2019年9月、朝日酒造が醸す「久保田」のブランドリニューアルが発表されました。1985年に誕生した「久保田」は、世代や性別を超え、多くの人に愛されてきた銘酒です。

2020年は朝日酒造の会社創立100周年、そして「久保田」の発売35周年という節目。当初の基本理念はそのままに、新たなブランドメッセージ「常に進化する美味しさ」を掲げ、2019年10月から順次リニューアルを始めています。

久保田「萬寿」のボトル

「常に進化する」という言葉には、どのような思いが込められているのか。そして、久保田がこれから歩む道とは。マーケティング部部長の渡邉大輔さんにお話を伺いました。

危機感から生まれた"変化"

キレのあるすっきりとした飲み口が特徴で、「淡麗辛口」の王道とも言える「久保田」。全国の日本酒ファンから大きな支持を集め、地酒ブームを牽引してきた存在です。

その一方、日本酒の消費量は減少を続け、食に対する価値観も多様化したことから、「久保田」の勢いが落ち着いてきたことも事実です。取り扱いがない飲食店も多く、少しずつ危機感を感じるようになったと渡邉さんは話します。

営業本部マーケティングマネージャーの渡邉大輔さん

マーケティング部部長の渡邉大輔さん

「都内の飲食店に立ち寄っても、『久保田』を取り扱っているお店は少ない。若い人からは、『名前は聞いたことあるけど、飲んだことはない』との声も聞きます。純粋に、もっと多くの人に手に取ってもらいたい。『久保田』を飲んで、『美味しい!』と言ってもらいたい。そう感じていました」

そんな危機感から、朝日酒造は変化に向けて足を踏み出します。その兆しは、2017年に発表された2つの新製品にも表れていました。

「久保田 雪峰」とキャンプシーン

「久保田 雪峰」

25年振りの新たな通年商品として、香り高く華やかな味わいを表現した「久保田 純米大吟醸」。そして、「アウトドアで日本酒を楽しむ。」というコンセプトのもと、スノーピークと共同開発した「久保田 雪峰」。どちらも、これまでの"久保田らしさ"とは異なる商品でしたが、新たな層を切り拓いただけでなく、長く「久保田」を愛してきたファンの方々からも思いがけない支持をもらったといいます。

「変化することで、ときには反発が起こることもあります。けれど、結果として既存のお客様にも期待以上の評価をいただきました。『チャレンジしてみてもいいんだ』と、勇気付けられたことは確かです」(渡邉さん)

35年の歴史に変革を起こす

時を同じくして、ブランドリニューアルに取り組むパートナーが選ばれました。その名も、デザインイノベーションファーム「Takram」。

Takramは、日本経済新聞のコーポレートブランディングやメルカリのリブランディング、トヨタ自動車のコンセプトカーデザインなど、数々のプロジェクトを手がけている会社です。協業を決めた背景には、「Takram独自の手法に対する期待と共感があった」と、渡邉さんは振り返ります。

Takramの方と打ち合わせをしている写真

Takramとの打ち合わせ風景

「私たちは実直に品質本位の酒造りを続けてきたものの、大きな変化からは遠ざかっていました。Takramさんとお話しする中で、しっかりと会社の本質と向き合いながら徐々に変化を目指していく、"なめらかイノベーション"が望ましい進め方だと感じたんです」

これから久保田がどのような方向性を目指し、どのような価値をお客様に提示していくべきか。Takramのチームメンバーは、朝日酒造の経営陣をはじめ、各部署の部長からヒアリングを行いました。そこから得られた意見からは、渡邉さんにとっても新しい発見があったといいます。それは、社員が秘めている「久保田」への熱い思いでした。

久保田 寿シリーズのボトル

「もっと『久保田』を多くの方に楽しんでいただきたい。そのためなら、挑戦もいとわない。言葉や表現は違うけれど、そんな並々ならぬ思いがみんなの中にありました。普段はあまり心のうちを話す機会がなかったけど、思いは共通していた。これから変革に取り組むにあたって、とても心強く感じることができたんです」(渡邉さん)

変革への環境づくりは、組織編成にも表れました。2019年2月にこれまであった部門を商品開発部とマーケティング部、そして基礎研究を行う「日本酒研究センター」に再編したのです。これは、よりお客様の声を取り入れ、お客様本位の酒造りを加速させるための試みでもありました。

「久保田 千寿 純米吟醸」が新たな価値をつくる

創業時より朝日酒造に息づく「挑戦と革新」の精神を再定義し、新たに打ち出した「久保田」のブランドメッセージが、「常に進化する美味しさ」です。

1985年の誕生以来、「久保田」は淡麗辛口を追求してきました。しかし、常により良い品質を求め、少しずつ酒造りを進化させています。"変わらないために変わる"ことを繰り返してきたのが「久保田」の歴史でした。

つまり、「常に進化する美味しさ」とは、これまでも朝日酒造が真摯に取り組んできたこと。あらためて明確なメッセージとして表現することで、これまで以上に品質本位、そしてお客様本位の酒造りを宣言したのです。

ブランドリニューアルに伴い、商品ラインナップも再構築されることになりました。「久保田」がどのような機会やシーンで飲まれ、どう愛されてきたのか。お客様への理解を深めた末に見えてきたのは、看板商品である「久保田 萬寿」と「久保田 千寿」に対する熱烈な支持と愛着でした。

営業本部 マーケティングマネージャーの渡邉大輔さん

「『萬寿』はお客様の生活と結びつきが強く、正月や誕生日などの祝いの場はもちろん、『結納の席で飲んだ』『昇進祝いにもらった』など、大切なライフイベントを彩っています。そして、『千寿』は日常的に愛飲している方が多く、『これでなければ』という根強いファンも多くいらっしゃいました」(渡邉さん)

しかし、同時に課題も見えてきました。今では、幅広いジャンルの飲食店で日本酒が提供されるようになり、さまざまな料理と日本酒を楽しむシーンが広がっています。「飲食店で『久保田』の取り扱いが少ない中、お客様のニーズを満たし切れていない部分もあると感じた」という渡邉さんは、「萬寿」と「千寿」を軸に、より満足できるような価値を届けたいと考えました。

そこで、「萬寿」は特別な時を味わう「プレミアムライン」、「千寿」はいつもの食事をより特別に美味しく味わう「デイリーライン」と定義。既存商品とともに、それぞれコンセプトに沿った新商品を拡充していくことを決めます。

「久保田 千寿 純米吟醸」

「久保田 千寿 純米吟醸」

その第一弾。初めての料飲店先行発売商品として発売されたのが、「久保田 千寿 純米吟醸」です。「千寿」のすっきりとした飲み口はそのままに、旨味の余韻が残るような味わい。多様化する食の嗜好性に合わせて、さまざまな食事とのペアリングが楽しめる一本です。

「お客様にとって、飲食店は"お酒との出会いの場"だと思っています。これまでのお客様はもちろんのこと、この『久保田 千寿 純米吟醸』をきっかけに、『久保田』の魅力を知っていただけたらうれしいですね」(渡邉さん)

「常に進化する美味しさ」を掲げて

さらに、ブランドリニューアルとともに発表されたのが、新たなラインナップ「KUBOTA LAB(仮称)」です。新しい美味しさや楽しみ方に挑戦する実験的な取り組みの「KUBOTA LAB」は、今回のリニューアルにおける挑戦と革新の象徴となっています。

「『久保田』の誕生が淡麗辛口の味わいを実現したように、画期的な商品を生み出すには挑戦が必要です。これだけ変化が激しい世の中で、素早くPDCAサイクルを回さなければ、スムーズに知見を深めることはできない。日本酒の常識を覆すような挑戦をして、お客様に評価していただける機会をたくさんつくっていきたいですね」(渡邉さん)

また、2019年11月22日にリニューアルオープンする「渋谷PARCO」には、日本酒スタートアップ「未来酒店」とコラボした、未来型SAKEセレクトショップ&BAR「未来日本酒店/KUBOTA SAKE BAR」がオープン。

おつまみとともに「久保田」の全銘柄やアレンジカクテルなどが用意され、「久保田」の新しい美味しさ・楽しみ方を体験できる場所です。ワークショップやイベントの開催も予定されており、飲むだけにとどまらない新たな価値を提供します。

「若い方を中心に、日本酒の楽しみ方は多様性を増してきています。これまで多くのお客様に大切にしていただいた『久保田』の良さはそのままに、日本酒を楽しむワクワク感も共有できたら」と、渡邉さん。

朝日酒造の蔵外観

今後は、朝日酒造の創立記念日である2020年5月16日、『久保田』誕生35周年記念日である2020年5月21日に向けて、新商品や商品リニューアルが順次発表される予定です。

「常に進化する美味しさ」のもと、挑戦と革新への確かな一歩を踏み出した朝日酒造。「久保田」が生み出す新たな価値に、これからも目が離せません。

(文/大矢幸世)

sponsored by 朝日酒造株式会社

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます