黒龍は九頭竜川の旧名に由来
道元禅師により開創された曹洞宗の大本山、永平寺にほど近い松岡の地に初代石田屋二左衛門が文化元年(1804年)に創業している黒龍酒造。
主力銘柄の「黒龍」は蔵がある松岡を流れる福井県最大の河川・九頭竜川の旧名「黒龍(クツレウ)川」に由来しています。
黒龍もこの九頭竜川の伏流水で醸されています。松岡はかつて松岡藩推奨産業として酒造りが盛んだった土地で最大17軒もの造り酒屋がありました。しかし現在は石田屋の屋号を持つ黒龍1軒となっています。
特定名称酒にこだわった酒造りを推進
同蔵は、一貫して品質本位の酒造りを進めています。7代目蔵元がワインに興味を抱き、フランスやドイツを訪問し、ワインの低温熟成の技術も日本酒に導入し、そして高品質で少量生産を心がけ、昭和50年代から困難とされていた大吟醸酒の市販化に取り組み、大吟醸「龍」として商品化しました。
現在は約8割が吟醸酒となっています。酒米は兵庫県加東郡東条地区産の特A山田錦と福井県産の五百万石を主に使用。平均精米歩合は50%、生産石高における特定名称酒の割合は約85%となっています。
燗酒ブランドのフラッグシップ
主力銘柄は「黒龍」と「九頭竜」。九頭竜は吟醸系の燗酒ブランドとして確立しています。その第1号が今回紹介の大吟醸です。平成16年(2004年)、創業200周年を迎えた蔵元は燗にしておいしい大吟醸酒に取り組みました。
セオリーとしては大吟醸は燗酒に向かないと言われていますが、黒龍は糖度やアミノ酸度、アルコール度数、熟成期間などの最適解を研究、さらに官能検査を繰り返した苦心の末、燗に向く大吟醸を誕生させました。
お燗して口に含むと上品な香りと米の旨みを感じながらも、純米酒のように甘みが膨らむのとは違い、滑りが良くサッパリとしたやや辛口の味わい。芳醇さの中に非常に爽やかな印象を残します。約2年間熟成され世に出されるだけに、角もなく奥深くてやわらかな味わいに幸せを感じます。燗酒ながら爽やかでスタイリッシュなので、意外に夏場の燗酒にも良さそうです。
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