創業380年以上を誇る京都の老舗酒蔵メーカー・月桂冠は、日本酒の味わいを追求することはもちろん、飲用シーンを広げて幅広いユーザーへ届けるため、糖質ゼロの日本酒や日本酒テイストのノンアルコール飲料など、既成の概念にとらわれないさまざまな商品開発にも取り組んでいます。

オンザロックで楽しむ日本酒ベースのリキュールも、月桂冠の豊富な商品ラインナップのひとつ。2020年2月には、これまで販売していたオンザロックで楽しめる日本酒ベースのリキュールシリーズ「サムライロック」「檸檬ロック」に加え、新しいテイストの「ホワイトロック」が季節限定商品として発売されました。

甘酸っぱい味わいが広がるヨーグルトテイストの「ホワイトロック」は、どのようなきっかけで誕生した商品なのでしょうか。

"日本酒オンザロック"の新たなアプローチ

オンザロックで楽しんでいる様子

月桂冠は、2005年に発売した、うまみとコクのある濃醇な味わいが特徴の「氷原酒(こおり・げんしゅ)」をはじめ、夏の暑い時期に氷を浮かべてオンザロックで楽しめる日本酒のスタイルを提案し続けてきました。

2015年にはライムを効かせた「サムライロック」、2018年にはレモンの香りが爽やかな「檸檬ロック」と、日本酒ベースの果汁入りリキュールを続けて発売。そして2020年2月に発売されたばかりの商品が、ヨーグルトテイストの日本酒ベースリキュール「ホワイトロック」です。

月桂冠の日本酒ベースのリキュールシリーズ、左から順に「サムライロック」「檸檬ロック」「ホワイトロック」

(左から)「サムライロック」「檸檬ロック」「ホワイトロック」

「ホワイトロック」は、ヨーグルトを思わせる濃厚な甘みと爽やかな酸味がバランスよくマッチした、マイルドで飲みやすいリキュール。アルコール度数は15%と高めで、リッチな味わいが特徴です。

オンザロックはもちろん、炭酸水や甘酒、ビール、ワインなどのお酒で割っても相性抜群。日本酒初心者から飲み慣れた人まで、幅広く楽しめるお酒となっています。

「ホワイトロック」の味わいを設計したのは、月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さん。製品開発課は、月桂冠の日本酒やリキュールなどの新商品開発や、リニューアルに向けた味わいの検討を行う部署です。

2019年に同課に配属された冨田さんは、「ホワイトロック」の開発に携わることになりました。

月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さん

月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さん

「『ホワイトロック』は、月桂冠で初となるヨーグルトテイストの商品です。柑橘果汁を使った既存の2商品と差別化する必要があり、また、シリーズを通して女性の購入者が過半数を占めていたことから、甘さをしっかり出した商品のニーズがあるのではと考えました」と、冨田さんは開発のきっかけを語ります。

ほかにもアイデアが挙がっていましたが、月桂冠としては初めての挑戦となるヨーグルトテイストで新商品を開発することが決まりました。

「リキュールは、ベースとなる日本酒に、香料や酸味料、糖類などをバランスよく加えて造ります。加える副原料のバランスを誤ると重たく感じてしまう可能性もあるので、バランスの調整には気を付けました。果汁が入っている『サムライロック』や『檸檬ロック』と比べて、味に深みが出にくいかもしれないと思っていましたが、アルコール度数を15度にしたことでベースの日本酒のよさがしっかりと感じられる味わいになったと思います」

試行錯誤を重ねたヨーグルトテイストの香料選び

リキュールは、焼酎などの蒸留酒をベースに造られるのが一般的。アルコール度数が高くクリアな味わいの蒸留酒は、副原料の味わいを活かしやすく、テイストのコントロールもしやすいのだそう。一方、糖類やアミノ酸などが豊富な日本酒の場合、ベースとなるお酒の特徴がリキュールの風味にも影響してくるといいます。

「ヨーグルトは甘酸っぱい香りが特徴ですが、それを酒のオフフレーバー(劣化臭)のように感じる人がいるかもしれない。その点で、ヨーグルトテイストを生み出す香料選びには苦労しました」と、冨田さんは当時の試行錯誤を振り返ります。

風味を整えるために冨田さんが行ったのは、さまざまな企業や研究所から香料のサンプルを取り寄せること。ヨーグルト系で、かつベースの日本酒に合いそうな香りのサンプルを十数種類ほど集め、ひとつひとつ添加しながら香料の選定を行いました。

月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さん

「香料そのものの香りは良くても、実際に口に含むと感じ方が変わって飲み物としては使えない。最初に試した数種類のサンプルがすべてそのような結果だったので、前途多難だと思いました。

同じ課の先輩たちにも『本当にできるの?』と心配されてしまって......。ですが、集めたすべてのサンプルで実験を行ったところ、よりミルク感が強い香料がリキュールに向いていることがわかったんです。香料だけを嗅ぐと少し乳臭いようにも感じるのですが、飲んでみると味わいも香りもいいバランスでした」

副原料の選定はできたものの、月桂冠として初めて扱うものも多かったため、製造現場から拒否されないかどうか不安だったといいます。現場への落とし込みは大変でしたが、技術担当者も協力して調整を行い、晴れて製造ラインが稼働を開始。実際に商品が瓶に詰められていく様子を見て、冨田さんもようやく安堵したといいます。

バナナ、甘酒、ワイン......割り材で豊富なアレンジ

こうして、月桂冠としては初の試みとなる、ヨーグルトテイストの商品「ホワイトロック」が誕生しました。

「サムライロック」や「檸檬ロック」と同様に、「ホワイトロック」は、割って飲むスタイルも提案しています。社内で試飲を行った際には、「アルコール度数が高めだけど、割って飲むと想像以上に飲みやすい」と反応は上々だったのだとか。

「ヨーグルトにフルーツなどをのせて食べる人も多いので、同じようにいろんなアレンジをして楽しんでほしいです。個人的に一番好きな組み合わせは、バナナオーレ。1:1で割ると、トロっとしてデザートのようなおいしさになります。

ほかにも、テイストの近い甘酒で割ると相乗効果でよりおいしくなりますし、ビールやワインで割るのもおすすめです。ケーキやアイスクリームなど、甘いものと特に相性がいいので、自宅で女子会をするときや、仕事から帰ってのんびり過ごすときに飲んでほしいですね」

ホワイトロック

「ホワイトロック」の白く濁った見た目も、ヨーグルトらしさを感じてもらうためのもの。赤ワインやグレープジュースで割るとほのかなピンク色に染まり、写真映えするオリジナルカクテルも楽しめます。

「ホワイトロック」で叶えた、ひとつの夢

ものづくりに関心があり、学生時代は植物の研究をしていたという京都出身の冨田さん。お酒も好きだったことから、地元を代表する企業の月桂冠で働くことを決めました。最初の2年間は新規分野開拓の部署で研究に従事し、入社3年目で製品開発課に配属されます。

月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さん

「商品開発がしたくて入社したので、3年目でようやく夢が叶ったなと思いました。『自分が携わった商品を誰かが手に取って喜んでくれるのって素敵だな』という思いをずっと持っていたんです。その学生時代からの夢が、今回の『ホワイトロック』の開発で実現できたことは感慨深いですね」

製品開発課のメンバーには「檸檬ロック」の開発担当者も在籍しています。冨田さんは技術面をはじめ、さまざまなアドバイスを受けたのだそう。

「もともとは自分で溜め込むタイプでしたが、先輩から『自分から情報発信して、まわりの意見を聞いた方がいいよ』と教わり、実践するようになりました」と振り返る冨田さん。社員同士が意見交換をしやすい月桂冠の社風の中で、のびのびと仕事ができていると語ります。

そんな冨田さんに今後の展望を伺うと、「日本酒の商品開発をしたい」と明確な目標を語ってくれました。

「入社以来、まだ日本酒に携われていないので、いずれは主管担当として日本酒の商品開発をしたいです。社内では女性向け商品の検討も常に行われていますが、技術面などの理由から商品化されていないものも多くあります。ですから、私自身が女性として、女性目線の意見を反映したような商品を造れたらいいなと。

今の目標は、『こういう商品はどうでしょう?』と、マーケティング担当者に自ら提案する機会を増やすこと。そのために、さまざまな部署の社員ともコミュニケーションを取って、常に情報交換をしていきたいと考えています」

月桂冠総合研究所 製品開発課の冨田麻理絵さんと「ホワイトロック」

冨田さんの熱意と、月桂冠のさまざまな人たちの協力によって完成した「ホワイトロック」。

実際にオンザロックで飲んでみると、濃厚な舌触りとヨーグルトらしい甘酸っぱさ、そして、その奥には日本酒をベースにしたリキュールならではの米のうまみを感じます。確かな技術に加え、日本酒の新たな楽しみ方を提案し続けてきた月桂冠だからこそ、この絶妙なバランスのお酒を生み出せたのではないでしょうか。

「ホワイトロック」は、「サムライロック」や「檸檬ロック」とともに、2020年8月までの期間限定で販売される予定。これから暖かくなるシーズンにあわせて、さまざまな割り方で楽しみたいお酒です。

(取材・文/芳賀直美)

◎商品情報

  • 商品情報:「月桂冠 ホワイトロック
  • 酒質:リキュール
  • 原材料:日本酒(国内製造)、糖類、酸味料、香料
  • アルコール度数:15%
  • 容量:720ml
  • 参考小売価格:972円(税別)

sponsored by 月桂冠株式会社

これまでの連載記事

月桂冠株式会社 / Gekkeikan Sake Company, Ltd.連載記事一覧