日本酒の原料は、米と米麹と水だけですから、米の良し悪しが酒の出来に大きく影響します。なかでも酒造りに適した米のことを、酒造好適米や酒米と呼びます。

今回は、長野県生まれの酒米「美山錦(みやまにしき)」の味わいや歴史、その特徴を探っていきましょう。

華やかな香りと軽快な味わい

酒質としては、繊細な香りを持ち、軽くスッキリとした味わいに仕上がることが特徴。バナナや完熟メロンのような、やや派手な吟醸香と、細身ながらフルーティーな味わいを感じられます。「五百万石」に近いですが、同米よりやや華やかな香りです。

吟醸酒や純米吟醸酒で、華やかな香りを楽しみながら軽快に飲みたいという酒に向いています。

冷涼な気候に強い酒造好適米

昭和47年(1972年)、長野県農事試験場で「北陸12号」を母に、「東北25号」を父とする「たかね錦」に放射線処理を行い、突然変異したものの中から、粒が大きく、心白の発現率が高いものを個体に選抜した品種です。昭和53年(1978年)に「美山錦」と命名され誕生しました。名前の由来は、北アルプス山頂の雪のような美しい心白があることに由来します。

「たかね錦」も、昭和14年(1939年)に同試験場で誕生し、昭和27年(1952年)に命名された酒米です。「たかね錦」は酒造好適米ですが、小粒で、発酵に重要な心白発現率が低く、雑味の原因となるたんぱく質含有率が高いという欠点がありました。その欠点を解消するために開発されたのが「美山錦」です。「美山錦」と「たかね錦」の先祖には、幻の米と言われた「亀の尾」があります。

生産量は「山田錦」「五百万石」に次ぐ、生産量第3位。「五百万石」と同じく、早く成熟する早生品種で、長野県を含めて東北、北陸、関東で幅広く栽培されています。

耐冷性にも優れているため、同じく冷涼な気候向けの新品種の親株となることが多く、「出羽燦々」や「越の雫」がその子品種にあたります。

(文/SAKETIMES編集部)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます