こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎です。
本日は日本酒をこよなく愛し、とりわけ、ご自身の出身地である長野県の地酒の魅力を広く伝えるために日夜奮闘されている銘酒居酒屋の店主をご紹介します。四谷三丁目の「日がさ雨がさ」の宮澤一央さんです。
「日がさ雨がさ」は、常に30種類前後の日本酒を常備していますが、そのうちの約半分は首都圏ではなかなか飲むことのできない長野の地酒を取り扱っています。
長野の酒蔵さんをお呼びしての囲む会なども定期的に開いていますし、数年前からは四ツ谷~四谷三丁目界隈の料飲店に声をかけて、8月に長野県の酒蔵だけを集めた大規模な飲み歩きイベントも実施しています。そんな宮澤さんの熱い想いを伺ってきました。

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きっかけは熱い思いを持つ酒屋・酒蔵との出会い

宮澤さんのお生まれは長野県千曲市。高校まで地元で育ち、大学は静岡へ。
卒業後、静岡の会社に就職して5年経ったところで飲食系の会社に転職しました。東京に転勤となり、店長として働き始めます。
この時点ではお酒にはほとんど興味がなかったそうですが、店長になれば常連客をどのように増やすかに知恵を絞らなければならなくなります。
当時は焼酎ブームでしたので、通のお客の意見を聞きながら、多くの酒販店にも足を運び、定番メニュー以外のお酒を増やしていくことで、商売が軌道に乗るように。
そこで、次は梅酒などのリキュールを開拓し、日本酒にも手を広げていきました。日本酒に熱い思いを持つ酒屋さんや、美酒造りにまい進する酒蔵さんなどとの出会いも増え、ますます仕事が面白くなったそうです。
徐々に日本酒にはまるようになり、品ぞろえをすべて自分で決めるためにも、独立したいという気持ちを募らせて、2008年10月に、晴れて現在の場所に「日がさ雨がさ」を開業しました。

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メニューには10銘柄以上の長野のお酒が!

ただし、開店当初から長野のお酒をウリにするつもりではありませんでした。
宮澤さんはそのことを次のように話しています。

「当初は常備する20~30種類の日本酒のうち、長野のお酒は2,3銘柄でした。
ところが、お客さんに「このお酒、すごくおいしいよ」と言われるのが長野の酒だったりすると、他県のお酒よりも、もっと嬉しく感じる自分がいることに気づいたんです。それならば、長野のお酒の品ぞろえを増やしていこうという気になりました。
その後は長野のお酒の試飲会に足繁く通い、蔵元さんと話す機会を増やしていきながら、自分の納得する長野の美酒をどんどん追加していきました」

現在の日本酒メニューを開くと「店長・出身地:信州の地酒最前線!これから信州が日本酒界を面白くする!」と前書きがあって、その下に10銘柄以上の長野のお酒が並びます。
ある日のメニューから抜粋すると、十二六、美寿々、積善、信州亀齢、水尾、十六代九郎右衛門、互、大信州、和田龍登水、聖山、井の頭でした。多くはまだ首都圏でもあまり知られていない小さな酒蔵のお酒ですが、どれも、丁寧に造られた美酒です。
長野出身者がこの店に来ると、リピーターになって、酒飲み友達を連れてきて、「どうだ、長野の酒はうまいだろう」とやってくれるので、自然と長野酒ファンが増えていくようです。

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宮澤さんは週末などには蔵元を呼んで話を聞きながらお酒を楽しむ「囲む会」を頻繁に催していますし、先日はワイン蔵が造るユニークな日本酒として通には知られている「ソガペールエフィス」の大飲み比べ会を催して、日本酒玄人を涙させておりました。

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長野県の52蔵が参加する「大長野酒祭り in 四ツ谷」を主催

また、長野の酒蔵を世に広めようと仲間の料飲店主と仕掛けたのが「大長野酒祭り in 四ツ谷」でした。
2011年に実施した初回の飲み歩きイベントは四谷三丁目界隈の他の料飲店2店と一緒に計3店が、長野のお酒をずらりと並べて楽しんでいただく小ぢんまりとしたものでした。
もっと多くの人に参加してもらえるようにと、年々、声掛けする料飲店と酒蔵を増やした結果、今年(2015年)8月に催した第5回には26店舗、52蔵が参加する驚きの大規模日本酒イベントになりました参加者も約1200人でした
日本酒のイベントは参加する酒蔵が全国各地から集まるというのが多く、ひとつの県だけの酒蔵が集まる企画は例を見ません。参加する酒蔵さんも「長野のお酒をアピールする絶好のチャンス」と高く評価しています。

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ひとりでもOK!3000円で全てのお酒が飲み放題!

