スコッチウイスキーのリーディングブランド「シーバスリーガル」と富山県の銘酒「満寿泉」がコラボした日本酒「リンク 8888」の完成披露ディナー会が、2018年12月に「Mercedes me Tokyo UPSTAIRS」(東京・六本木)にて開催されました。

200年以上の歴史をもつシーバスリーガルは世界150以上の国々で愛飲され、日本ではペルノ・リカール・ジャパン株式会社が輸入販売を行なっています。

「満寿泉」の醸造元である、1893年創業の桝田酒造店は吟醸酒のパイオニアとして知られ、世界的なワインコンクール「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」のSAKE部門で金賞を獲得するなど、海外でも高く評価されています。また、キットカットとのコラボといった、新しい取り組みにも挑戦してきました。

リンク8888が並んでいる画像

今回リリースされた「リンク 8888」は、瓶詰めされた250本のうち、限定50本が桝田酒造店で発売されました(6,500円/720ml)。

その味わいは、フルーティーな香りとともに、バニラを思わせる優しい香りが印象的で、バターのようなクリーミーでまろやかな甘味が長く続いていきます。そんな従来の日本酒にはない斬新な美味しさは、どのようにして生まれたのでしょうか。

日本酒とのコラボは初めて

本プロジェクトは、サッカーの元日本代表で、現在は精力的に日本文化を世界へ発信している中田英寿氏がシーバスリーガル主催のビジネスアワードを受賞したことがきっかけでした。

ティム・ペックさんの写真

ペルノ・リカール・ジャパン株式会社の代表取締役社長を務めるティム・ペック氏は「日本酒とのコラボは初めて。とてもわくわくしています」と、興奮を隠しきれない様子でした。

「リンク 8888」は「シーバスリーガルのDNAである"アート・オブ・ブレンディング"を日本酒に活かしたら、どんなお酒が生まれるのか」というアイデアからスタートしたのだそう。

「プロジェクトを進めるためには、高品質の日本酒を造る酒蔵の協力が必要不可欠でした。桝田酒造店をご紹介いただく幸運を得て、それが現実になりました。高品質、かつユニークな日本酒に仕上がっていると思います」(ペック氏)

4種類のオーク樽熟成をブレンド

続いて、同社マーケティングディレクターのヤン・ソエネン氏が、プロジェクトの経緯や商品名の由来を説明しました。

今回のコラボは、ソエネン氏が桝田酒造店を訪れ、酒造りへのこだわりや理念を学ぶことから始まったのだとか。その後、シーバスリーガルの熟成に12年以上使用した4つのアメリカンオーク樽をスコットランドから富山県へ届けて、その樽を使って特徴の異なる数種類の「満寿泉」を熟成させるという試みが行なわれたのです。

ペルノ・リカール・ジャパン株式会社マーケティングディレクターのヤン・ソエネン氏

「2018年2月から樽で熟成させ、その3ヶ月後、オーク樽のアロマをお酒が充分に吸い込んだであろうタイミングで熟成を止めました。何度も試飲を重ねながらそれぞれのお酒をブレンドすることで、バランス良く仕上がったと思います。日本酒本来のフルーティーな香り、樽から得られるバニラや蜂蜜、チョコレートの香りが上手くブレンドされました」(ソエネン氏)

「リンク 8888」という名前は、シーバスリーガルと「満寿泉」をつなぐ8,888kmという距離や、国境や文化を超えて人と人をリンクさせたいという思いに由来しているのだそう。

コラボが見せてくれた新しい世界

最後に登壇したのは、桝田酒造店の5代目である桝田隆一郎氏。シーバスリーガルが中田氏に今回のプロジェクトをもちかけたとき、すぐに桝田酒造店を紹介したそうです。

桝田社長の写真

「ヒデちゃんから、突然の電話で『ウイスキーに興味ある?』と聞かれて、軽い気持ちで『はい』と答えたのが最初でした」(桝田氏)

ちなみに、中田氏が桝田酒造店を紹介したのは、樽酒を20年以上造っている背景を知っていたからだそうです。

シーバスリーガルが三種類並んでいる写真

桝田氏は、シーバスリーガルとともに仕事をするなかで、新たな気付きがあったと話します。

「日本酒造りの発想しかなかった私たちに、広い世界を見せてくれました。『なぜ米を磨く必要があるのか』『なぜ山田錦を使うのか』『黒い米から赤い米までさまざまな品種があるのに、なぜ使用しないのか』など、たくさんの質問を受けたんです」(桝田氏)。

「リンク 8888」は、4つのオーク樽で熟成させた数種類の「満寿泉」をブレンドしています。山田穂を使った純米大吟醸酒が全体の7割を占めていますが、絶妙な割合で玄米を用いた原酒を加えているのがポイントです。玄米を使った理由は、ウイスキーの樽は香りが強く、それに負けない味わいにするためでした。

「今回のオーク樽には度数の高いアルコールが長期間入っていたので、フレーバーがあまり多くありません。ワイン樽とはまた違う、不思議な柔らかさがありました」(桝田氏)。

そして、今回のコラボはあくまでもファーストステップだと話しました。お客さんの反応を見ながら、今後の展開を決めていくそうです。ソエネン氏によると、さらに大きなビジョンを掲げる可能性もあるとのことでした。

日本酒の可能性のドアを開ける

桝田さんがお酒の紹介をしている写真

「従来のファンを大事にしつつも、100年後、200年後の日本酒業界を考えないといけない。このプロジェクトを通して、日本酒の可能性のドアを開けるヒントをもらえました」と、桝田さんは語ります。

シーバスリーガルと「満寿泉」のコラボがどのように展開されていくのか。今後の動きに期待しましょう。

(文/乃木 章)

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