日本酒の原料は、米と米麹と水だけですから、米の良し悪しが酒の出来に大きく影響します。なかでも酒造りに適した米のことを、酒造好適米や酒米と呼びます。

今回は、米どころ新潟で誕生した「五百万石(ごひゃくまんごく)」の味わいや歴史、その特徴を探っていきましょう。

淡麗なスッキリとした酒質

「山田錦」が「西の横綱」と呼ばれるのに対して、「五百万石」は「東の横綱」に位置する人気の酒米です。特性が安定しているこの2品種は生産量も多く、山田錦が全体の約4割、五百万石は3割弱を占めます。

「五百万石」は、小さめの粒で高精白には向きませんが、心白が大きく、麹菌が入り込みやすいのが特徴です。酒質は、「山田錦」や「雄町」のような肉厚なものと違い、やや硬くでスッキリとしたキレの良い味わい。芯が強く、一世を風靡した新潟の淡麗辛口の酒を醸すにはもってこいの酒米でした。合わせるおつまみも、お刺身や塩焼きの魚、干物や珍味など、昔ながらの酒肴にピッタリのお酒です。

米王国・新潟が誇る酒米

新潟県農業試験場長岡本場で、「菊水」を母に、「新200号」を父として交配された品種に、「交系290号」の系統名がついたのが1944年のこと。その後、第2次世界大戦の影響で研究が一時中断しましたが、1957年に新潟県の米生産量が五百万石(約75万トン)を達成したことを記念して、「五百万石」と命名され奨励品種となりました。

新潟県の気候風土に適した栽培特性がある早生品種で、主要産地は新潟県のほか、福井県、富山県、石川県の北陸地方。そのほか、南東北から九州北部まで広範囲にわたって栽培されています。安定した栽培特性と機械醸造への適応性により、2001年に山田錦に追い越されるまで、酒米の中で最大の栽培面積を占めていました。

ちなみに、「五百万石」が奨励品種となった前年の昭和31年(1956年)、食用米の「コシヒカリ」が奨励品種として登録され、この2品種の繁栄によって、米王国・新潟が始まり、その地位が盤石なものとなりました。

(文/SAKETIMES編集部)

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