宮澤さんの先進性はそれだけではありません。
お店を開店してすぐに飲み放題(2時間)を設定していますが、これが半端ないレベルなのです。
通常の飲み放題というと、日本酒は安い本醸造酒か普通酒で、しかも選択肢のない状態(銘柄が少ない)で提供する店が今でも多いのですが、「日がさ雨がさ」は純米酒や純米吟醸酒を惜しげもなく提供します。
しかも、グループによる宴会ではなくて、ひとりのお客でもOKです。
10種類弱の銘柄を用意して2時間で2000円(料理コースとセットの場合)です。
1000円追加するとメニューに載っているお酒はすべて飲めるプレミアム飲み放題になります。
3000円にはちょっとためらう人もいるのかと思いましたが、お店のお客の5~6割が飲み放題を選び、かつそのうちの3分の2がプレミアム客というから驚きです。
しかも付け加えておきたいのは、飲み放題には他にも生ビール、日本酒ベースのリキュール(梅酒以外もいろいろと)、ウイスキー、
ワイン、焼酎、さらにソフトドリンクも選択の幅が広く、日本酒好きでなくても十分堪能できる内容になっていることです。

「自分が気に入ったお酒だけを飲み放題にしたいと思ったらこうなりました。あまり儲けはでませんが、お客様の喜ぶ顔を見ると手を抜けません」と宮澤さん。
先駆者ともいえる「日がさ雨がさ」に刺激されて、近年、結構な数の居酒屋にプレミアム飲み放題が広がっています。
おかげで、宴会の客がガブガブ飲むという飲み放題のイメージとは一線を画し、日本酒好きが一晩でたくさんの種類の美酒を少しずつ楽しむための飲み放題という新しいジャンルを確立させるのに貢献していると思います。
空太郎も頻繁にプレミアム飲み放題を各店で利用しますが、ぜひ、皆さんも体験してみてください。
おっと、ただし、飛ばしすぎて泥酔したり、飲み残すようなことはしないように。蔵元さんが苦労して造った美酒に敬意を表しましょう。

メニューに開栓日を明記する、徹底した品質管理

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お酒の品質管理にも気を遣っています。
一升瓶の栓を開けて、お店で提供を始めた日を明記しています

「栓を開けた瞬間からお酒の質は変わっていきます。山廃のように、栓を開けてから時間が経過した方が味が乗ってくるタイプもありますが、多くは徐々に酸化が進んでいくので、提供開始日を明記して、お酒のコンディションにこだわる店の姿勢をアピールしています。
たいていのお酒は3日程度で終了、最長でも10日ほどです。一升瓶にあと1合弱残るところまでくると、まかないを食べながら僕らが飲んでしまうこともあります」
と宮澤さん。

都内各地の料飲店と協力して日本酒を盛り上げる!

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日本酒がより多くの人たちに親しまれるような仕掛けも必要ということで、昨年(2014年)からは7月1日を“日本酒元旦なので皆で乾杯しましょう”と働きかけてもいます。
日本酒の酒造年度が7月1日から6月30日であることにちなんで日を選び、都内の各地で日本酒イベントを企画している料飲店主と声をかけあって、「場所は離れていても、お互いに協力して、日本酒を盛り上げていこう」というわけです。

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長期低落傾向が続いていた日本酒も特定名称酒に限れば、需要は反転して上昇しています。
静かなブームになろうとしているわけですが、宮澤さんをはじめとする日本酒を愛する料飲店主たちが、その流れをより確実なものになるように尽力する姿には頭が下がります。
日本酒を造る人、売る人、飲む人みんながより笑顔になれるよう、空太郎も微力ながら応援いたします。

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