日本酒の原料は米と米麹と水だけですから、米の良し悪しが酒の出来に大きく影響します。なかでも酒造りに適した米のことを、酒造好適米や酒米と呼びます。

今回は、酒米の王様とよばれる「山田錦(やまだにしき)」の味わいや歴史、その特徴を探っていきましょう。

酒造りに適した特性をあわせ持つ優等生

酒造りに適したお米の特徴として、千粒重(粒の形や張りが完全な米1,000粒の合計重量)が大きいこと、心白発現率が高いこと、たんぱく質や脂質の含有量が低いことが挙げられます。

粒が大きい米は、玄米をしっかり磨いても精米後の米粒が大きく残り、結果的に心白発現率が高まります。心白とは米の中心の白濁している部分のことで、この部分が大きければ麹菌が根を伸ばしやすくなります。そのためより強い糖化力のある麹ができあがり、より良い酒母をつくることができます。たんぱく質や脂質の割合が少なければ、雑味や変色の原因を抑えることができます。

「山田錦」は、これらの特徴を高いレベルでバランスよく備えていることから、「酒米の王様」と呼ばれています。

酒質としては香味に優れ、まろやかさのあるお酒になると言われます。甘・辛・酸、すべてのバランスが良く、うまみが同心円状に広がっていく印象です。全国新酒鑑評会などの出品酒をみると、「山田錦」で造られた大吟醸酒が数多く出品されています。

特A地区で育てられる最高の酒米

「山田錦」は「山田穂」を母に、「短稈渡船(たんかんわたりふね)」を父として交配され、大正12年(1923年)、兵庫県立農事試験場で誕生しました。穂の背丈が高く、収穫時期が遅いため、台風の通り道となっている地域や東日本では生産には向かないとされてきました。

現在では、東北地方から九州まで広く栽培されていますが、作付面積の8割は兵庫県でつくられています。中でも兵庫県北西部(三木市や加東市の一部)は「特A地区」と呼ばれ、最も良質の「山田錦」を生産しています。まさに王の中の王、全国の酒蔵垂涎の地区です。

「山田錦」に追いつけ追い越せで、各都道府県が新しい酒米を育成に取り組んでいます。それでも「山田錦」の牙城は堅く、酒米の王様を頂点とする酒造りはこれからも続いていくでしょう。

(文/SAKETIMES編集部)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます