより行うこととします。
※総合評価が1,2,3であり、かつ飲みにくさが強くて減点が相当と判断された場合、減点は最大1までとします。したがって評価が1のものを2に降格することはできますが、3,4,5に降格することはできません。同じく評価が2のものを3に降格することはできますが、4,5に降格することはできません。同じく3のものを5に降格することはできません。
<用語の解説>
- 「香味」とは、上立香及び含み香、味、後味を指すものとします。
- 「香味の調和」とは、上立香及び含み香、味、後味の個別の調和と全体の調和を指すものとします。
- 「香味の特徴」とは、原料米品種、酵母の種類や製法に由来する個性的な香味ではあるが、難点ではないものを指すものとします。たとえば濃醇な味や爽快な酸味、メロン様やグリーンアップル様の香りなどを想定しています。「特徴」は、清酒の多様化及び新たな醸造技術の萌芽と育成を促すために組み入れているものです。
- 「清酒の品格」とは、清酒が備えるべき優れた品質要件を指すものとします。香りの上品さや優雅さ、味のふくらみやなめらかさ、後味ときれなどを想定しています。
- 「飲用特性」とは、口当たり、おいしさ、飲みやすさ、料理との相性といった飲用上の特性を指すものとします。カプロン酸エチル香が過度に高いものや苦味が過度に強いものは、飲用特性が良くないとする指摘がなされています。特に市販酒ですので飲用に良好であるべきとの考え方から組み入れているものです。
- 「特に良好」と「良好」は、評価の標語です。「特に良好」は各審査員が考える理想的な清酒の水準と同程度であり総じて賞賛できるもの、「良好」は理想的な清酒の水準には一歩及ばないが総じて容認できるもの又は部分的に優れたところがあるものなどを想定しています。「1,2,3」は「特に良好」「良好」「普通」を指し、「4,5」は「やや難あり」「難あり」は市販酒として難があるもの
(出典:SAKE COMPETITION HP)
「SAKE COMPETITION」の意義
日本酒は嗜好品であるが故に、どれを飲めば良いの?と聞いても「好きなものを飲めば良いよ」という返答が返ってくる場面があります。ただ、予備知識・経験のない消費者はそれだと余計に混乱してしまうこともあります。
「SAKE COMPETITION」はそういった「消費者目線の課題」を解決すべく、あえてCOMPETITIONという形で、ランキングを行い、日本酒の消費量増加を目指しているのですね。
みなさんも、飲む日本酒に迷ったらぜひ結果を参考にしてみてください。
(文/SAKETIMES編集部)