酒豪の画家・横山大観が「大観」の銘柄を提案

森島酒造のある川尻町は、茨城県日立市中心部から車で20分の海岸沿いに位置します。蔵も直線距離で海から約30mという浜辺の酒蔵です。明治2年(1869年)に創業し、昭和20年の太平洋戦争時には空襲で蔵の大半を焼失しましたが、翌21年に石蔵を建て再開しています。

茨城県水戸市出身の日本画の巨匠、横山大観氏が同蔵の酒を愛飲していました。昭和28年、大酒豪の大観氏が同蔵の新酒を気に入り、「大観」と名付けることを提案。現在の「大観」が誕生したのです。ラベルの文字も、大観氏の筆記だそうです。

茨城県で初めて南部杜氏資格を取得

平成23年(2011年)東日本大震災では、茨城県も地震と津波の被害を受けました。海沿いの同蔵も津波が膝まで押し寄せ、外壁の崩落や床や建物のひび割れ、瓶詰めしたお酒の破損など、被害は少なくありませんでしたが、復活を果たしました。

現代の技術革新にとらわれず、「人の判断、感性、ひらめき」を重視。手造りにこだわって、27BY(醸造年度)から、蔵元専務の森嶋正一郎氏が杜氏として酒造りを行っています。正一郎氏は、蔵の南部杜氏に付いて7年間修行し、2006年に南部杜氏協会の杜氏資格選考試験に合格しました。

南部杜氏とは岩手県の清酒造り職人で、全国に杜氏制度がありますが、その中でも有力な杜氏集団です。後継者不足などから、1996年から岩手県外の出身者にも資格を与えています。正一郎氏は、茨城県初の南部杜氏となったとか。その後も蔵の運営をしながら杜氏修行を続け、蔵元杜氏としてデビューしました。

杜氏デビュー初年度で鑑評会の金賞受賞

今回の純米吟醸は、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2016」で初の金賞を受賞。金賞受賞酒の中でも最高賞「トロフィー」に次ぐ、地域名を冠した「茨城トロフィー」に輝きました。正一郎氏が杜氏として初めて一から醸したお酒が、快挙を成し遂げたのです。

このお酒は備前雄町を50%まで磨いています。熟れた果実香が印象的。口に含むと、火入れながら若干のフレッシュ感があり、雄町らしい太い米の旨みと、心地よくフルーティーな酸味も感じます。インパクト十分な口当たりですが、適度に引き締まっていて味が出過ぎることなく、ほどよい余韻を残しスッと切れていきます。バランスが良く、旨みはしっかりしているのですが上品さもあわせ持ち、雄町らしさを活かしながらもスマートで南部杜氏らしい味わいです。焼き鳥や焼肉、ステーキなどにも合うと思いますし、茨城の名産ならあんこう鍋、あん肝とも絶好の相性でしょう。

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